2010年 第18回 あん摩マッサージ指圧師 国家試験 解剖学 問題16〜33 解答

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ポイントだけを暗記するのではなく、教科書を理解するための副教材の決定版。理解をすることで記憶は強固になり、忘れなくなります。 そして解剖学の理解は臨床力への豊かな土壌となります。解剖を得意科目にして将来に役立てたい。そんな方におすすめです。

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2010年 第18回 あん摩マッサージ指圧師 国家試験 解剖学 問題16〜33 解答

問16 外分泌腺においてホロクリン分泌するのはどれか。

1 乳腺
2 脂腺
3 小汗腺
4 大汗腺

解答 2

1 乳腺 — アポクリン分泌

乳腺は汗腺の変化したものとされ、その分泌様式はアポクリン分泌である。乳汁は栄養分をたくさん含まなくてはならないので、有機物をたっぷり含められるアポクリン分泌が適している。 (p.12 分泌の様式、p.30 乳腺)

2 ○ 脂腺 — ホロクリン分泌

細胞の中に分泌物がたまっていき、細胞ごと変性して分泌物なる形式をホロクリン分泌(全分泌)といい、脂腺はこの様式である。この問題であるように、脂腺は毛包に開口する。では、人体で脂腺の無い部位はどこであろう?この場合は、毛の無い部位で考える。手掌と足底だ。ちなみに唇にと毛は無いが、唇には例外として毛包に付属しない独立脂腺が存在する。 (p.12 分泌の様式、p.30 脂腺)

3 小汗腺 — 開口分泌

ゴルジ装置でつくられた分泌顆粒が細胞膜直下に移動し、分泌物をつくる膜が細胞膜と癒合して内容物を放出する形式を開口分泌 (エクソサイトーシス) といい、エクリン汗腺はこの方式で分泌する。
エクリン汗腺は全身に広く分布し、汗を体表に分泌する。汗の大部分は水でその蒸発により体熱を奪い体温の調節を行う(温熱性発汗) 。また、手掌、足底、腋窩の汗腺は精神的な緊張が高まると分泌が盛んとなる(精神性発汗)。(p.12 分泌の様式、p.30 エクリン汗腺)

4 大汗腺 — アポクリン分泌

細胞の表面近くに分泌物があつまり、風船のように表面に向かって膨出し、それがちぎれて分泌物となる形式をアポクリン分泌という。タンパク質や脂質に富む分泌物となるのが特徴。アポクリン汗腺の分泌物は皮膚にいる常在細菌により分解されることにより、特有の匂いを発する。
アポクリン分泌が見られる腺としては、腋窩のアポクリン汗腺(大汗腺)、耳道腺、肛門周囲腺などがある。(p.12 分泌の様式、p.30 アポクリン汗腺)


問17 体表から触れる部位と骨との組合せで正しいのはどれか。

1 乳様突起 ― 後頭骨
2 頸切痕  ― 胸骨
3 肘頭  ― 橈骨
4 外果  ― 脛骨

解答2


1 乳様突起 ― 側頭骨
みんな大好き乳様突起は側頭骨。これは誰もが知っている。では、側頭骨には他に突起が2つある。わからなかったら調べよう。

側頭骨

側頭骨は、頭蓋の外側壁をなす左右1対の複雑な形をした骨である。発生学的には3つの部分、すなわち鱗部鼓室部岩様部からなる。これら3部が癒合して単一の骨となるのは生後1年ほど経ってからである。
鱗部は扁平で丸い輪郭を持った“うろこ”のような部分で、外耳孔の上前方部に広がる。上部は輪状縫合により頭蓋骨と接して頭蓋冠の一部をなし、前方部からは、頬骨と結合するための頬骨突起が伸びて、頬骨弓の後半部をなす。頬骨突起の基部下面には下顎窩がある。
鼓室部は、雨どいのような半管状の小さな骨で、外耳道および鼓室の底をなす。岩様部は錐体部と乳突部からなる。錐体部は後頭骨と蝶形骨大翼との間を内側前方に伸び、上面は内頭蓋底の錐体となって隆起して中頭蓋窩と後頭蓋窩を仕切る。表面には内耳孔が開き、内部に内耳(蝸牛前庭半規管)をおさめるほか、頸動脈管が貫通する。一方、乳突部は錐体部の外側下方に大きく隆起して鱗部の後方に達し、側頭骨外側面で乳様突起をつくる。乳様突起は耳の後方に触れ、体表上の目印となるほか、内部には鼓室から続く乳突蜂巣という多数の小胞が広がる。
さらに、岩様部の下面からは、下前方に茎状突起が伸びる。その基部には茎乳突孔が開く。
外耳孔を入り、外耳道を通ると鼓室に突き当たる。鼓室は中耳の主体をなし、3個の耳小骨(ツチ骨キヌタ骨アブミ骨)が並ぶ。鼓室の前方は耳管に、後方は乳突蜂巣に続く。鼓室の壁の奥には内耳が存在する。(p.200 図10–43 側頭骨、p.206 側頭骨)

2 ○ 頸切痕  ― 胸骨

胸骨

胸骨は胸郭前部の正中にあるネクタイ型の扁平な骨で、上方から胸骨柄胸骨体剣状突起の3部からなり、それぞれ軟骨結合により連結する(頬骨柄結合および頬骨剣結合)。これらの軟骨結合は加齢とともに骨化する傾向にあるが、特に胸骨柄結合は成人になっても残ることが多い。胸骨柄は胸骨上部に位置する。上縁正中部の切れ込みを頸切痕といい、体表からも左右の鎖骨の間でくぼみ(頚窩)をなす。頸切痕の両側には、鎖骨との関節面である1対の鎖骨切痕がある。
胸骨体は胸骨の主体をなす部分である。胸骨柄から胸骨体の両縁には肋骨との関節部位である肋骨切痕が7対ある。胸骨柄と胸骨体の結合縁はわずかに角度をなして前に突出し、胸骨角という。この部分の胸骨外側縁には、第2肋骨の肋軟骨が付着する。体表から胸骨角を外側にたどった第2肋骨を基点にして肋骨・肋間を数えることができる。
剣状突起は、体表から見るといわゆる鳩尾(みずおち)の部分に位置する。(p.177 胸骨)

  • 胸骨柄
  • 頸切痕
    上部正中にある切れ込み。体表からも左右の鎖骨の間でくぼみ(頸窩)をなす。
  • 鎖骨切痕
    頸切痕の両側にみられる鎖骨との関節面
  • 第1肋骨切痕
  • 胸骨体
  • 第2〜7肋骨切痕
  • 剣状突起

