2017年 第25回 はり師・きゅう師 国家試験 生理学 問題27〜37 解答

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ポイントだけを暗記するのではなく、教科書を理解するための副教材の決定版。理解をすることで記憶は強固になり、忘れなくなります。 そして解剖学の理解は臨床力への豊かな土壌となります。解剖を得意科目にして将来に役立てたい。そんな方におすすめです。

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2017年 第25回 はり師・きゅう師 国家試験 生理学 問題27〜37 解答

問題27 細胞外液について正しいのはどれか。

1 体重の60%を占める。
2 最も多く含まれる陽イオンはナトリウムイオンである。
3 細胞内液よりも浸透圧が高い。
4 間質液と血漿の蛋白質濃度は等しい。

解答 2

1 × 体重の60%を占める。 20%

細胞内液と細胞外液(生理学 p.9 細胞内液と細胞外液)
  • 体液の量:体重の約60%。
    • 細胞内液:体液の2/3 (体重の約40%)
    • 細胞外液:体液の1/3 (体重の約20%)
      • 間質液 (体重の約15%)
      • 血漿 (体重の約5%)

2 ○ 最も多く含まれる陽イオンはナトリウムイオンである。

体液のイオン組成(生理学 p.10 体液のイオン組成)

体液には、太古の海水のように多数の陽イオンと陰イオンが溶けている。陽イオンには、Na+(ナトリウムイオン)、K+(カリウムイオン)、Ca2+(カルシウムイオン)、Mg2+(マグネシウムイオン)など、陰イオンには、Cl(塩化物イオン)、HCO3(重炭酸イオン)、HPO42-(リン酸一水素イオン)、タンパク質イオンなどがある。
イオンの組成は細胞外液と細胞内液では大きく異なるが、細胞外液の血漿と間質液ではイオン組成はほぼ等しい。細胞外液では陽イオンとしてはNa+が約90%を占め、陰イオンとしてはClが大部分を占める。これに対し細胞内液では、陽イオンとしてはK+、陰イオンとしてはHPO42-やタンパク質イオンが多い。

3 × 細胞内液よりも浸透圧が高い。
細胞内液と細胞外液はイオン組成が違っても浸透圧は等しい。【標準生理学 p.46 細胞容積調節】
体液の浸透圧は、約290mOsm/lに保たれている。これは体液に溶けている物質分子の総和が一定に保たれているからである。(生理学 p.11 体液の浸透圧)

※ 膜を単純に透過できない細胞内のタンパク質などの高分子の多くが荷電しているため、多くの無機イオンが集まり、細胞内の浸透圧が高くなる (ドナン効果)。しかし、Na+などの無機イオンを細胞外に能動輸送することによって、陽イオンの流入をキャンセルしつつ、細胞内外の浸透圧を等しくつり合わせている。これにより細胞容積を一定に保っている。このようなメカニズムは「ポンプ・リークバランス機序」もしくは「二重ドナン平衡機序」と呼ばれる。【標準生理学 p.46 細胞容積調節、 p.49 図1–51 細胞内外の水移動】

4 × 間質液と血漿の蛋白質濃度は等しい。
血漿タンパクの作る浸透圧を膠質浸透圧という。特にアルブミンは血漿タンパクに占める割合が最も多く、膠質浸透圧の維持に大きく関与する。
血管内の血漿と血管外の間質液は、毛細血管の壁により隔てられている。水分や小さなイオンは毛細血管壁を自由に通過できるが、血漿タンパクは通過しにくいために毛細血管内に留まる。したがって血漿と間質液内のタンパク質の濃度にはかなり差がある。(生理学 p.40 膠質浸透圧と水分の移動)

問題28 減少すると血圧が上昇するのはどれか。

1 血管断面積
2 血中カテコールアミン
3 血液の粘性
4 循環血液量

解答 1

1 ○ 血管断面積
血管が収縮することにより血管断面積が減少すれば、血圧は上昇する

2 × 血中カテコールアミン
血中カテコールアミンが増加すれば、血管収縮を引き起こし血圧は上昇する。

3 × 血液の粘性
血液の粘性が増加すれば、血液が流れるのにより大きな圧力が必要となるので血圧は上昇する。

4 × 循環血液量
循環血液量が増加すれば、当然血圧は上昇する。

血圧は種々の要因で変動する。動脈圧は、心拍出量と総末梢抵抗(体循環全体の血管抵抗の総和)の積で表される。したがって、心拍出量あるいは総末梢抵抗に影響を与える因子によって血圧は変動する。たとえば、血液量の増大、血管収縮による血管断面積の縮小(血管抵抗の上昇)、血管抵抗の上昇をきたす血管壁の弾性の低下、1回拍出量の増加、血液粘性の上昇などによって、血圧は上昇する。(生理学 p.43 血圧に影響する因子)

