【詳細解説】心臓について正しいのはどれか (2014年 あマ指 問題27)

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ポイントだけを暗記するのではなく、教科書を理解するための副教材の決定版。理解をすることで記憶は強固になり、忘れなくなります。 そして解剖学の理解は臨床力への豊かな土壌となります。解剖を得意科目にして将来に役立てたい。そんな方におすすめです。

かずひろ先生の解剖学マガジンのポイント
1 とにかく図が豊富
2 解説、一問一答、国試過去問で効率良く学べる
3 ポイントは表形式でまとめられ、覚えるポイントが明確
4 オンライン講座と連動。アーカイブ動画で何度でも学習できる

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問題2014–27a 心臓について正しいのはどれか。(あマ指2014年)
1 三尖弁は乳頭筋により開く。
2 中心臓静脈は前室間溝を走る。
3 心内膜は重層扁平上皮からなる。
4 刺激伝導系は特殊心筋よりなる。

回答と選択肢の考察

解答4

1 三尖弁は乳頭筋により開く逆流が防止される

腱索と乳頭筋は房室弁の逆流防止装置だ。つまり弁が開かないようにしている。心室が収縮すると、中に満たされている血液は上向きに押し出される力が働く。この時に房室弁が固定されなければ、房室弁が心房側に翻って血液が逆流してしまう。乳頭筋は心室筋の一部なので、心室が収縮するときに乳頭筋も収縮する。これにより腱索を介して房室弁が開かないように固定する。

2 中心臓静脈は前室間溝を走る。大心臓静脈

ヒダリマエ、大きいのが当たり前」左前なので、前室間溝を走る前室間枝は左冠状動脈の枝である。そして大きいのが当たり前なので、大心臓静脈が走っている。つまり、前室間溝を走る血管は、前室間枝(左冠状動脈の枝)と大心臓静脈。

3 心内膜は重層扁平上皮からなる。単層扁平上皮

心内膜はそのまま血管内皮に連続するので、血管内皮と同じく単層扁平上皮だ。「血管内皮」と何気なく用語を使っているが、ここで「内皮」という単語に注目してみる。心臓、血管、リンパ管の覆う単層扁平上皮を内皮と言う。また、心膜腔、胸膜腔、腹膜腔の表面をおおう単層扁平上皮(つまり漿膜性心膜、胸膜、腹膜)は「中皮」という。内皮も中皮も単層扁平上皮である。

4 刺激伝導系は特殊心筋よりなる。

これが正しい。刺激伝導系は「特殊な心筋」により構成される。神経線維により刺激が伝わっているのではない。また、収縮のリズムも特殊心筋の自動能により決まる。神経のパルスが心臓のリズムを作っているのではない。心臓には自律神経が分布しているが、交感神経や副交換神経は興奮発生の頻度や速度を速めたり遅くしたりの調節しているだけで、あくまで興奮の発生は洞房結節などの刺激伝導系だ。なので、例え心臓に分布している交換神経と副交換神経を切断したとしても、心臓は機能しつづける。

考え方

心臓を理解していくにあたり、まず左心は動脈血右心は静脈血であるというところから始めるといろいろ理解しやすいと思う。そして心房は心臓の上部で血液を受け取る場所、心室は心臓の下部で血液を送り出す場所だ。

ちなみに、心房はatriumという。
このアトリウムというのは、元々の語源は古代ローマ住宅の玄関ホールの役割を果たした中庭のことを表した。現代建築では、エントランスホールに壁面や天井にガラスを使用した吹き抜けがある開放的な空間が設けられるようになり、それをアトリウムと呼ぶようになった。心房を古代ローマ住宅の玄関ホールと同じ名前を付ける昔の人のセンスに拍手を送りたい。心房は玄関ホールで、受け入れるのが役割だ。おっと。国試には関係ないことで長くなってしまった。

左心は動脈血

左心は動脈血を循環させる。
左心房に流入する血管は、肺でガス交換を終えて酸素をたっぷり含んだ動脈血が流れる肺静脈だ。左心房に流入した動脈血は左心室に送られて、左心室が収縮して、上行大動脈から全身に送られる。

  • 左心房:肺静脈(入)
  • 左心室:上行大動脈(出)

右心は静脈血

右心は静脈血を循環させる。
右心房に流入する血管は、上大静脈下大静脈に加え、心臓自身を栄養した後の静脈血があつまる冠状静脈洞を忘れてはならない。右心房に流入した静脈血は右心室に送られて、肺動脈として肺に送られる。

  • 右心房:上大静脈、下大静脈、冠状静脈洞(入)
  • 右心室:肺動脈(出)