3 肘頭  ― 尺骨

尺骨

尺骨は上部では太く、中央部では三角柱状で、下部では細い円柱状になる。尺骨上端は肘頭で、その前面には滑車切痕があり、上腕骨滑車と肘関節の一部をなす(腕尺関節)。滑車切痕の下縁前方は釣り針の先端のように突出し、鉤状突起をつくる。滑車切痕の外側端から下方に連続する小さい関節面は、橈骨と連結する橈骨切痕で肘関節の一部をなす(上橈尺関節)。鉤状突起の下方には、尺骨粗面があり、肘関節を屈曲させる上腕筋がつく。尺骨下端は尺骨頭で、その外側面は滑らかな関節環状面 として橈骨下端の尺骨切痕に対面する(下橈尺関節)。尺骨頭の内側端には茎状突起が下方に突出する。
体表から肘の後面には肘頭が明瞭に触れる。肘頭から手首の方に向かつて尺骨の稜線をたどると、尺骨頭や茎状突起が触知できる。(p.181 尺骨)

  • 尺骨
    前腕の内側にある長管骨。上端(近位端)、下端(遠位端)、尺骨体の3部を分ける:
  • 上端 (近位端):
  • 滑車切痕:前方の大きな切れ込み。上腕骨滑車と関節する(腕尺関節)。
  • 肘頭:滑車切痕の後上方の突起。上腕三頭筋の停止。
  • 鈎状突起:滑車切痕の前下方の突起。
  • 尺骨粗面:滑車切痕の下方にある粗面。上腕筋の停止となる。
  • 橈骨切痕:橈骨の環状関節面と対向する(上橈尺関節)。
  • 回外筋稜:回外筋の起始。
  • 尺骨体:前縁、後縁、骨間縁(外側縁)の3縁を分け、これにより前面、後面、内側面の3面を区別する。骨間縁は橈骨の同名縁と対向し、その間に前腕骨間膜がはる。
  • 下端 (遠位端):
  • 尺骨頭
  • 関節環状面:橈骨の尺骨切痕に関節する(下橈尺関節)。
  • 茎状突起:内側端より突出する。

4 外果  ― 腓骨

腓骨

腓骨は下腿の外側にある長骨で、脛骨よりはるかに細く、体重を支える役割はほとんどない。
腓骨の上端は腓骨頭として肥厚し、膝関節の外側下方で体表から触れる。腓骨頭は膝関節の外側側副靱帯の付着部となり、腓骨頭にある関節面は脛骨外側上顆と連結する(脛腓関節)。
細く長い腓骨体は下腿の筋に囲まれるので、体表からは触れられない。ここには骨間縁があり、脛骨の骨間縁との間に下腿骨間膜が張る。
腓骨の下端は外果となって肥厚し、体表から触れる。外果の内側面には外果関節面があり、脛骨の下端とともに距骨と連絡する。(p.191 腓骨)

問18 手の骨において母指にみられないのはどれか。

1 末節骨
2 中節骨
3 基節骨
4 中手骨

解答2

指骨

母指は2節、他の4指は3節からなる。近位から基節骨中節骨末節骨と呼ばれる。母指には中節骨がない。各指骨は近位より、底・体・頭の3部からなる。


問19 椎骨に付着しない靱帯はどれか。

1 黄色靱帯
2 後縦靱帯
3 前十字靱帯
4 翼状靱帯

解答 3

1 黄色靱帯:上下の椎骨の椎弓間を結ぶ
2 後縦靱帯:上下の椎骨の椎体後面(脊柱管の前面)を結ぶ

椎骨間の靱帯による連結

椎体と椎間円板の前・後面には、それぞれ前縦靱帯後縦靱帯が密着し、椎体を縦に連結する。椎弓の間には黄色靱帯が連結する。普通の靱帯は膠原線維の密な束で白っぽいが、黄色靱帯は弾性線維に富み黄色く見える。そのほか、棘突起間を結ぶ靱帯を棘間靱帯、棘突起の先端を縦に結ぶ靱帯を棘上靱帯という。ただし、この靱帯は頸部では幅が広く厚くなり、項靱帯と呼ばれる。(p.169 椎骨の連結)

3 前十字靱帯

膝十字靱帯

脛骨上面の顆間隆起の前後と大腿骨顆間窩との間に張る関節内靱帯で、2本の前十字靱帯・後十字靱帯からなる。関節が前後に動揺しないように安定させる。(p.194 膝関節)

4 翼状靱帯:軸椎歯突起と後頭骨を結ぶ

歯突起の上部の側面から起こる強く、厚い帯状の靱帯で、上外方に向かって後頭顆の内面に着く。頭関節における頭の過度の回旋を制限する。《分担解剖学1 p.190 頸椎上端と頭蓋との連結》(p.173 図10–12 環椎・軸椎の靱帯)


問20 頭頸部の筋において脳神経に支配されるのはどれか。

1 胸鎖乳突筋
2 前斜角筋
3 大後頭直筋
4 頭板状筋

解答 1

1 胸鎖乳突筋

胸鎖乳突筋(p.300 胸鎖乳突筋)

胸骨柄の前面と鎖骨の胸骨端近くから起こり、側頭骨乳様突起に停止する強力な筋である。一側のみが働くと頭部を左右へ側屈し回旋するが、同時に働くと頭部を前屈あるいは、後屈させる。ただし、相対的には前屈作用の方が大きい。脳神経である副神経の脊髄根に支配され、副神経核は頸髄にある。

2 前斜角筋

斜角筋(p.300 斜角筋)

前斜角筋中斜角筋後斜角筋の3筋が含まれるが、いずれも頸椎の横突起から起こり、第1ないし第2肋骨に停止する。呼吸補助筋として肋骨を挙上するが、胸郭を固定すると頸部脊柱を側屈・回旋する。第1肋骨の上面に停止する前斜角筋と中斜角筋の間(斜角筋隙)を腕神経叢の根と鎖骨下動脈が通る。頸神経前枝の支配を受ける。

3 大後頭直筋

後頭下筋(p.224 後頭下筋)

後頭下筋は、項部の最深層にある筋群で、後頭骨から第2頸椎にわたって見られる4対の小筋(大後頭直筋小後頭直筋上頭斜筋下頭斜筋)からなり、頭の後屈と回転作用に関与する。大後頭直筋と上および下頭斜筋によって固まれる後頭下三角から出現する第1頸神経後枝(後頭下神経)の支配を受ける。