問題29 呼息時に起こるのはどれか。

1 肋骨が挙上する。
2 外肋間筋が収縮する。
3 横隔膜が水平になる。
4 胸腔内圧が上昇する。

解答 4

1 × 肋骨が挙上する。
肋骨が挙上 → 胸郭が広がり胸腔内圧が低下 → 吸気

2 × 外肋間筋が収縮する。
外肋間筋が収縮 → 肋骨が挙上 → 胸郭が広がり胸腔内圧が低下 → 吸気

3 × 横隔膜が水平になる。
横隔膜が収縮 → 横隔膜が水平にある → 胸腔内圧が低下 → 吸気

4 ○ 胸腔内圧が上昇する。
胸腔内圧が上昇 → 肺が縮んで肺胞気の一部が排出 → 呼気

吸息

吸息時には脳からの指令で横隔膜と外肋間筋が収縮する。横隔膜が収縮すると、横隔膜の面積が減り、ドーム状に盛り上がっていた膜は沈下して水平になる。外肋間筋の収縮により肋骨は挙上する。その結果、胸郭が広がり胸腔内圧が下がって外界の空気が受動的に肺内に流入する。このように、通常の吸息時に収縮する横隔膜と外肋間筋を主吸息筋と呼ぶ。肋間筋は肋間神経の活動が高まることにより、横隔膜は横隔神経の活動が高まることにより、収縮する。深呼吸のときには、さらに脊柱を伸ばす筋や、肩を挙上する筋なども働く(これらを補助吸息筋という)。
主に横隔膜の運動によって行われる呼吸を横隔膜呼吸(腹式呼吸)、主に肋間筋の運動によって行われる呼吸を胸式呼吸という。呼吸は両者の共同による胸腹式呼吸であるが、安静時には主として横隔膜呼吸が関与する。(生理学 p.62 吸息)

呼息

呼息時には横隔膜と外肋間筋は弛緩する。このとき、横隔神経と肋間神経の活動は休止する。横隔膜の面積は広がってドーム状に盛り上がり、肋骨は下がる。その結果、胸郭が狭くなり、肺内の気体が呼出される。積極的な呼息時には、内肋間筋や腹筋が収縮し、胸郭がさらに狭くなる。(生理学 p.62 呼息)

胸腔内圧(胸膜腔内圧)

肺の組織は豊富な弾性線維からなる。胸膜腔内の圧(胸腔内圧)が大気圧以下、すなわち陰圧に保たれているため、肺は収縮しようとする性質に逆らって、常時引き延ばされた状態にある。吸息時には胸腔容積が増大して胸腔内圧はさらに陰圧となり、肺は拡張して外気が肺内に流入してくる。呼息時には胸腔容積が減少して胸腔内圧の陰圧度が減少し、肺が縮んで肺胞気の一部が排出される。(生理学 p.63 胸腔内圧(胸膜腔内圧))

問題30 ガストリンの胃に対する作用部位はどれか。

1 壁細胞
2 主細胞
3 粘液細胞
4 平滑筋細胞

解答 1

ガストリンの作用は胃酸分泌の促進である。

1 ○ 壁細胞:塩酸・内因子を分泌
2 × 主細胞:ペプシノゲンを分泌
3 × 粘液細胞:粘液(ムチン)を分泌
4 × 平滑筋細胞

胃液分泌の調節(生理学 p.79 胃液分泌の調節)

胃液の分泌は、自律神経やヒスタミン、消化管ホルモンによって調節される。副交感神経(迷走神経)は、胃液の分泌を促し、交感神経(内臓神経)は胃粘膜血流を減少させて胃液分泌を減少させる。ホルモンとしては、幽門腺開口部付近から分泌されるガストリンが胃液分泌(塩酸分泌)を促進し、十二指腸から分泌されるセクレチンや胃抑制ペプチド(GIP)が胃液分泌を抑制する。

