【詳細解説】膝窩の上外側縁をなすのはどれか (2014年 あマ指 問題23)

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ポイントだけを暗記するのではなく、教科書を理解するための副教材の決定版。理解をすることで記憶は強固になり、忘れなくなります。 そして解剖学の理解は臨床力への豊かな土壌となります。解剖を得意科目にして将来に役立てたい。そんな方におすすめです。

かずひろ先生の解剖学マガジンのポイント
1 とにかく図が豊富
2 解説、一問一答、国試過去問で効率良く学べる
3 ポイントは表形式でまとめられ、覚えるポイントが明確
4 オンライン講座と連動。アーカイブ動画で何度でも学習できる

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問題2014–23a 膝窩の上外側縁をなすのはどれか。(あマ指2014年)
1 半腱様筋
2 大腿二頭筋
3 大内転筋
4 腓腹筋

回答と選択肢の考察

解答2

1 半腱様筋

【坐骨結節→脛骨粗面の内側(鵞足の形成)/脛骨神経/膝関節屈曲、内旋】
半腱様筋はその名のとおり、下半部では長い腱となって脛骨粗面内側に向かって内下方に走る。膝関節を屈曲した際に膝窩に浮き出る内側の腱が半腱様筋腱である。膝関節が伸展位で半腱様筋腱が浮き出ていなくても、膝窩中央に指を沈め、内側に移動させると半腱様筋の腱を触知することができる。半腱様筋の起始部は坐骨結節下端から2横指外側であったので、このラインを結ぶと半腱様筋の走行が想定できる。
半腱様筋の走行ライン:坐骨結節下端より2横指外側→膝窩内側で触知できる腱

2 大腿二頭筋

【(長頭)坐骨結節, (短頭)粗線外側唇→腓骨頭/脛骨神経/膝関節屈曲、外旋・(長頭は股関節伸展の作用もある)】
大腿二頭筋の長頭は坐骨結節下端より2横指外側から起始して、腓骨頭に停止するので、この2点を結ぶラインで走行を想定することができる。
大腿二頭筋長頭の停止腱の深層を走行する、大腿二頭筋短頭の筋線維は腓骨頭の近位端まで存在している。起始部は粗線外側唇となっているが、これだと体表から想定しにくい。そこでまずは大腿骨と脛骨の角度を想定する。大腿骨頭は125°の頚体角をもち、大転子のでっぱりをつくった後にやや内方に傾いて膝までのびている。膝関節で大腿骨と脛骨のなす角度を、FTA(大腿脛骨角)といい、およそ175°となっている。この角度を念頭に置いて大腿骨を代表からイメージした際に、大腿二頭筋短頭の筋腹は大腿骨中央部よりやや頭方の高さまで存在する。FTAの175°がイメージしにくい場合は、大転子の上端を触知し、そこから膝窩中央までのラインを想定するとほぼ大腿骨幹のラインに相当する。大腿二頭筋短頭の走行ラインは、大腿骨の遠位約1/3の部位では腓骨頭から触知できる大腿二頭筋の停止腱に沿って頭方へとあがり、大腿骨の中央1/3では大腿二頭筋長頭のラインより離れ、大腿骨の後面にそって頭方へと続き、大腿骨のほぼ真ん中を越えたあたりで終わる。
大腿二頭筋長頭の走行ライン:坐骨結節下端より2横指外側→腓骨頭
大腿二頭筋短頭の走行ライン:大腿骨後面中央〜下部1/3→腓骨頭

3 大内転筋

【恥骨下枝, 坐骨枝, 坐骨結節→粗線内側唇, 内転筋結節/閉鎖神経/大腿の内転, (さらに筋の上方は股関節の屈曲、下方は伸展に働く)】
大内転筋はもっとも強い内転筋で、短内転筋と一部重なり恥骨下枝、坐骨下枝、坐骨結節から始まり、外下方へと扇状に広がる。粗線内側唇と内転筋結節の間に内転筋腱裂孔という孔がある。大腿動脈がこの内転筋腱裂孔をくぐり、大腿後面に出で膝窩動脈となる。

4 腓腹筋

【内側上顆(内側頭)・外側上顆(外側頭)→踵骨腱(アキレス腱)となり踵骨隆起に終わる/脛骨神経/足関節底屈・膝関節屈曲】
腓腹筋はヒラメ筋の上に覆い被さるように存在し、膝関節と足関節をまたぐ二関節筋である。ふくらはぎに腹のような膨らみを作ることからこの名がある。(腓=ふくらはぎ)