4 頭板状筋

項部の筋

項部は僧帽筋の上部でおおわれている。項部の下端近くまで頭毛が生える。僧帽筋の深層には頭板状筋頸板状筋肩甲挙筋、および頭半棘筋があり、さらに深層には脊柱起立筋と他の横突棘筋の頸部と後頭下筋群がある。(p.301 項部の筋)
板状筋は頭部で僧帽筋の下層にあり、扁平で板状を呈する。頸部と頭部を後屈(頸部の伸展)させ、一側のみが働くとそちらに側屈・回旋する。また、板状筋は他の背筋(最長筋・頭半棘筋)と協力して、頭が重力で前方に傾かないよう保持し、前屈位から復するように働く。停止の違いから、頭板状筋頸板状筋とが区別される。 板状筋と脊柱起立筋、横突棘筋は脊髄神経後枝に支配される。(p.222 深背筋)


問21 筋とその支配神経との組合せで正しいのはどれか。

1 内側直筋 ― 滑車神経
2 円回内筋 ― 尺骨神経
3 腹直筋  ― 肋間神経
4 前脛骨筋 ― 浅腓骨神経

解答3

1 内側直筋 ― 滑車神経

眼筋(p.152 眼筋)

眼窩の中には眼球を動かすための、小さな6つの横紋筋、すなわち眼筋がある。上直筋下直筋内側直筋外側直筋の直筋群は、眼窩の後端で視神経を取り巻く総腱輪から起こり、眼球の前半部の強膜に付着する。これらの4つの直筋群は、眼球をそれぞれ上方、下方、内側方、外側方に向ける働きをする。また、2つの斜筋のうち、上斜筋は直筋と同じく眼窩の後端より起こり、眼寵の入口の内側上方にある滑車という腱に達する。滑車で方向を転換したのち、眼球の後半上面に付着し、眼球を下外側方に向ける。下斜筋は眼窩の内側前方より起こり、眼球の後半下面につき、眼球を上外側方に向ける。
上斜筋は滑車神経、外側直筋は外転神経、その他の眼筋はすべて動眼神経で支配される。眼球の複雑で機敏な動きは、これらの筋の協調によるが、その大部分は反射作用により無意識に行われる。

2 円回内筋 ― 正中神経
前腕の屈筋群は、浅層の筋と深層の筋とに大別される。これらの筋は、主に正中神経の支配を受ける。ただし、尺側手根屈筋と深指屈筋の尺側半分(第4・5指)の支配は尺骨神経である。

円回内筋

肘窩の内側縁を下行し、橈骨中央の外側面の粗面に停止する。名のとおり、この筋の作用は前腕を回内させる。この筋は内側上顆の起始(上腕頭)以外にも尺骨の鉤状突起(尺骨頭)に起始しており、両頭の間には正中神経が通る。 (p.242 前腕の屈筋群)

前腕の屈筋群(浅層)

筋名起始停止支配神経作用
円回内筋上腕頭:内側上顆、
尺骨頭:鈎状突起
橈骨中部の外側面(円回内筋粗面)正中神経前腕の回内と肘関節の屈曲
橈側手根屈筋内側上顆第2・3中手骨底手関節の屈曲・外転(橈屈)
長掌筋内側上顆手掌腱膜手関節の屈曲
浅指屈筋上腕尺骨頭:内側上顆・尺骨粗面、
橈骨頭:橈骨上部の前面
第2〜5中節骨底第2〜5指のMP関節およびPIP関節を屈曲
尺側手根屈筋上腕頭:内側上顆、
尺骨頭:尺骨上半部の後縁
豆状骨(豆鈎靱帯を介して有鈎骨まで腱が伸びる)・第5中手骨底尺骨神経関節の屈曲と内転(尺屈)

◯ 3 腹直筋  ― 肋間神経

腹直筋は臍の両脇を縦に走る帯状の長い筋で、上部では筋の幅は広く、下部では幅が減少するが厚さは増大する。途中には中間腱としての機能を持つ3~4本の腱面が筋を横切るように並んでいる。(p.215 前腹筋)

腹壁筋の支配神経(p.234 腹壁の神経)

腹直筋には第7~11肋間神経および肋下神経が腹直筋鞘の後葉を貫いて筋の後面から進入し、腱画と腱画との間に分布する。外腹斜筋の支配神経は、肋間神経の外側皮枝から起こり筋の表面を前下走して進入するため、上腹壁の外科的処置の際に損傷する危険性がある。内腹斜筋と腹横筋の支配神経は、下位肋間神経、肋下神経および腸骨下腹神経が両筋の間を走行中に順次分枝される。腰方形筋は肋下神経および第1~3腰神経前枝が分布するが、第1・2腰神経前枝が主体をなす。

4 前脛骨筋 ― 深腓骨神経

前脛骨筋は、脛骨前縁(いわゆる向こうずね)のすぐ外側に位置し、足関節の背屈と内反とを行う。背屈時には下腿前面で緊張した筋腹と太い腱を触れる。足を固定すると、下腿を前に傾ける。歩行時には背屈筋として重要で、足を前に出すときには足関節を背屈し、足先が地面をすらないようにする。 (p.275 下腿前面の筋(伸筋群))
総腓骨神経は大腿後面では脛骨神経の外側に位置し、大腿二頭筋長頭の深層を下行しながら大腿二頭筋短頭に枝を与える。その後、膝窩の上方で脛骨神経と分離して大腿二頭筋の停止腱に沿って腓骨頭の下方(腓骨頸)に達する。
この神経は外側から腓骨頸を回り込んで下腿に入る際に、次の2枝に分かれる。すなわち、下腿外側の腓骨筋群に分布する浅腓骨神経と、下腿前面の伸筋群に向かう深腓骨神経である。浅腓骨神経は長・短腓骨筋に枝を出した後、下腿の遠位部で皮神経となって皮下に出て、内側および中間足背皮神経として足背に分布する。深腓骨神経は長腓骨筋の起始の深層を素通りして伸筋群に達し、長指屈筋と前脛骨筋の間を下行しながら長指伸筋・長母指伸筋・前脛骨筋に枝を出す。さらに、長母指伸筋腱および前脛骨動脈などとともに伸筋支帯の深層をくぐって足背に達し、短母指伸筋および、短指伸筋への枝を出す。その後、細い皮神経となって母指と第2指の間(下駄の鼻緒が食い込む位置)の皮膚に分布して感覚を担う。(p.292 仙骨神経叢)