食事によって反射性に起こる胃液の分泌は次の3相に区別される。
(1) 頭相:食物によって味覚、嗅覚や口腔粘膜が刺激されると、その情報は延髄に送られて迷走神経を介して直接または内分泌細胞を介して胃液分泌を増加する。胃液の分泌はまた、視覚や聴覚の刺激によっても起こりうる。
(2) 胃相:食物が胃に入ると、胃壁が伸展されたり、食物中の化学物質(タンパク質分解産物など)によって刺激されて、胃液分泌を起こす。これは主にガストリンの作用による。食事をとったときに分泌される胃液の大部分が胃相分泌による。
(3) 腸相:胃の内容物が十二指腸に送られると、酸や脂肪が十二指腸からセクレチンやGIPを分泌させ、それらが胃液分泌を抑制する。

頭相 胃相 腸相
刺激 味覚・嗅覚など 食塊による胃の伸展 酸・脂肪による腸壁の刺激
因子 迷走神経 ガストリン セクレチン・GIP
胃酸分泌 促進 促進 抑制

問題31 糖新生の材料になるのはどれか。

1 アミノ酸
2 マルトース
3 ガラクトース
4 グリコーゲン

解答 1

1 ○ アミノ酸 (糖以外の物質からグルコースを合成することが糖新生)
2 マルトース:麦芽糖 (グルコースが2つ結合した二糖類)
3 ガラクトース:単糖類
4 グリコーゲン:多糖類 (グルコースが多数結合したもの)

グリセロール(グリセリン)、アミノ酸、乳酸などの糖質以外の物質からグルコースを合成することを糖新生という。糖新生は食物やグリコーゲンからのグルコースの供給が不足したときに重要となる。(生理学 p.96 各栄養素の働きと代謝)

コルチゾールが過剰となるクッシング症候群では糖新生が過剰となるために、四肢の筋肉が分解され糖に変換される。過剰に産生された糖は脂肪として沈着するので中心性肥満となる。

問題32 コルチゾールの働きでないのはどれか。

1 抗ストレス作用をもつ。
2 免疫機能を高める。
3 胃酸の分泌を促す。
4 血糖値を高める。

解答 2

1 ○ 抗ストレス作用をもつ。
ストレスがかかると生体はコルチゾールの分泌を高めてストレスに対抗する。しかし、ストレス状態が長く続くと疲憊期となり、ストレスに対する抵抗力は逆に低下してしまう。

2 × 免疫機能を高める
コルチゾールは免疫機能を抑制する。

3 ○ 胃酸の分泌を促す。
胃液の酸およびペプシンの分泌を促進し、粘液分泌を抑制する。そのため、糖質コルチコイド分泌が長期間増加すると胃潰瘍を起こしやすい。

4 ○ 血糖値を高める。
肝臓での糖新生を促進し、血糖値を上昇させる。

コルチゾール(糖質コルチコイド)生理作用
  1. 物質代謝に対する作用:肝臓での糖新生を促進し、血糖値を上昇させる。タンパク質や脂肪の分解を促進する。
  2. 抗炎症・抗アレルギー作用:炎症やアレルギー症状を抑える。
  3. 許容作用:カテコールアミンの脂肪分解効果や血圧上昇作用などの発現には、糖質コルチコイドが少量必要である。
  4. 胃に対する作用:胃液の酸およびペプシンの分泌を促進し、粘液分泌を抑制する。そのため、糖質コルチコイド分泌が長期間増加すると胃潰瘍を起こしやすい。
  5. その他:抗ショック作用など、種々のストレス刺激に対する抵抗力を高める作用を持つ。
ストレス反応【標準生理学 p.939 ストレス反応】

H.セリエ(1936年)は、生体が外傷、中毒、寒冷、伝染病のような異なった種類の刺激にさらされた際、刺激の性格のいかんにかかわらず、ある種の一様な反応が生じる事実に注目した。この反応は脳下垂体‐副腎皮質系の内分泌系統が関与して成立するもので、もともと生体の防衛あるいは環境の変動に対する適応的な反応であると考え、汎適応症候群 general adaptation syndromeと命名している。
セリエのストレス学説によると、生体が脅威となるストレッサーにさらされると、警告反応期、抵抗期、疲憊期の3期の反応が順次起こる。

