2005年 第13回 あん摩マッサージ指圧師 国家試験 解剖学 問題16~38 解答

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ポイントだけを暗記するのではなく、教科書を理解するための副教材の決定版。理解をすることで記憶は強固になり、忘れなくなります。 そして解剖学の理解は臨床力への豊かな土壌となります。解剖を得意科目にして将来に役立てたい。そんな方におすすめです。

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1 とにかく図が豊富
2 解説、一問一答、国試過去問で効率良く学べる
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2005年 第13回 あん摩マッサージ指圧師 国家試験 解剖学 問題16~38 解答

問16 食道について誤っている記述はどれか。

1 粘膜上皮は重層扁平上皮である。
2 筋層に横紋筋線維が多い。
3 上部は気管の後方に位置する。
4 横隔膜の腱中心を貫く。

解答 4

1 粘膜上皮は重層扁平上皮である。
消化管の構造は口から肛門までをひと続きの管として捉えて考える。すなわち始まりと終わりは機会的刺激や摩擦に強い重層扁平上皮。真ん中は消化と吸収に適した単層円柱上皮だ。

  • 口腔〜咽頭(口部・喉頭部)〜食道:重層扁平上皮
  • 胃〜小腸〜大腸:単層円柱上皮
  • 肛門:重層扁平上皮

2 筋層に横紋筋線維が多い。
筋層も同じく消化管を一続きの管と捉えて考える。食道上部 (1/3) あたりまで横紋筋。食道中部・下部からは平滑筋となっている。食道だけで考えると平滑筋の割合のほうが多いと思われるが、胃や小腸などの消化管と比べれば横紋筋線維は多いと考えることもできる。この問題の場合は、4が明らかに誤りなので、2は除外。

  • 口腔〜咽頭〜食道上部:横紋筋
  • 食道中部・下部〜胃〜小腸〜大腸・内肛門括約筋:平滑筋
  • 外肛門括約筋:横紋筋

3 上部は気管の後方に位置する。
気管分岐部はT5の高さ。その高さまで気管の後方に食道はある。気管・食道・脊柱という並びは基本事項なので絶対忘れないように。

4 横隔膜の食道裂孔を貫く。
まず、食道が横隔膜を貫くところは食道裂孔だ。大動脈裂孔と食道裂孔は横隔膜の筋組織に開いた裂孔である。横隔膜の腱中心に開いた孔は大静脈孔である。

横隔膜は、胸腔と腹腔を隔てる横紋筋でできた膜状の隔壁である。胸郭下口の周囲から起こった筋がドーム状に集まり、第4~5肋骨の高さの頂上部に、停止腿がクローバー形の腱中心をつくる。横隔膜が収縮すると、胸腔内に深く入り込んでいるドームの屋根が低くなり胸腔を広げることになり、主要な吸気筋として働く。
横隔膜は、胸郭下口を閉ざしているため、胸腔と腹腔を連絡する構造物によって貫かれ、主に次の3孔が生じる。
大動脈裂孔:第12胸椎の椎体前面にあり、下行大動脈と動脈周囲交感神経叢(大内臓神経小内臓神経など)、奇静脈、胸管などが通る。
食道裂孔:第10胸維の高さで大動脈裂孔の左前上方にあり、食道と、左右の迷走神経が通る。
大静脈孔:第8胸椎の高さで腱中心にあり、右寄りに位置する。下大静脈が通る。
横隔膜の上面は胸膜に、下面の大部分は腹膜におおわれ、肝臓・胃などの腹腔臓器を入れ保護している。裂孔の周りの筋束はハチマキ状に走り、腸管などの裂孔からの脱出を防いでいる。横隔膜ヘルニアの中では、食道裂孔を通るもの(食道ヘルニア)が最も多い。 (p.213 横隔膜)