(注) 前脛骨筋麻痺では、足の下垂(下垂足)が起こる。歩行時には足先が地面をすらないように、膝を高くあげて歩くようになる。


問22 背部の筋とその支配神経との組合せで正しいのはどれか。

1 広背筋  ― 肩甲背神経
2 僧帽筋  ― 長胸神経
3 菱形筋  ― 肩甲下神経
4 上後鋸筋 ― 肋間神経

解答 4

1 広背筋  ― 胸背神経

広背筋は背中から腰にかげで広くひろがる三角形の大きな板状の筋で、本来、上肢帯の筋であり、脊柱からの起始は二次的なもので、肩甲骨下角から起こる筋束が原始的な状態を示すという。広背筋は、上腕を後方に引き肩関節を内転・内旋する。すなわち上肢を背部にまわすように働く。背中を手で、かいたり、水泳でクロールのストロークを行うなどの場合に、広背筋が働く。また、停止部を固定すると、体幹が挙上する。鉄棒にぶら下がった場合、上腕骨を下方に引いて上方に脱臼するのを防ぐとともに、大胸筋と一緒に体を引き上げるように働く。広背筋は胸郭の背側壁に沿って走っているので腋窩の後壁を構成する。上方では僧帽筋と菱形筋との間に聴診三角、下方では腸骨稜および外腹斜筋との間に腰三角を形成する。(p.220 浅背筋)
広背筋は第5~8頸神経の成分を含み、腕神経叢の後神経束から起こる胸背神経に支配される。肩甲挙筋と菱形筋は第5頸神経の基部後面から起こる肩甲背神経に支配される。(p.234 背部の神経)

2 僧帽筋  ― 副神経

僧帽筋は背中をおおう菱形の扁平な筋で、形状がカトリックの僧の頭巾に似ているところからその名が由来する。僧帽筋は主として上肢の運動のとき、肩甲骨を動かし固定するが、上部・中部・下部の各部で線維の走行が異なるので、運動の方向はそれぞれ相違する。上部が収縮すると肩甲骨と鎖骨の外側端が挙上し、肩をすくめるような運動が起こる。中部は筋線維が水平に走り、肩甲骨を内方に引き固定する。たとえば、気をつけの姿勢で肩を後に引くときに働く。下部は肩甲棘の内側端を下方に引くので、肩甲骨は回転し、肩関節の外転時に腕の挙上を助ける。上肢が固定されたとき、両側が同時に働けば頭を後屈させることができ、一側だけが働げば頸部をそちらの方に側屈することができる。 (p.220 浅背筋)
僧帽筋は副神経を主体として、第2・3頸神経の前枝が加わり二重神経支配を受ける。同じ支配神経を受ける胸鎖乳突筋とは共通の筋母体から発生した兄弟筋と考えられる。僧帽筋以外の浅背筋は腕神経叢から起こる神経によって支配される。広背筋は第5~8頸神経の成分を含み、腕神経叢の後神経束から起こる胸背神経に支配される。肩甲挙筋と菱形筋は第5頸神経の基部後面から起こる肩甲背神経に支配される。(p.234 背部の神経)

3 菱形筋  ― 肩甲下神経

菱形筋は僧帽筋におおわれ、脊柱の棘突起と肩甲骨の内側縁の間を結ぶ筋で、上部の小菱形筋と下部の大菱形筋とに分けられる。肩甲骨の内側縁を内上方に引き、肩甲挙筋とともに肩甲骨の関節窩を下方に向け、挙上した腕を下げるときなどに働く。(p.220 浅背筋)
肩甲挙筋と菱形筋は第5頸神経の基部後面から起こる肩甲背神経に支配される。(p.234 背部の神経)

◯ 4 上後鋸筋 ― 肋間神経

深背筋(p.222 深背筋)

深背筋は上肢の運動とは関係がなく、さらに由来と機能の異なる2層の筋群に分けられる。
深背筋の第1層は上後鋸筋と下後鋸筋があり、椎骨の棘突起と肋骨を結ぶことから、棘肋筋と呼ばれる。肋骨を上下させ、呼吸の補助筋として働くが、薄い筋でその力は弱い。いずれも、肋間神経の支配を受け、本来は肋間筋と同じ筋群に属する筋で、下層の固有背筋とは厳密に区別されるものである。上後鋸筋は菱形筋におおわれ、肋骨を引き上げ吸気筋として、また、下後鋸筋は広背筋におおわれ、肋骨を引き下げる呼気筋として働く。


問23 骨盤の筋で仙骨に付着するのはどれか。

1 外閉鎖筋
2 内閉鎖筋
3 大腿方形筋
4 梨状筋

解答 4

1 外閉鎖筋
外閉鎖筋は閉鎖膜の外面およびその周囲の骨部より起こり、大腿骨頸の後ろを通り大腿骨転子窩下部につく。大腿を外方にまわしまた内転する。閉鎖神経の枝をうける。

2 内閉鎖筋
骨盤側壁内面の閉鎖孔の周囲から起こり、後方に向かい小坐骨孔を通り、前外方に向かい大腿骨転子窩につく。大腿を外方にまわす。仙骨神経叢の枝をうける。

3 大腿方形筋
坐骨結節から起こり外方に向かい、大腿骨転子間稜につく。大腿を外方にまわし、また内転する。仙骨神経叢の枝をうける。

◯4 梨状筋
仙骨前面から出て外下方に走り、大坐骨孔を通り前方に向かい、大転子につく。大腿を外方にまわす。また外転する。仙骨神経叢の枝をうける。


問24 下腿の筋において閉鎖神経に支配されるのはどれか。

1 内閉鎖筋
2 薄筋
3 半膜様筋
4 縫工筋

解答 2

⑥ 閉鎖神経(L2~4)

L2~4が合流して構成される。大腰筋の筋束間を下行し、大腰筋内側下縁から骨盤腔に達する。骨盤の側壁を閉鎖動静脈とともに走り、閉鎖孔の内側上方(恥骨上枝の下縁)にある閉鎖管を貫通して大腿内側に至り、外閉鎖筋および内転筋群の各筋に支配枝を出す。また、筋枝を出した後は皮枝として大腿内側の皮膚に分布する。 (p.290 腰神経叢)

1 内閉鎖筋

外寛骨筋の回旋筋群:梨状筋・内閉鎖筋・上双子筋・下双子筋・大腿方形筋

梨状筋、内閉鎖筋、上双子筋、下双子筋、大腿方形筋は、骨盤の内面から起こって股関節の後側を回り大腿骨の上端につく筋群で、股関節の外旋作用を持つが、その役割以上に股関節前面にある腸骨大腿靱帯とともに、大腿骨頭を寛骨臼に密着させ保持し、股関節を安定化させるのに重要だと考えられている。 これらの筋は仙骨神経叢の枝により支配される。(p.266 外寛骨筋)