  • 警告反応期は生体が防衛反応を開始する時期で二つの相がある。
    • 最初のショック相は防衛体制が不備で、まだ十分副腎皮質ホルモンが分泌されないため、血圧低下、体温低下、胃・十二指腸の潰瘍化傾向、無尿、血糖値低下、アドレナリン分泌などが起こる。
    • これにひきつづいて抗ショック相となると、副腎皮質刺激ホルモン、副腎皮質ホルモンの分泌が高まり、上記の諸反応は逆転し生体の抵抗力は高まる。
  • そのまま生体への脅威が去らなければ、抵抗期に入り適応状態を保つ。
  • あまりに刺激が長期間つづけば、適応を持続できなくなって疲憊期になり、諸反応は失調状態となる。これは一種の過剰反応である。

問題33 加齢に伴い低下するのはどれか。

1 血圧
2 肺活量
3 副甲状腺ホルモン分泌
4 血糖値

解答 2

身体機能の加齢変化(生理学 p.161 身体機能の加齢変化)
  1. 高次神経機能:高次神経機能は多様であり、機能により加齢変化が大きく異なる。
    • 知能:最も標準的なウェクスラ一成人知能検査、改訂版(WAIS-R, We-chsler Adult Intelligence Scale, Revised)によると85歳に至るまで一般的な知能にはほとんど変化がない。一方、柔軟性などを調べるウィスコンシン・カード・ソーティングテストでは、間違った答えを続ける保続反応が年齢とともに増加し、柔軟性や対処能力が低下する。
    • 記憶:高齢者では、数字の復唱のような短期記憶は比較的よく保たれている。高齢者の長期記憶では、意味記憶(日本の首都のような一般的知識の記憶)や手続き記憶(練習で身についた技術などの記憶)は維持される傾向にあるが、エピソード記憶(昨年夏の出来事のような個人的経験の記憶)が低下しやすいと言われている。
    • 言語:文章を読んだり意味を持つ言葉をつなげる構文能力は、高齢者でも維持される。一方、意味に関連した物事を思い出す喚語機能は80歳代から低下し、言語の流暢さも低下する。
  2. 運動機能:運動機能は比較的早い時期から加齢に伴い低下する。一般に歩行程度の運動では低下の度合いが少ないが、跳躍するような瞬発的な運動では低下度が著しい。立位姿勢時の重心動揺の幅が60歳頃より大きくなり、姿勢変化に対する適応能力も低下する。
  3. 感覚機能:加齢に伴い視覚、聴覚、味覚、平衡感覚、皮膚感覚などの感覚機能が衰える。空腹感や渇き感の低下も起こりやすい。
  4. 血液・循環機能:安静時の血圧は一般に年齢とともに上昇する傾向を示す。これは高齢者では血管が弾力性を失って血管抵抗が高まっているためである。血液中のヘモグロビン濃度は加齢とともに減少するため、高齢者では貧血になりやすい。
  5. 呼吸機能:安静時の1回換気量は、成人と高齢者との間にほとんど差がない。しかし高齢者では軽い運動でもすぐに息切れするといった現象が起こりやすい。これは加齢とともに肺活量が減少しているためである。
  6. 排尿機能:女性と男性で排尿機能の加齢変化の現れ方が異なる。女性ではもともと尿道が短いことに加え、特に閉経後に尿道閉鎖力が弱くなるため尿失禁になりやすい。男性では尿道が長く、さらに加齢に伴う前立腺肥大により尿道が圧迫されるため、排尿困難が生じやすい。
  7. 内分泌機能:性ホルモンの分泌は加齢に伴い減少する一方、カテコールアミン(アドレナリン、ノルアドレナリン)や副甲状腺ホルモンの分泌は加齢に伴い上昇する。カテコールアミンは血圧を上げるなどの悪影響を及ぼす。一方、インスリン、甲状腺ホルモン、副腎皮質ホルモンなどは加齢によりほとんど変化しない。
  8. その他の機能:消化・吸収機能や免疫機能も加齢に伴い低下する。