問17 人体の基準面のうち1面しかないのはどれか。

1 正中面
2 矢状面
3 水平面
4 前頭面

解答 1

切断面(p.33 人体の切断面と方向(位置関係))

i) 矢状面:身体を正面から射抜くように、前後方向の水平線を含む鉛直面を失状面という。矢状面のうちで身体を左右に切半するものを特に正中面といい、この面と身体表面との交線を正中線という。
ii) 前頭面:矢状面に垂直に交文する面をいう。顔面に平行な面でもあり、前額面ともいう。
iii) 水平面:直立位で、地面に平行な面をいう。水平面・前頭面・矢状面の3つは互いに直交する。


問18 肩関節の回旋筋腱板の形成に関与しないのはどれか。

1 棘上筋
2 棘下筋
3 大円筋
4 肩甲下筋

解答 3

肩甲骨前面の肩甲下窩には肩甲下筋があり、単純に肩か関節の前をまたいで小結節につき、肩関節を内旋させる(上腕骨を内回しする)。一方、肩甲骨後面で、肩甲棘の下方(棘下窩と外側縁)に起こる棘下筋小円筋はほぼ一体となり、単純に肩関節の後ろをまたいで大結節につき、肩関節を外旋させる(上腕骨を外回しする)。
これら肩甲下筋・棘下筋・小円筋に棘上筋を加えた4筋は、上腕骨の回旋運動などを行いつつ、各腱が肩関節包の前後および上部に直接癒合して、関節を補強する回旋筋腱板(ローテータ・カフ)を構成する。(p.237 上肢帯の筋)

1 棘上筋
肩甲骨の棘上窩から起こり、外側に走り上腕骨大結節につく。上腕骨を外転させる。肩甲上神経が支配する。

2 棘下筋
肩甲骨の棘下窩より起こり、外方に走り上腕骨大結節につく。上腕を後方に引き外方にまわす。肩甲上神経が支配する。

3 大円筋
小円筋の下方で肩甲骨下角より起こり前外方に向かい、上腕骨小結節稜につく。上腕骨を後内方に引く。また内方にまわす。肩甲下神経の支配による。

4 肩甲下筋
肩甲骨肋骨面のつくる肩甲下窩より起こり、外方に向かって上腕骨小結節および小結節稜につく。上腕を内転または内方にまわす。肩甲下神経が支配する。


問19 三叉神経支配の筋はどれか。

1 咬筋
2 胸骨舌骨筋
3 顎舌骨筋
4 眼輪筋

解答 1,3

橋にある三叉神経運動核から始まり、運動根を通り、下顎神経の一部となる。三叉神経節から下方へ伸びる下顎神経は、すぐに卵円孔を通って側頭下窩に出て多数の枝に分かれる。各咀嚼筋 (咬筋・側頭筋・内側翼突筋・外側翼突筋)と鼓膜張筋への筋枝は比較的短い。舌神経は途中で鼓索神経と合流したのち外側下方から舌に進入する。耳介側頭神経は、顎関節の内側を通り、外耳孔の直前で皮下に出て側頭部へ広がる。頬神経は頬部から口角の口腔粘膜と皮膚に分布する。下歯槽神経は、顎舌骨筋などへの筋枝を出したのち下顎管の中へ入り、各歯根への枝とオトガイ孔から皮下に出る枝を分岐する。
下顎神経からは、ツチ骨に停止して鼓膜を緊張させる鼓膜張筋や、軟口蓋の口蓋帆張筋を支配する筋枝も分かれる。

1 咬筋
咬筋・側頭筋・内側翼突筋・外側翼突筋の4つは咀嚼筋で三叉神経第3枝の下顎神経支配である。試験的には、表情筋と咀嚼筋の区別が重要である。

2 胸骨舌骨筋
胸骨の上端から起こり、上方に向かい舌骨につく。舌骨を引き下げる。頸神経ワナの支配をうける。

3 顎舌骨筋
舌骨上筋群 (顎二腹筋、顎舌骨筋、オトガイ舌骨筋、茎突舌骨筋) は舌骨を前方ないし上方へ動かすことにより、舌の運動や発語および嚥下に関わる。
顎舌骨筋は左右が正中線で合して口腔の底をつくる。
顎二腹筋は乳様突起の内側から起こり、オトガイ後面に停止する。中間腱が筋滑車によって舌骨の体に固定され、舌骨の小角に停止する茎突舌骨筋とともに舌骨を固定したり引き上げたりする。
顎舌骨筋と顎二腹筋前腹は下顎神経、顎二腹筋後腹と茎突舌骨筋は顔面神経に支配される。オトガイ舌骨筋は頸神経支配である。