2 薄筋
内転筋群は、主として股関節を内転する。特に長内転筋短内転筋大内転筋は、強い内転作用を持つ。この作用により大腿を互いに近づけることが、直立位を維持安定させるのに重要であり、内転筋群の発達はヒトで特に著しい。(p.272 大腿内面の筋(内転筋群))
薄筋は、恥骨結合の外側から起こり、大腿内側を下り、脛骨上端内側面につく。下腿をまげかつ内旋する。膝をのばしたときは大腿を内転する。股関節内転筋群は閉鎖神経 により支配される。

3 半膜様筋
半腱様筋は停止腱が細い腱となっており、半膜様筋は起始腱が膜状になっている。大腿二頭筋・半腱様筋・半膜様筋の3筋を、ハムストリングス(ハムストリング筋)と総称する。 (p.272 大腿後面の筋(屈筋群))
半膜様筋は半腱様筋の下層にあり、坐骨結節から起こり、脛骨内側顆につく。大腿をのばすとともに膝関節をまげる。坐骨神経(脛骨神経) により支配される。

4 縫工筋
縫工筋は上前腸骨棘より起こり大腿前面を外側より斜め内下方に走り、大腿骨内側上顆の後ろをまわり脛骨粗面の内側につく。縫工筋は長い帯状の筋で、筋線維が平行に並んでいるので、収縮時に縮む長さは大きいが、その力はあまり強くない。股関節を屈曲・外転・外旋させるときに働き、あぐらをかくときに役立つ筋である。 大腿神経 により支配される。

鵞足

縫工筋と薄筋半腱様筋の3筋は、ともに脛骨粗面の内側に停止する。これら3筋の腱は腱膜様に広がり、互いに癒合して終わる。その停止腱の形が水かきを持ったガチョウの足に似ているととろから、鵞足と呼ばれる。鵞足は膝関節の関節包を内側より補強する。また鵞足を形成する3筋は共通して細く長いベルトのような形をし、縫工筋は骨盤の外側縁(上前腸骨棘)に、薄筋は内側縁(恥骨下枝)に、半腱様筋は後縁(坐骨結節)に起始を持つ。これらの3筋は骨盤を逆さにした三脚で支えているように見える。3筋はまた、大腿の伸筋群、内転筋群、屈筋群を主に支配する大腿神経、閉鎖神経、坐骨神経により別々に支配されている。骨盤の外側には、骨盤を固定するために発達した強力な腸脛靭帯がある。この腸脛靭帯とともに鵞足を形成して終わる3筋は、一致して骨盤の安定に微妙な調整を行っているものと考えられる。 (p.269 大腿前面の筋(伸筋群))

(注) 縫工筋の名はラテン語からの直訳であるが、西洋の昔の仕立屋はあぐらをかいて裁縫をしたようで、そのときに縫工筋が皮下に顕著に盛り上がるところからこの名があるという。


問25 十二指腸について正しい記述はどれか。

1 噴門に続く。
2 後面は腹膜に覆われる。
3 総胆管が開口する。
4 門脈が前面を通過する。

解答 3

十二指腸は胃の幽門に続き、長さが約25cmで、指を横に12本並べた長さに相当する。C字形に弯曲し、膵臓の頭部(膵頭)を囲み、後腹壁に固定される。十二指腸の中程の左側の壁に大十二指腸乳頭(ファーター乳頭)の盛り上がりが見られる。その中央に、膵臓から膵液を運ぶ膵管と、肝臓から胆汁を運ぶ総胆管とが合流した管が開口する。この開口部をオッディ括約筋という平滑筋が輪状に取り囲み、膵液および胆汁の流れを調節する。 (p.79 十二指腸)

1 十二指腸は幽門に続く。
せっかくなので脊椎レベルでの場所も覚えよう。噴門はT11左、幽門はL1右、十二指腸空腸曲はL2左にある。

2 前面は腹膜に覆われる。
十二指腸、膵臓、腎臓、副腎は腹膜後器官。腹膜の後ろで後腹壁に埋もれるように存在する。よって前面が腹膜に覆われる。

○ 3 総胆管が開口する。
総胆管と主膵管が合流し、十二指腸下行部にある大十二指腸乳頭(ファーター乳頭)に開口する。開口部にはオッディ括約筋があり、胆汁と膵液の分泌調節を行っている。

4 門脈が十二指腸上部の後面を通過する。
こういう位置を問う問題は比較的難しいことが多い。門脈は脾静脈に下腸間膜静脈が合流し、次に上腸間膜静脈が合流することによりできる。脾静脈は膵体部の上部から背面を走行し、上腸間膜静脈は十二指腸水平部の前面を通過した後に、膵頭部と膵体部の境界部付近の背面に入る。膵臓の背面に回った上腸間膜静脈と脾静脈が合流して門脈となるので、十二指腸より背側であることをイメージしよう。


問26 肝臓について正しい記述はどれか。

1 横隔膜に接する。
2 肝静脈は肝門を通過する。
3 第9胸椎に接する。
4 門脈は肝鎌状間膜を通過する。

解答 1

肝臓の位置と形状(p.84 肝臓の位置と形状)

肝臓は人体の中で最大の腺で、重量は約1,200gあり赤褐色をしている。形は不規則な三角形で、位置は腹腔上部で右側に寄る。上面は横隔面で、横隔膜にかたく付着し、横隔膜に沿って丸くなっている。下面は臓側面といい、多くの内臓(胃・十二指腸・横行結腸・右の腎臓など)に接しているので凹凸に富み、また全体的には浅くくぼんでいる。
肝臓は肝鎌状間膜を境に、厚くて大きい右葉と薄くて小さい左葉とに区分される。下面には、両葉に挟まれて小型の方形葉尾状葉がある。下面の中央には肝門があって固有肝動脈門脈肝管などが出入りする。肝門の右前方で方形葉と右葉との間には胆嚢があり、肝臓の血液を集めた肝静脈は肝臓の後面に接する下大静脈に注ぐ。

◯ 1 横隔膜に接する。
肝臓は一部が腹膜に被われない半腹膜内器官に分類される。腹膜に被われない部分を無漿膜野といい、この部分が横隔膜に接する。

2 肝静脈は肝門を通過せず、肝臓の上部後面より出て下大静脈に直接注ぐ。
肝門を通る三つ組は「固有肝動脈・門脈・肝管」。この三つ組がグリソン鞘の「小葉間動脈・静脈・胆管」に対応する。小葉間動脈と小葉間静脈は共に洞様毛細血管(類洞)に注ぎ、中心静脈より肝静脈に集められる。肝静脈は肝臓の上部後面の無漿膜野より出て、すぐに下大静脈に注ぐ。

3 第9胸椎に接する。
横隔膜に接する肝臓は、その最上部は第5肋骨の高さに及ぶ。自然位での第5肋骨は第8胸椎の高さに相当する。この選択肢の第9胸椎の高さでは肝臓上部が存在する高さであるが、肝臓はその大部分を腹膜に被われるので、脊椎に直接接してはいない。また断面図をみても、肝臓と第9胸椎の間には食道や下行大動脈が存在する。