問題34 貧血の要因でないのはどれか。

1 胃の全切除
2 栄養不足
3 高地への移住
4 脾臓の機能亢進

解答 3

1 ○ 胃の全切除:ビタミンB12吸収障害 → 赤芽球の成熟が障害 → 巨赤芽球性貧血(大球性正色素性貧血)【臨床医学各論 p.223 巨赤芽球性貧血】

ビタミンB12や葉酸は、骨髄における赤血球の新生を促すビタミンで、抗貧血ビタミンと呼ばれる。固有胃腺の壁細胞は塩酸と内因子を分泌する。ビタミンB12が小腸から吸収されるには、胃液に含まれる内因子と結合する必要があるため、胃の全切除ではビタミンB12吸収不全が起こり、貧血になる。(生理学 p.19 抗貧血ビタミン)

2 ○ 栄養不足:鉄分の不足 → 鉄欠乏性貧血(小球性低色素性貧血)、 ビタミンB12・葉酸の不足 → → 巨赤芽球性貧血(大球性正色素性貧血)
栄養不足(鉄、ビタミンB12、葉酸、タンパク質の不足など)により、赤血球の生成が障害され、貧血となる。

3 × 高地への移住:エリスロポエチン分泌 → 赤血球産生亢進
腎臓から分泌されるエリスロポエチンは赤血球の新生を促す。(生理学 p.150 腎臓のホルモン)

4 ○ 脾臓の機能亢進:赤血球の破壊亢進 → 正球性正色素性貧血
赤脾髄の機能は古くなった赤血球の破壊である。脾臓の機能亢進により通常以上に赤血球の破壊が亢進され貧血となる。

貧血

貧血とは、血液全体に含まれる赤血球あるいはヘモグロビン量が減少した状態とそれに伴う症状をいう。血液中のヘモグロビンの量は粘膜、結膜、皮脂、爪の色に反映される。したがって眼瞼の結膜や口腔粘膜の色は貧血の指標となる。組織中の酸素不足による倦怠感のような全身症状と酸素不足を代償するために頻脈などの症状が出てくる。
貧血は血液が大量に失われた場合や、赤血球の生成から破壊までの過程に何らかの障害があるために起こる。たとえば、①栄養不足(鉄、ビタミンB12、葉酸、タンパク質の不足など)、②骨髄の障害(白血病など)、③溶血、④エリスロポエチンの分泌障害などが貧血の原因となる。(生理学 p.20 貧血)

問題35 反射について正しいのはどれか。

1 腹壁反射の中枢は脊髄である。
2 咬筋反射の遠心路は脊髄神経である。
3 屈曲反射の求心路はIa群線維である。
4 アキレス腱反射は多シナプス反射である。

解答 1

1 ○ 腹壁反射の中枢は脊髄である。
腹壁反射・挙睾筋反射・横隔膜反射などの皮膚反射は脊髄反射の一つである。(生理学 p.237 皮膚反射)

2 × 咬筋反射の遠心路は脊髄神経である。
咬筋反射の遠心路は三叉神経 (第3枝 下顎神経)ある。
下顎骨を下に向けて叩くと、閉口筋(咬筋)が収縮して口が閉じる。咀嚼筋 (咬筋・側頭筋・内側翼突筋・外側翼突筋)は三叉神経支配。(生理学 p.240 脳神経を遠心路とする反射)

3 × 屈曲反射の求心路はIa群線維である。
屈曲反射の求心路はIII群線維 (Aδ線維)である。張反射、括抗抑制、腱受容器からの反射などが、太い有髄の求心性線維によって起こるのに対して、屈曲反射はそれより細い求心性線維によって起こる。(生理学 p.236 屈曲反射)

4 × アキレス腱反射は多シナプス反射である。
アキレス腱反射などの伸張反射は脊髄内で興奮性シナプスを1個介する特徴がある。このように、中枢神経内でシナプスを1個介する反射を単シナプス反射という。(生理学 p.233 伸張反射)

脊髄反射
  • 伸張反射(膝蓋腱反射やアキレス腱反射などの腱反射)
    腱への刺激により筋が伸ばされる → 筋紡錘 → Ia群求心性神経 → 後根より後角にはいり、介在ニューロンを介さず直接、同筋のα運動ニューロンに接続