体循環と肺循環

体循環(大循環):身体の組織に酸素と栄養を送りとどけ、二酸化炭素を回収して戻ってくる
左心室→大動脈→動脈→毛細血管→静脈→大静脈→右心房
肺循環(小循環):ガス交換を目的として肺に血液を送り、二酸化炭素を放出し、酸素をたっぷり吸収して戻ってくる。
右心室→肺動脈→肺胞の毛細血管→肺静脈→左心房
肺動脈には静脈血が、肺静脈には動脈血が流れていることに注意すること。

心臓の弁膜について

心臓には2種類4つの弁膜がある。

  • 房室弁:心房と心室の間にある弁。
  • 左房室弁=二尖弁=僧帽弁
  • 右房室弁=三尖弁

房室弁も(肺葉も)左二右三である。つまり左房室弁は二尖弁、右房室弁は三尖弁。二尖弁は僧侶の被る帽子に似ているので僧帽弁だ。心房が収縮し、心房内圧が高まると房室弁が開き、心房内の血液が心室に送られる。
また房室弁には腱索を介して乳頭筋が付着している。乳頭筋は心室筋の一部で、心室が収縮するときに乳頭筋も同時に収縮することにより房室弁を引っ張って固定し、房室弁が心房側に翻って血液が逆流しないようにしている。

  • 動脈弁三枚の半月弁よりなる。
  • 大動脈弁:大動脈弁のすぐ上に左右の冠状動脈の起始部がある。
  • 肺動脈弁:心臓の4つの弁膜のうち、最も腹側(前側)に位置する。

大動脈弁も肺動脈弁も共に三枚の半月弁よりなる。
心室に血液が充満したら、次は心室が収縮を始める。心室内圧が心房内圧より高くなると房室弁が閉鎖する。そして心室内圧が動脈圧より高くなると動脈弁が開き、血液が駆出する。

心臓の壁の構造

心臓の壁は心内膜・心筋層・心外膜の 3 層 からなる。

  • 心内膜:心臓の内面をおおう単層扁平上皮。血管の内膜にそのまま移行する。
  • 心筋層:心臓壁の主体をなす層。左心室の心筋層が最も厚い
  • 心外膜:漿液性心膜の臓側板と結合組織よりなる。心外膜の結合組織内に冠状動脈と静脈が走る。

刺激伝導系

心臓がポンプとしての機能を発揮するために 、心房から心室へと順序よく興奮を伝えるのが刺激伝導系である。
心筋には固有心筋特殊心筋の2種類の心筋がある。固有心筋は収縮に適した心筋で、特殊心筋は興奮の発生と伝導に適した「特殊な」心筋である。刺激伝導系はこの特殊心筋によって構成される。

刺激伝導系の順序

洞房結節→房室結節→房室束(ヒス束)→左脚・右脚→プルキンエ線維

  • 洞房結節:心臓の拍動を決めるペースメーカーとして働く。右心房の上大静脈開口部付近に存在。
  • 房室結節右心房の下壁に存在。
  • 房室束(ヒス束)線維三角を通過し、心房と心室の間の興奮伝導を司る。
  • 左脚・右脚心室中隔を下行する。
  • プルキンエ線維:心室の心内膜下を細かく枝分かれしながら広がる。

特殊心筋は外部からの刺激なしに単独で興奮する作用がある。これを自動能という。刺激伝導系には各部位が自動能をもつが、一番上位である洞房結節のリズムが一番速い。よって、刺激伝導系の下位の部分は、洞房結節のリズムにしたがい興奮を伝導する。何らかの要因で刺激伝導系の興奮伝導が障害された場合には、下位の特殊心筋がもともと持っている自動能のリズムで興奮を発生させる。
たとえば、房室束のところで興奮伝導が途切れたとする(房室ブロック)。洞房結節で発生した興奮は心房を収縮させるが、そのリズムは心室には伝わらない。心室は左脚・右脚やプルキンエ線維などの特殊心筋がもつ自動能のリズムで収縮を始める。プルキンエ線維の興奮発生頻度は1分間に30回ほどなので、房室ブロックでは、脈拍が30くらいまで低下することがあり徐脈となる。そして心臓のポンプ機能が低下することにより脳に十分な血液を送れなくなり、失神を起こしたりする。

「興奮の伝導」とか聞くと、なんだか神経の働きっぽいが、刺激伝導系は「特殊な」心筋によって構成されるものであり、神経線維によって興奮が伝導するのではないことに注意する。「プルキンエ線維は無髄神経線維である」とが選択肢にあれば、それは✖︎だ。

刺激伝導系はを構成する特殊心筋がどのように「特殊」なのか。固有心筋(普通の心筋)は静止電位を持つのに対して、特殊心筋は静止電位を持たない。特殊心筋は、時間の経過とともに徐々に電位が上がっていき、自動的に閾値に達し活動電位を生ずる。つまり、一人で勝手に閾値に達して、興奮してしまうという感じだ。刺激伝導系の上位ほど、興奮する頻度が高い。つまり洞房結節のリズムが一番高いので、下位の刺激伝導系は洞房結節結節のリズムに従う。