4 門脈は肝鎌状間膜を通過する。
肝鎌状間膜内を走行するのは胎児循環の臍静脈で、出生後は肝円索となる。門脈は総肝動脈や総胆管とともに肝十二指腸間膜内を走行している。
[http://www.jrsca.jp/contents/records/contents/PDF/8-PDF/p26–27.pdf]


問27 頭頸部の動脈において脳に分布するのはどれか。

1 顔面動脈
2 顎動脈
3 浅側頭動脈
4 椎骨動脈

解答4

脳は内頸動脈と椎骨動脈の2系統の動脈から栄養を受ける。

脳の血管(p.130 脳の血管)

脳は人体の中で最も活発な代謝活動を営む器官の1つである。重さは体重の2%に過ぎないが、全身の酸素消費量の約20%を消費し、心拍出量の約15%の血液の供給を受ける。その血液供給がごく短時間でも断たれると、大きな障害を受ける。脳は内頸動脈椎骨動脈という左右の対をなす4本の動脈により栄養される。

① 内頸動脈

内頸動脈は頸動脈管を通って頭蓋腔に入り、前大脳動脈中大脳動脈とを出して脳の前3/4を栄養する。また、後交通動脈を出して後大脳動脈とも吻合する。

② 椎骨動脈

椎骨動脈は頸椎の横突孔を上行し、大後頭孔から頭蓋腔に入る。頭蓋腔に入ると左右の椎骨動脈は橋の下面で合して1本の脳底動脈となる。脳底動脈は前方に走りつつ延髄・橋・小脳に枝を送り、やがて左右の後大脳動脈に分かれる。椎骨動脈は脳の後ろ1/4を栄養する。

③ 大脳動脈輪

脳底では内頸動脈、脳底動脈と、それらから分かれる枝が輪をつくるように吻合しあう。前方では、左右の内頸動脈の枝である前大脳動脈が前交通動脈により吻合する。後方では、脳底動脈が分岐した左右の後大脳動脈が後交通動脈を介してそれぞれ内頸動脈と吻合する。このように下垂体を取り囲む動脈の輪が形成され、これを大脳動脈輪(ウィリス動脈輪)という。


問28 静脈において動脈に伴行しないのはどれか。

1 内頸静脈
2 上腕静脈
3 大伏在静脈
4 膝窩静脈

解答 3

体循環の静脈系(p.48 体循環の静脈系)

体循環の静脈は伴行静脈として動脈と並んで走り、動脈と同じ名前で呼ばれるのが一般的である(たとえば上腕動静脈といったようにまとめて呼ぶこともある)。これはからだの深部を走る深静脈の多くにあてはまるが、以下の場所では動脈と異なった走行を示す。
① 動脈の本幹である大動脈は1本であるが、静脈の本幹である大静脈は、上半身の静脈を集める上大静脈と下半身の静脈を集める下大静脈の2本である。そして、胸壁の肋間静脈を集める奇静脈系が動脈とは伴行せずに独立して形成され上大静脈に注く。
② 皮下を走る皮静脈は、動脈に伴行しない。特に手足では静脈網を形成する(手背静脈網など)
③ 脳の静脈は、動脈とは異なり硬膜の中を走る(硬膜静脈洞)。
④ 腹部の消化管および脾臓からの静脈は、門脈という経路に集められて肝臓に注ぐ。肝静脈も動脈に伴行せずに下大静脈に注ぐ。
⑤ 内臓周囲の静脈は互いに吻合しあって静脈叢を形成する(直腸静脈叢、膀胱静脈叢、前立腺静脈叢、子宮静脈叢など)。

1 内頸静脈 – 総頸動脈と伴行
内頸静脈は総頸動脈と伴行し、内頸動脈・外頸動脈の双方の分布域からの静脈血を集める。(外頸静脈は後頭部の皮静脈を集める比較的細い静脈で、外頸動脈の分布域からの血液が集まるのではないことに注意)

2 上腕静脈 – 上腕動脈と伴行

◯ 3 大伏在静脈 – 皮静脈は動脈に伴行しない

大伏在静脈は足の静脈網の内側縁から起始し、内果の前を通って下腿内側を上行する。さらに、膝蓋骨の内側縁より約4横指後方を縦走して大腿内側部に達し、そのまま大腿三角まで上行する。大腿三角の内側部では大腿筋膜にできた伏在裂孔を貫通して大腿静脈に合流する。(p.288 下肢の静脈)

4 膝窩静脈 – 膝窩動脈に伴行


問29 リンパ系について正しい記述はどれか。

1 胸管は多数の弁をもつ。
2 胸管は右の静脈角に注ぐ。
3 乳び槽は大動脈の前方にある。
4 輸入リンパ管はリンパ節の門から入る。

解答 1

◯ 1 胸管は多数の弁をもつ。

胸間などの太めのリンパ管は、静脈壁と類似し内膜・中膜・外膜の3層からなる。内腔には弁が発達してリンパの逆流を防ぐ。リンパ系には心臓のようなポンプがないので、この逆流防止弁を利用し、周囲の動脈の拍動や骨格筋の筋ポンプ作用によるマッサージ効果を受けて還流を促進する。(p.54 リンパ系の全体像)

2 胸管は左の静脈角に注ぐ。
下半身+左上半身のリンパは胸管に集められる左静脈角に注ぐ。
右上半身のリンパは右リンパ本幹に集められ右静脈角に注ぐ。

3 乳び槽は大動脈の後方にある。

骨盤と下肢のリンパは鼠径リンパ節に集まり、総腸骨動静脈から腹大動脈と下大静脈に沿って上行する腰リンパ本幹に注ぐ。また、腸管からの乳び管は腸間膜を通って、腸リンパ本幹に注ぐ。横隔膜の大動脈裂孔付近で腰リンパ本幹と腸リンパ本幹は合流して、大動脈の後方に乳び槽という袋状の膨らみをなす。乳び槽は胸管という太いリンパ本幹に移行する。(p.55 全身のリンパ本幹)