    • 伸張反射は単シナプス反射(介在ニューロンを介さない)
    • 伸張反射は固有反射(刺激された筋と同じ筋へ起こる反射)
  • 拮抗抑制
    伸張反射が生じる際に、拮抗筋のα運動ニューロンが相反的に抑制される。
    腱への刺激により筋が伸ばされる → 筋紡錘 → Ia群求心性神経 → 後根より後角にはいり、介在ニューロンに接続 → 拮抗筋のα運動ニューロンを抑制

    • 多シナプス反射 (介在ニューロンを介する。伸張反射以外はすべて多シナプス反射!)
  • 屈曲反射 (ひっこめ反射)
    手足に熱や痛み刺激が加わったときに、刺激が加わった四肢を引っ込める反射。侵害性刺激から四肢を遠ざける防御的役割をもつ。
    侵害刺激を自由神経終末が感知 → Aδ線維 → 後根より脊髄に入り、脊髄内で上下に広がり、数髄節にわたって介在ニューロンを活動させる(髄節間反射弓)。 → 侵害刺激から遠ざかるのに必要な複数の筋群のα運動ニューロンが興奮 → 屈筋群が収縮し、足をひっこめる。(屈曲反射)

    • 多シナプス反射 (介在ニューロンを介する)
    • 求心路は高閾値侵害受容器からのAδ線維
  • 交叉性伸展反射
    侵害刺激を自由神経終末が感知 → Aδ線維 → 後根より脊髄に入り、脊髄内で上下に広がり、数髄節にわたって介在ニューロンを活動させる(髄節間反射弓)。 → 屈曲反射が起こる下肢と反対側の伸筋群α運動 ニューロンが興奮 → 反対側の伸筋群が収縮し、身体のバランスを保つ。(交叉性伸展反射)

    • 多シナプス反射 (介在ニューロンを介する)
  • 皮膚反射
    皮膚の刺激によって筋の収縮が反射性に脊髄レベルで調節される例がいくつかある。これらの反射を皮膚反射という。いずれも脊髄レベルで介在ニューロンを介して、多シナプス性に調節される。

    • 腹壁反射
      腹部の皮膚を軽く刺激すると腹壁筋が反射性に収縮する
    • 挙睾筋反射
      大腿の内側の皮膚を軽く擦ると挙睾筋が反射性に収縮する挙睾筋反射
    • 横隔膜反射
      胸部の下方の皮膚を刺激すると反射性に横隔膜が収縮する
  • 長脊髄反射
    伸張反射、屈曲反射、皮膚反射などの脊髄反射は、脊髄の同一分節内あるいは数分節内で行われる脊髄分節反射であるが、さらに遠隔の脊髄分節に作用が及ぶ長脊髄反射もある。

    • 四肢間反射
    • ひっかき反射
  • 内臓-運動反射

問題36 痛覚について正しいのはどれか。

1 侵害受容器は特定の受容器構造をもつ。
2 表在性痛覚はII群線維が伝える。
3 深部痛覚はIV群線維が伝える。
4 ヒスタミンは内因性鎮痛物質である。

解答 3

1 × 侵害受容器は特定の受容器構造をもつ
侵害受容器は神経組織が組織中にそのまま終わる自由神経終末である(特定の受容器構造をもたない)。

皮膚の痛覚を起こす侵害受容器には、機械的侵害刺激にのみ反応する高閾値機械受容器と、機械的、温度、化学的刺激など異なる多種類の侵害刺激に応じるポリモーダル侵害受容器が見出されている。侵害受容器はいずれも神経線維が組織中にそのまま終わる自由神経終末である。(生理学 p.258 表在性痛覚)

2 × 表在性痛覚はII群線維が伝える。
表在性痛覚のうち、速い痛みはIII群線維(Aδ線維)が伝え、遅い痛みはIV群線維 (C線維)が伝える。

針で皮膚を突き刺すと、瞬間的に鋭い痛みを感じる。これは局在性が明確な痛みで、刺激がやむと急速に消失する特徴がある。刺激が強い場合、この速い痛みの後に、潜時が0.5~1秒の遅い痛みが続くことがある。これは鈍い灼け付くような痛みで空間的な広がりを持ち、ゆっくりと消失する特徴がある。このように皮膚の痛みには質の異なった2種類の痛みがある。
皮膚の高閾値機械受容器の情報は主として細い有髄のAδ線維によって伝達されて刺すような速い痛みを、ポリモーダル侵害受容器の情報は主として非常に細い無髄のC線維によって伝達され、うずくような遅い痛みを伝えると考えられている。(生理学 p.258 表在性痛覚)

