私は効果的な学習法として「アクティブリコール」と「チャンク化」を推奨しています。ここではアクティブリコールについて掘り下げます。
アクティブリコールは、学習した情報を自ら思い出す(=“リコール”する)ことを繰り返す学習法です。これは、テキストを読んだり講義を聞いたりするという「受動的インプット型」学習とは異なり、自分の頭から情報を引き出す「アウトプット型」学習を重視するものです。
なぜ効果的なのか
この学習法が効果的とされる理由は以下の通りです。
まず、「思い出す」という行為そのものが、記憶を長期的に定着させる効果を持つという研究があります。つまり、ただ読む・見るだけよりも、自分で考えて思い出す方が記憶に残りやすいということです。
次に、受動的にインプットするだけでは記憶が長続きせず、忘却が比較的早く進む傾向があります。逆に、思い出すというプロセスを通すことで、脳が「この情報は重要だ」と認識しやすくなり、記憶痕跡が強化されると考えられています。
さらに、思い出そうとする過程で「自分はどこを理解していないか」「どこが曖昧か」が明らかになります。このことは、復習や理解の深掘りをしやすくするメタ認知的な利点も持っています。
実践するにはどうすればいいか
アクティブリコールを効果的に実践するためには、以下の手順がおすすめです。
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学習内容の理解
まず教材や講義で学んだ内容を概ね理解します。理解が浅いままでは、いざ思い出そうとしたときに抜けや誤りが増えやすくなります。 -
情報を閉じて、自分で思い出す
テキストやノートを見ずに、「◯◯とは何か?」「どんなプロセスだったか?」と自分に問いかけ、自分の頭から学んだ内容を引き出します。例えば、白紙に書き出す、口頭で説明してみるといった方法です。 -
答え合わせ・復習
思い出した内容を教材やノートと照らし合わせて、誤りや抜けがないか確認します。そして、理解が浅かった部分や曖昧だった部分を再学習します。 -
繰り返し実践
上記の「思い出す → 答え合わせ・復習」のサイクルを時間を置いて繰り返します。例えば、数時間後、翌日、数日後といった形で間隔をあけて復習することで、記憶がより定着します。
注意すべきこと・補足
ただ漠然と繰り返すだけでは効果が十分とは言えません。重要なのは「自分で思い出そうとする負荷」をかけることです。つまり、答えをすぐ見られる状態ではなく、自分で頭を使って出そうとすることがポイントです。
また、完璧を目指す必要はありません。むしろ、間違えたり抜けたりした情報を発見して修正すること自体が、記憶を強化するプロセスになります。
なお、この学習法だけで全ての学習が完了するわけではありません。特に技能的な学習(楽器演奏、スポーツ、実技など)では、「動かす・使う」練習も別途必要です。アクティブリコールは、まず「引き出せる記憶」を土台として作るという位置づけです。
どんな場面で有効か
アクティブリコールが特に有効な場面を整理します。
暗記科目(語学の単語・熟語、歴史の年代、法律の条文など)では、記憶を正確に引き出すことが求められるため、この方法の効果が顕著です。
また、理解と記憶が混在する科目(数学・物理の定理や公式、化学反応式など)においても、「この公式は何を意味するか」「どんな条件で使えるか」を自分で思い出すことで、理解と応用力を高めることができます。
さらに、試験直前の短期集中復習よりも、時間を空けて繰り返す「間隔反復(スペースドリピティション)」と組み合わせることで、長期記憶として残る可能性が高くなります。





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