4 輸出リンパ管はリンパ節の門から出る。

リンパ節はリンパ管の合流部に多くみられるソラマメ型をした直径1~25mm程度の小体で、全体は被膜に包まれる。リンパ節表面からは多数の輸入リンパ管が入り、一部のくぼんだリンパ節の門からは輸出リンパ管が出る。リンパ節の内部は細網組織の網目がつくるリンパ洞と、リンパ球の集まるリンパ小節からなる。顕微鏡でみると、リンパ小節の中央には胚中心という部分があり、ここには未熟なリンパ球が集まっていて、抗原刺激に応じてリンパ球を分裂・増生する。ここで増生されるのはBリンパ球であり、抗体を産生し体液中に放出して異物を駆除する(液性免疫)。リンパ洞は濾過装置であり、組織の網目に細菌や異物を引っかける。ここにはBリンパ球のほか、異物を攻撃するTリンパ球がある(細胞性免疫)。(p.56 リンパ節)


問30 感覚伝導路において大脳皮質に達するまでに中継されるのはどれか。

1 赤核
2 視床
3 視床下部
4 被殻

解答 2

体性感覚には皮膚感覚深部知覚とがある。皮膚感覚は痛覚・温度覚(冷覚と温覚)・触圧覚の3種類があり、対応する感覚受容器として、痛覚と温度覚には自由神経終末、触圧覚にはマイスネル小体やパチニ小体など、深部知覚には筋紡錘が知られる。

外側脊髄視床路

痛覚と温度覚は、脊髄神経節細胞の末梢突起が形成する自由神経終末で受容され、中枢突起をへて脊髄の後角に入る。ここで二次ニューロンに交代し、二次ニューロンから出た神経線維は交叉して反対側の側索にある外側脊髄視床路を上行して視床に至る。視床で三次ニューロンに乗り換え、その神経線維は内包を通り、大脳皮質の中心後回にある体性感覚野に入る。

長後索路

マイスネル小体やパチニ小体などの感覚受容器で信号化された触圧覚は、一次ニューロンである脊髄神経節細胞の末梢突起から中枢突起をへて脊髄に入り、同側の後索を上行して延髄に達し、後索核で二次ニューロンに交代する。後索核で交代した二次ニューロンの神経線維は交叉して反対側に入り、内側毛帯をつくって、延髄、橋の背側部、中脳被蓋の腹外側を上行して視床に達し、三次ニューロンに接続する。視床から起こる三次ニューロンの線維は内包を通り、大脳皮質の中心後回にある体性感覚野に入る。(p.133 上行性伝導路)

1 赤核

赤核および黒質は中脳の被害に存在する錐体外路系の神経核である。赤核は、その神経細胞が鉄を含むために赤く見え、黒質はメラニン色素を含むために黒く見える。赤核と黒質は、大脳基底核とともに、骨格筋の意識にのぽらない協調的な運動(錐休外路系)に関与する。赤核が障害されると骨格筋の緊張に異常が起こり、落ち着きのない不随意運動が起こる。黒質は主として筋の緊張の調節にあたり、その障害・変性によりパーキンソン病が起こる。(p.121 中脳)

◯ 2 視床

視床は、脳室の側壁をなすほぼ卵円形をした灰白質で、全身の皮膚感覚や深部知覚の線維また小脳から起こる線維など、大脳皮質に達する求心性伝導路のすべてがいったんここに集められ、新しいニューロンに乗り換えて大脳皮質のそれぞれの中枢に送られる。視床は脳に入る感覚情報の中継点である。視床の後方下面には内側膝状体外側膝状体という2対の高まりがあって、前者は聴覚の、後者は視覚の中継核である。 (p.123 視床)

3 視床下部

視床下部は視床の下方にあって、第3脳室の側壁および底部をつくる。底部から突き出た漏斗の先に下垂体がぶら下がり、その後方に灰白隆起および丸い1対の乳頭体がある。視床下部は、上位の大脳皮質・大脳辺縁系・視床、下位の脳幹・脊髄などと線維結合を持ち、自律機能の統合中枢として生命活動の維持に重要な働きをなす。すなわち、視床下部は自律神経系に対する最高中枢として脳幹や脊髄側角にある自律神経核に指令を発する。また、視床下部には体温調節中枢・摂食中枢・性行動・情動行動を調節する中枢がある。さらに、隆起核・視索前野などから分泌されるホルモンは、下垂体前葉のホルモンの分泌の調節を行い、内分泌腺全体の分泌機能に影響を及ぼす。(p.124 視床下部)

4 被殻
大脳髄質(白質)の中にある灰白質のかたまりを大脳基底核という。大脳基底核はレンズ核尾状核前障扁桃体からなる。レンズ核は視床の外側に位置し、さらに外側の被殻と内側の淡蒼球に分かれる。尾状核は細く長い灰白質で、視床を取り囲んで前・上・後方へと伸びる。尾状核と被殻とを合わせて線条体と呼ばれる。両者は同一の核であったが、内包の神経線維の発達により隔てられ2つに分かれたもので、両者の間にはところどころで細い線条による連絡が見られる。大脳基底核と黒質はドーパミンという神経伝達物質により情報の伝達を行っている。(p.127 大脳基底核)


問31 脳神経において副交感性の線維を含むのはどれか。

1 動眼神経
2 滑車神経
3 眼神経
4 外転神経

解答 1

副交感神経が含まれる脳神経は「ミナトク」(3,7,10,9)。「みんな得する副交感」なんてのもある。「くさった納豆」なんて言っていた人もいた。覚え方はなんでもいい。3,7,9,10が出て来れば良い。数字だけ思い出しても、脳神経の名称と結びつかなければ意味が無い。普段から脳神経の横にローマン数字で番号を振る習慣をつけると良い。自然に番号と名称が一致してくる。

1 動眼神経 III
2 滑車神経 IV
3 眼神経 V1
4 外転神経 VI


問32 上肢の神経において上腕骨内側上顆の後方を走行するのはどれか。

1 筋皮神経
2 正中神経
3 尺骨神経
4 橈骨神経

解答 3

1 筋皮神経

筋皮神経は、上腕の屈筋を支配する筋枝と、前腕の外側部の皮膚に分布する皮枝とからなる。この神経は、腕神経叢のすぐ外側に位置する烏口腕筋の中央を貫いて、内側から上腕二頭筋と上腕筋の間に入り、両筋への筋枝を出す。筋枝を出し終えた後、上腕二頭筋の外側縁下方から皮枝が出て、前腕外側部の皮膚に分布する(外側前腕皮神経)。(p.261 上肢前面の神経定行(筋皮神経・正中神経・尺骨神経))