3 ○ 深部痛覚はIV群線維が伝える。

皮下組織、骨格筋、腱、骨膜、関節などから生じる痛みを深部痛覚という。深部痛覚は、皮膚の表在性痛覚と異なり、一般に局在性に乏しく、持続的な鈍痛で、内臓痛覚に近い性質を持つ。激しい筋運動後や筋循環障害時の筋痛、関節の正常範囲を超えた伸展や関節炎の際の関節痛、脳の血流障害や脳圧変化などによって起こる頭痛などがある。受容器は自由神経終末で、主にC線維 (IV群線維)によって伝えられる。骨格筋のC線維は筋の伸展や筋の収縮あるいは虚血には応じないが、虚血下での収縮によって興奮する。機械的刺激に対する痛みは骨膜が最も感じやすく、関節包、結合組織、骨格筋の順に感じにくくなる。(生理学 p.251 深部痛覚)

4 × ヒスタミンは内因性鎮痛物質である。
ヒスタミンは内因性発痛物質である。

侵害刺激は侵害受容器を直接興奮させるが、一方、組織損傷やそれに続く炎症により種々の内因性発痛物質を損傷・炎症部位に産生する。
内因性発痛物質には、ブラジキニン、セロトニン、ヒスタミン、K+、H+のように侵害受容器を興奮させて痛みを起こす物質や、ブロスタグランジン、ロイコトリエンのように侵害受容器の感受性を高めて発痛増強作用を示す物質、その両方の作用を示す物質などがある。その他、血漿中に含まれる補体のように、組織に出て肥満細胞に作用してヒスタミンを放出させたり、壊れた細胞の成分からブラジキニンを産出して、発痛に関与する物質もある。これら内因性発痛物質の中には、血管拡張作用や血管透過性増大作用を持ち、組織局所の発熱、腫脹、発赤などの炎症反応の発現に関与するものもある。(生理学 p.261 内因性発痛物質)

問題37 塩分を多く摂取したときに血中濃度が高くなるのはどれか。

1 アルドステロン
2 コルチコステロン
3 パラソルモン
4 バゾプレシン

解答 4

1 × アルドステロン

電解質コルチコイドであるアルドステロンは、腎臓の主に集合管に作用してNa+再吸収を増大させ、K+の排泄を促す。Na+再吸収促進に伴い、水分も再吸収されるため、細胞外液量を増加させる。
アルドステロン分泌は主にレニン-アンジオテンシン系により調節されるが、この他の分泌調節として、ACTH、血漿Na+濃度低下、K+濃度増加の直接作用によって分泌が増す。(生理学 p.145 電解質コルチコイド)

2 × コルチコステロン

糖質コルチコイドであるコルチゾルとコルチコステロンには、物質代謝に対する作用、抗炎症・抗アレルギー作用、許容作用、胃に対する作用などがある。分泌調節は視床下部 – 下垂体前葉 CRH-ACTHの分泌によって促進される。(生理学 p.144 糖質コルチコイド)

3 × パラソルモン

副甲状腺(上皮小体)は、甲状腺の後面に左右2個ずつあり、副甲状腺ホルモン(パラソルモン、PTH:parathormone)を分泌する。副甲状腺ホルモンは骨と腎臓に作用して、血漿中のCa2+濃度を増大させる。血漿中Ca2+濃度が減少すると、副甲状腺ホルモンの分泌が高まる。(生理学 p.141 副甲状腺ホルモン)

4 ○ バゾプレシン

パゾプレッシン(抗利尿ホルモン;ADH)は、腎臓の集合管における水の再吸収を促進して尿量を減らす(抗利尿作用)。このため抗利尿ホルモン(ADH)ともいう。たとえば、塩辛いものを食べて血漿浸透圧が上昇すると、パゾプレッシン分泌が増加して尿量が減少し、体内からの水分喪失が抑えられる。(生理学 p.137 下垂体後葉ホルモン)

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