心臓の血管

心臓の栄養血管は左右の冠状動脈で、静脈血は冠状静脈洞にあつまる。心臓表面の溝の名前と走っている血管をきちんと覚えよう。

  • 冠状溝心房と心室の間を取り囲む溝
    右冠状動脈、回旋枝(左冠状動脈の枝)、冠状静脈洞
  • 前室間溝:左右の心室間、前部の溝
    前室間枝(左冠状動脈の枝)、大心臓静脈
  • 後室間溝:左右の心室間、後部の溝
    後室間枝(右冠状動脈の枝)、中心臓静脈

「ヒダリマエ」と覚えると良い。かつては前室間枝は左冠状動脈の枝、後室間枝は右冠状動脈の枝であることを覚えておけば、大抵それでよかったのだが、近年は問題を出し尽くした感があるのか、静脈がよく出るようになった。なので、これからは「ヒダリマエ、大きいのが当たり前」と覚えると良いかもしれない。「当たり前」という部分に特に意味はないが、なんとなく言いやすいからつけてみた。

知識の確認

  • 左心は(  血)を循環させる。解答
  • 左心房には(  )が入る。解答
  • 左心室からは(  )が出る。解答
  • 右心は(  血)を循環させる。解答
  • 右心房には(  )、(  )、(  )が入る。解答
  • 右心室からは(  )が出る。解答
  • 左心室から始まり、身体の組織に酸素と栄養を送りとどけ、二酸化炭素を回収して右心房に戻ってくる循環を(  循環)という。解答
  • 右心室から始まり、肺で二酸化炭素を放出し、酸素を吸収して左心房に戻ってくる循環を(  循環)という。解答
  • 心房と心室のあいだには(  弁)がある。解答
  • 左房室弁は(  枚)の弁尖をもつので、(  弁)といい、これは僧侶の帽子に似ているので(  弁)ともいう。解答
  • 右房室弁は(  枚)の弁尖をもつので、(  弁)という解答
  • 心房が収縮し、心房内圧が高まると(  弁)が開き、心房内の血液が心室に送られる。解答
  • 房室弁には逆流防止装置として(  )を介して(  筋)が付着している。解答
  • 乳頭筋は心室筋の一部で、(  )が収縮するときに乳頭筋も同時に収縮することにより房室弁を引っ張って固定し、房室弁が心房側に翻って血液が逆流しないようにしている。解答
  • 動脈弁は大動脈弁、肺動脈弁ともに3枚の(  弁)よりなる。解答
  • 大動脈弁のすぐ上に左右の(  動脈)の起始部がある。解答
  • 肺動脈弁は心臓の4つの弁膜のうち、最も(  側)に位置する。解答
  • 心臓の壁は(心 膜)・(心 層)・(心 膜)の 3 層 からなる。解答
  • 心内膜は心臓の内面をおおう(  上皮)で、血管の内膜にそのまま移行する。解答
  • 心筋層は心臓壁の主体をなす。(  )の心筋層が最も厚い。解答
  • 心外膜は(  性心膜)の臓側板と結合組織よりなる。心外膜の結合組織内に冠状動脈と静脈が走る。解答
  • 心臓がポンプとしての機能を発揮するために 、心房から心室へと順序よく興奮を伝えるのが(   系)である。解答
  • 心筋は2種類ある。収縮に適した心筋は(  心筋)という。もう1種類は興奮の発生と伝導に適した(  心筋)という。解答
  • 特殊心筋によって構成される(  系)は、以下の部位からなる。解答
  • (  ):心臓の拍動を決めるペースメーカーとして働く。右心房の上大静脈開口部付近に存在。解答
  • (  ):右心房の下壁に存在。解答
  • (  ):線維三角を通過し、心房と心室の間の興奮伝導を司る。(  )ともいう。解答
  • (  ・  ):心室中隔を下行する。解答
  • (   ):心室の心内膜下を細かく枝分かれしながら広がる。解答
  • 房室束のところで興奮伝導が途絶えてしまうと、心房と心室はそれぞれ独自のリズムで収縮するようになる。これを(  ブロック)という。解答
  • 心臓の表面で心房と心室の間のにある溝を(  溝)といい、(  冠状動脈)、(  枝(左冠状動脈の枝))、(  静脈 )が走行する。解答
  • 左右の心室間で前側の溝を前室間溝といい、(  枝(  冠状動脈の枝))、(  静脈)が走行する。解答
  • 左右の心室間で後側の溝を後室間溝といい、(  枝(  冠状動脈の枝))、(  静脈)が走行する。解答

解答一覧

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