【詳細解説】胃酸を分泌する細胞はどれか (2014年 あマ指 問題25)

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ポイントだけを暗記するのではなく、教科書を理解するための副教材の決定版。理解をすることで記憶は強固になり、忘れなくなります。 そして解剖学の理解は臨床力への豊かな土壌となります。解剖を得意科目にして将来に役立てたい。そんな方におすすめです。

かずひろ先生の解剖学マガジンのポイント
1 とにかく図が豊富
2 解説、一問一答、国試過去問で効率良く学べる
3 ポイントは表形式でまとめられ、覚えるポイントが明確
4 オンライン講座と連動。アーカイブ動画で何度でも学習できる

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胃酸を分泌する細胞はどれか (2014年 あマ指 問題25)
1 G細胞
2 主細胞
3 副細胞
4 壁細胞

回答と選択肢の考察

解答4

1 G細胞 ガストリンを分泌(内分泌)

ガストリンは壁細胞に作用し胃酸分泌を促進させる。

2 主細胞 ペプシノーゲンを分泌

ペプシノーゲンは胃酸と反応して蛋白分解酵素のペプシンとなる。

3 副細胞 粘液(ムチン)を分泌

胃粘膜を保護する。

4 壁細胞 塩酸と内因子を分泌

塩酸は胃液を強い酸性とする。胃からでる酸なので胃酸ともいう。内因子は回腸でのビタミンB12の吸収に必要。

考え方

胃腺は部位により噴門腺胃底腺固有胃腺)、幽門腺の3種類が存在する。このうち噴門腺と幽門腺は主に粘液を分泌する粘液腺であるが、胃底腺は3種の細胞があり、粘液のほかに塩酸、ペプシノーゲンなどを分泌する。どの細胞が何を分泌するかをしっかりと覚えること。

胃底腺を構成する3つの細胞について

  • 主細胞ペプシノーゲン(蛋白分解酵素ペプシンの前駆体)を分泌する。ペプシノーゲンは塩酸(HCl)と反応し活性のあるペプシンとなり、蛋白質をペプチドに分解する。
  • 壁細胞塩酸内因子を分泌する。塩酸は胃液を強い酸性にして、ペプシノーゲンを活性化するとともに、胃内容物の殺菌消毒にあずかる。また、壁細胞は内因子を分泌することを忘れないよう。内因子は回腸でのビタミンB12の吸収に必要。胃癌などで胃を全摘するとビタミンB12の吸収障害により巨赤芽球性貧血が起きることが知られている。
  • 副細胞(粘液細胞):粘液ムチン)を分泌する。ムチンは胃粘膜内面を覆い、塩酸により胃粘膜が傷害されるのを防ぐ。

プロスタグランジンE2やI2には痛み増強や発熱を引き起こす作用がある。アスピリンなどに代表される非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)は、このプロスタグランジンの合成を阻害することにより、解熱や鎮痛の作用を起こす。しかし、プロスタグランジンE2やI2は胃粘液の分泌促進の作用もあり、胃粘膜を保護する役目もある。解熱鎮痛剤を飲むと、鎮痛や解熱の作用が得られるが、胃粘膜の保護が弱くなるため胃腸障害を引き起こしやすくなることが知られている。

胃底腺は固有胃腺ともいう。ここで解剖学における「固有」という単語について考察してみよう。「固有」について広辞苑をしらべてみると、「1. 天然に有すること。もとからあること。2. その物だけにあること。」などの意味がある。解剖学では「固有」=「本来の」と置き換えて考えてみるとよい。以下に例をあげる

  • 固有胃腺:「本来の胃腺」。胃腺には噴門腺や幽門腺もあるが、これらは粘液を分泌するのみである。固有胃腺ともいわれる胃底腺が胃液の特徴である酸やペプシンを含む「本来の胃液」を分泌する。
  • 固有心筋:心筋には固有心筋と特殊心筋の2種類がある。特殊心筋は文字どおり特殊な心筋で静止電位を持たないのが特徴である。静止電位を持たないので時間とともに自動的に脱分極し閾値に達して活動電位を生じるのが特徴である。心臓の刺激伝導系を構成する。つまり「特殊な心筋」なのだ。固有心筋は「本来の心筋」。ギャップ結合により隣り合う心筋細胞同士がつながり、イオンの流れが可能であることから機能的合胞体を構成している。心臓がポンプとして機能するための「本来の心筋」が固有心筋だ。
  • 固有肝動脈:腹腔動脈から枝分かれした総肝動脈が肝臓のほうに向かうが、まだ枝分かれがある。いくつか枝をだした後に、もう枝をださない(終枝)となって肝臓に入っていくのが固有肝動脈である。「本来の肝動脈」という意味だ。総肝動脈は肝臓や十二指腸、膵臓上部など総合して栄養するから総肝動脈。
  • 固有背筋:まず背筋は「浅背筋」と「深背筋」にわけられる。浅背筋は僧帽筋、広背筋、肩甲挙筋、小菱形筋、大菱形筋を言う。上肢の運動に関与するのが浅背筋。深背筋は上肢の運動とは関係がなく、第1層と第2層にわけられる。第1層は上後鋸筋、下後鋸筋であり、椎骨の棘突起と肋骨を結ぶので、棘肋筋といわれる。深背筋の第2層が「固有背筋」。板状筋、脊柱起立筋、横突棘筋の3つを言う。脊髄神経後枝に支配されるこれらの筋が「本来の背筋」である「固有背筋」だ。上後鋸筋と下後鋸筋は脊髄神経前枝の肋間神経支配であるので、「本来の背筋=固有背筋」ではない。
  • 固有口腔:口唇および頬の粘膜と歯列弓の間を口腔前庭という。(歯ブラシをいれて前後に小刻みにシュコシュコ動かすところだ)。そして歯列弓より後方を固有口腔という。「前庭」とは、「何かの前の平たい空間」を表している。歯の後ろが固有口腔「本来の口腔」であり、歯の前は、「口腔の前の平たい空間」であるので、口腔前庭という。