2 正中神経
正中神経

この神経は、上腕部では枝を出さず、前腕屈筋群と母指球筋に筋枝を送るほか、手掌の橈側半分の皮膚に皮枝を分布する。
上腕部では、上腕二頭筋の内側縁(内側二頭筋溝)を縦走し、上腕動脈とともに上腕二頭筋の停止腱膜の下をくぐって肘窩に至る。
肘窩では、円回内筋の上腕頭と尺骨頭の間を通って深部に入り、尺側手根屈筋以外の前腕屈筋の浅層筋群に筋枝を出す。さらに正中神経の本幹は、浅指屈筋の起始部にある腱弓から深層に進入して、浅指屈筋と深指屈筋の間を走る。ここで、前腕屈筋の深層筋群に至る筋枝と手掌の橈側半への皮枝(手掌枝)を出しつつ手根部に達し、浅・深指屈筋の腱とともに手根管を通って手内に入る。
手内では母指球筋に分枝するほか、母指から薬指への皮枝を出す。(p.261 上肢前面の神経定行(筋皮神経・正中神経・尺骨神経))

3 尺骨神経

尺骨神経は、主に手の支配神経である。上腕部では屈筋と伸筋の間にある内側上腕筋間中隔の後方を走り、そのまま上腕骨の内側上顆の後方を通る。内側上顆の後面には、尺骨神経が骨に接する部分に尺骨神経溝が生じる。体表から肘頭と内側上顆の間のくぼみを探ると、触れたときに不快感を覚えるコリッとした尺骨神経がわかる。
尺骨神経溝を通って前腕に入った尺骨神経は、内側上顆から起こる尺側手根屈筋の深部に入り込む。これ以降、尺骨神経は尺骨動脈とともに尺側手根屈筋と深指屈筋の間を走り、両筋に筋枝を出す。手根に近づくと、尺側手根屈筋が腱になって細くなるので、筋におおわれていた神経と動脈は腱の橈側に出てくる。ここで手掌と手背の尺側半の皮枝(手掌枝と手背枝)を出す。
手根部では、尺骨神経は動脈とともに結合組織に包まれて、屈筋支帯の浅層を豆状骨の橈側から手内に尺骨神経管(ギヨン管)を通って進入する。
手内では小指球筋のほか、中手筋、母指球筋の一部に至る筋枝(深枝)と薬指と小指への皮枝(浅枝)を出す。(p.261 上肢前面の神経定行(筋皮神経・正中神経・尺骨神経))
(注) 肘頭を強く打ったときに、尺骨に沿って手の尺側半までビリッと衝撃が走るのは、肘頭のすぐそばに尺骨神経が走るためである。

4 橈骨神経

上肢帯の神経が分枝し終わったところで、後神経束は橈骨神経に移行する。
橈骨神経は、腕神経叢の枝で最も太い神経である。外側腋窩隙の下方で大円筋と上腕三頭筋長頭と上腕骨に囲まれた三角形の間隙を通って、腋窩から上腕骨後面に回り込む。
上腕の後方に出た橈骨神経は、上腕三頭筋の外側頭と内側頭との間を分けるように外側下方に向かって斜走する。上腕骨体の後面には橈骨神経が骨(橈骨神経溝)に直に接して走る。上腕の中央付近で上腕三頭筋の外側縁から出た橈骨神経は、外側上腕筋間中隔を後ろから前に貫通して下行し、外側上顆の前方に至る。
外側上顆の前方では、腕橈骨筋に枝を出して支配した後、この筋の深層で橈骨神経は大きく浅枝と深枝に2分岐する。
橈骨神経の浅枝は手背の橈側に分布する皮神経である。腕橈骨筋下に隠れて前腕を下行し、前腕下方では腕橈骨筋が腱になって細くなると皮下浅くに出て、手背の皮下に進入する。
橈骨神経の深枝は、主に前腕伸筋群の支配神経である。長・短橈側手根伸筋の深層で回外筋の中央を貫通し、前腕の伸筋群を次々に支配する。 (p.264 上肢後面の神経走行(橈骨神経))


問33 耳について正しい記述はどれか。

1 キヌタ骨は鼓室にある。
2 耳管は内耳と咽頭をつないでいる。
3 コルチ器は前庭階の中にある。
4 鼓室階の内部は内リンパ液で満たされている。

解答 1

◯ 1 キヌタ骨は鼓室にある。

鼓室内には鼓膜と内耳とを連絡するツチ骨キヌタ骨アブミ骨と呼ばれる米粒ほどの大きさの耳小骨があり、互いに関節で連結し音波による鼓膜の振動を内耳に伝えている。これらの耳小骨には耳小骨筋(鼓膜張筋・アブミ骨筋)が付着しており、強い音刺激に対して収縮し耳小骨の運動を弱めている。すなわち耳小骨による伝達を減弱して内耳に過度の刺激が加わらないように働いている。鼓室の内側壁は卵円形の前庭窓の膜があるため、中耳と内耳の間には直接の交通はない。鼓室の後方は、乳様突起の中の乳突蜂巣と交通するので、中耳の炎症がここに進行することもある。(p.154 鼓室)

2 耳管は中耳と咽頭をつないでいる。

鼓室は鼓膜に境された奥の空洞で、内面は粘膜におおわれている。前下方に向かって長さ約35mmの細長い耳管が出て咽頭(耳管咽頭口)に通じている。(p.154 鼓室)
耳管は鼓室と咽頭をつなぐ管で、普段は圧平されているが、物を飲み込んだときに一時的に開く。耳管によって鼓室の内圧は外気圧と等しく保たれ、鼓膜が振動しやすい状態になるが、なんらかの原因で閉塞すると鼓室内の空気が吸収され陰圧となり、鼓膜は内方に強く陥没し振動が悪くなり、難聴が起こる。逆に開放されたままになると、自分の声が直接鼓室に響き異常に大きく感じる(自声強聴)。(p.154 耳管)

3 コルチ器は蝸牛管の中にある。

蝸牛は文字通りカタツムリの殻に似ていて、蝸牛軸をラセン管が2巻き半取り巻いている。ラセン管の横断面をみると、その内部は2階だてになっており、1階の鼓室階と2階の前庭階に分かれ、その間に中2階として膜迷路に相当する蝸牛管が仕切られている。蝸牛管の床の基底板上にある上皮細胞は丈が高くなり、ラセン器(コルチ器)を形成し音を感受する。蝸牛神経は蝸牛軸内でラセン神経節をつくりラセン器に分布する。(p.154 蝸牛)

4 鼓室階の内部は外リンパ液で満たされている。

鼓膜を震わせた音の振動は耳小骨を通じて前庭窓に達し、前庭階を満たす外リンパの液体の振動に変えられる。外リンパの振動は蝸牛の前庭階を昇りつめると鼓室階に移り、鼓室階を下る。すなわち、両階は蝸牛の頂部で連絡し外リンパで満たされ、蝸牛窓で消失する。この外リンパの振動は中2階をなす蝸牛管の内リンパに伝えられ、その振動はラセン器の有毛細胞を刺激して音を感受する。(p.154 蝸牛)


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