考え方

膝窩は膝関節後面の窪みで、上部はハムストリング、下部は腓腹筋によりできる。この問題は上外側縁なので、外側ハムストリングである大腿二頭筋が正解となる。せっかくなので、それ以上の知識をつけよう。

膝窩の上部を構成する筋肉

  • 大腿二頭筋
  • 大腿二頭筋長頭
    坐骨結節→腓骨頭/脛骨神経/股関節伸展・膝関節屈曲、外旋
  • 大腿二頭筋短頭
    粗線外側唇→腓骨頭/総腓骨神経/膝関節屈曲、外旋
  • 半腱様筋
    坐骨結節→脛骨粗面の内側(鵞足の形成)/脛骨神経/膝関節屈曲、内旋
  • 半膜様筋
    坐骨結節→脛骨内側顆の後部/脛骨神経/膝関節屈曲、内旋

大腿二頭筋・半腱様筋・半膜様筋の3筋はハムストリングス筋と総称される。大腿二頭筋長頭、半腱様筋、半膜様筋は坐骨結節が起始となっているが、この起始部は坐骨結節下端より2横指外側となっている。よって治療においてハムストリングス筋の起始部にアプローチする場合は、坐骨結節の一番下端にはハムストリングス筋の腱はなく、2横指外側にあることに留意するとよい。

このハムストリングスの中で、大腿二頭筋の短頭のみが単関節筋で総腓骨神経支配となっている。これは大腿二頭筋の両頭が全く別な由来を持つことによる。大腿二頭筋長頭は屈筋系であるのに対し、短頭は発生学的に伸筋系に属し、むしろ殿筋群に近いものである。ヒトにおいても大腿二頭筋の両頭が独立することがあり、梨状筋と大腿二頭筋の短頭をつなぐ腱が時に見られることがある。これは大腿二頭筋の短頭が殿筋群と近い関係にあることを示している。(森 於菟, 小川 鼎三, 大内 弘, 森 富 (著):分担解剖学1 第11版 総説・骨学・靭帯学・筋学, 金原出版, 1950, p.387)

膝窩の下部を構成する筋肉

  • 下腿三頭筋
  • 腓腹筋
    内側上顆(内側頭)・外側上顆(外側頭)→踵骨腱(アキレス腱)となり踵骨隆起に終わる/脛骨神経/足関節底屈・膝関節屈曲
  • ヒラメ筋
    腓骨頭, ヒラメ筋線→踵骨腱の内側縁→踵骨腱(アキレス腱)となり踵骨隆起に終わる/脛骨神経/足関節底屈

知識の確認

  • (  筋)・(  筋)・(  筋)の3筋はハムストリングス筋と総称される。解答
  • 大腿二頭筋長頭は(  )から始まり(  )に停止する。(  神経)により支配され、膝関節を(  )、(  )、股関節を(  )、する働きがある。解答
  • 大腿二頭筋短頭は(  )から始まり(  )に停止する。(  神経)により支配され、膝関節を(  )、(  )する働きがある。解答
  • 半腱様筋は(  )から始まり(  )に停止する。(  神経)により支配され、膝関節を(  )、(  )、股関節を(  )する働きがある。解答
  • 半膜様筋は(  )から始まり(  )に停止する。(  神経)により支配され、膝関節を(  )、(  )、股関節を(  )する働きがある。解答
  • 大内転筋は(  )、(  )、(  )から始まり(  )、(  )に停止する。(  神経)により支配され、股関節を(  )する働きがある。解答
  • 大内転筋が停止する粗線内側唇と内転筋結節の間には(  )という孔があり、(  動脈)がこの孔をくぐり、大腿後面に出で(  動脈)となる。解答
  • 下腿三頭筋は(  筋)、(  筋)からなる。このうち二関節筋は(  筋)である。解答
  • 腓腹筋の内側頭は(  )、外側頭は(  )からはじまり、(  )に停止する。(  神経)により支配され、足関節を(  )、膝関節を(  )する働きがある。解答
  • ヒラメ筋は(  )、(  )から始まり(  )に停止する。(  神経)により支配され、足関節を(  )する働きがある。解答

解答一覧

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