消化管ホルモンについて

この問題の選択肢にあるG細胞ガストリンという消化管ホルモンを分泌する。ガストリンは血液にのって胃腺に運ばれ、壁細胞に作用して塩酸分泌を促進させる働きがある。ここで注意したいのはガストリンは「消化管ホルモン」であるということ。ホルモンというのは内分泌つまり分泌先が毛細血管で、血液にのって離れた部位に作用する物質のことだ。主細胞、壁細胞、副細胞が分泌する物質は胃液となる外分泌、G細胞が分泌するガストリンはホルモンなので内分泌だ。ガストリンが胃液に混じって分泌されるわけではないので注意する。消化管ホルモンとしては以下のものが重要なので覚えておこう。

  • ガストリン:胃酸分泌を目的として分泌されるホルモン。胃幽門部への機械的・化学的刺激により幽門腺開口部付近に多く存在するG細胞により分泌される。ガストリンは壁細胞に作用し、胃酸分泌を促進させる。
  • セクレチン:十二指腸に流入した胃酸の中和を目的として分泌される。十二指腸壁に胃酸刺激が加わるとS細胞より分泌される。セクレチンは膵臓の腺房中心細胞に作用し、HCO3-(重炭酸イオン)に富むアルカリ性の膵液を分泌させる。
  • コレシストキニン:十二指腸に流入した食物の消化が目的。十二指腸壁にアミノ酸や脂肪酸の刺激が加わるとI細胞より分泌される。コレシストキニンは胆嚢の平滑筋を収縮させ、胆汁放出を促すとともに、膵臓の腺房細胞に作用し消化酵素に富む膵液の分泌を促す。

コレシストキニンは胆嚢収縮作用をもつ消化管ホルモンとして、1928年に発見され、その後パンクレオザイミンが膵消化酵素分泌作用を有する消化管ホルモンとして1043年に発見された。後日コレシストキニンとパンクレオザイミンは同じ物質であることが判明し、一般にコレシストキニンと呼ばれる。胆道機能を測る検査として「コレシストキニン-パンクレオザイミン試験(CCK-PZ試験)」というものがある。これは2つのホルモンを投与するのではなく、投与するのはコレシストキニンのみである。パンクレオザイミンを見つけた人にも敬意を払い、コレシストキニン-パンクレオザイミンと呼ぶことがある

【知識の確認】

  • 胃腺は部位により(  腺)、(  腺)、(  腺)の3種類が存在する。解答
  • 噴門腺と幽門腺は主に粘液を分泌する(  腺)である。解答
  • 胃底腺は(  胃腺)とも言い、3つの細胞からなる。解答
  • 主細胞は(  )を分泌する。この物質は胃酸と反応して蛋白分解酵素の(  )となる。解答
  • 副細胞は(  )を分泌し、胃粘膜を保護する。解答
  • 壁細胞が分泌するものは2つある。ひとつは胃液を強い酸性とする(  )。もう一つは回腸でのビタミンB12の吸収に必要な(  )である。解答
  • G細胞は(  )という消化管ホルモンを分泌する。これは壁細胞に作用し胃酸分泌を促進させる。解答
  • 十二指腸に胃酸が流れ込むと、十二指腸壁のS細胞から(  )という消化管ホルモンがでる。これは膵臓に作用して(  イオン)を多く含む(  性の膵液)の分泌を促し、胃酸の中和に働く。解答
  • 十二指腸に粥状となった食物が流れ込むと、十二指腸壁のI細胞から(  )という消化管ホルモンがでる。これは(  )を収縮させ、胆汁の放出を促すとともに、膵臓に作用して(   に富む膵液)の分泌を促し、食物の消化を促す。解答

解答一覧

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