4 眼輪筋
眼裂の周囲を輪状にとり巻く筋で、眼瞼部、眼窩部、涙嚢部の3部からなる。主として眼窩内側部の骨から起こり、眼瞼部は眼瞼の内部を輪走し、眼窩部は眼瞼部の筋の周囲を輪状に走る。おもに眼裂を閉じる働きをもつ。涙嚢部は涙嚢を広げて涙を吸いこませる。顔面神経側頭枝、頬骨枝の支配をうける。


問20 脊柱起立筋を構成する筋はどれか。

1 僧帽筋
2 広背筋
3 板状筋
4 棘筋

解答 4

脊柱起立筋は最大の背筋で、腸骨、仙骨の後面から上方は側頭骨の乳様突起にまで達する。外側から腸肋筋最長筋棘筋が並び、3筋は協力して働き、脊柱を伸展して屈曲を防ぎ、脊柱を起立させる。一側のみが働くと、側屈、回旋する。特に斜走する筋群は、腹壁の筋とともに働いて脊柱を回旋する。(p.222 深背筋)

超ロック、最長の曲
(腸肋筋) (最長金) (棘筋)

1 僧帽筋
僧帽筋は項部と背部の上部をおおっている左右合わせて菱形になる大きな筋である。起始は後頭骨外後頭隆起、項靱帯、第7頸椎以下の全胸椎棘突起から
起こり、起始腱の中央部は最も広くその上下がせまいので、左右合わせて全体として菱形の腱鏡をつくる。筋束は上部のものは斜め外下方へ、中央部はほとんど、水平に、下部は斜めに外上方へ走る。停止は肩甲棘、肩峰、鎖骨の外側1/3。
この筋の作用は上部が働けば肩甲骨、鎖骨を上内方へ上げ、中央部が働けば肩甲骨を内下方に引き下げる。全体としては肩甲骨、鎖骨の外側端を内後方に引く。上肢帯を固定して両側が働くと頭を後ろにそらせる。片側ならば頭をその方にまわす。この筋の支配神経は、副神経と、頸神経叢からの枝である。

2 広背筋
広背筋は背部の下部および胸部の外側部にある、わり合い薄いが大きい筋である。上部は僧帽筋におおわれる。起始は第6~第8胸椎以下の棘突起、胸腰筋膜、第9~第12肋骨、肩甲骨下角、腸骨稜から起こり、上部はほとんど、水平に、下部はしだいに斜め外上方へ向かい、肩甲骨下部をおおい上腕骨小結節稜に停止する。作用はおもに上腕の内転であるが、強く働けば上腕が内旋され後方に引かれる。胸背神経をうける。

3 板状筋
板状筋は僧帽筋、菱形筋、肩甲挙筋、上後鋸筋におおわれる。項靱帯、第3頸椎から第3胸椎までの棘突起より起こる頭板状筋と、第3胸椎から第6胸椎までの棘突起から起こる頸板状筋に分かれ、いずれも外上方へ走る。頭板状筋は側頭骨の乳様突起、後頭骨の上項線外側部に停止する。頸板状筋は第1~第3頸椎の横突起に停止する。脊髄神経後枝がこれを支配する。

4 棘筋
脊柱起立筋は外側から腸肋筋、最長筋、棘筋の順に脊柱の両側にならぶ上下に長い筋群で、仙骨、腸骨稜、第11・第12胸椎と腰椎から起こり、肪骨、胸椎、頸椎、後頭骨、乳様突起に停止する、前二者はおもに胸部では各肋骨につき、後者はおもに各棘突起
の間に張る。おもな働きは脊柱の伸展、側方屈曲、回旋である。脊髄神経後枝がこれを支配する。


問21 上腕骨の内側上顆に起始しない筋はどれか。

1 円回内筋
2 腕橈骨筋
3 尺側手根屈筋
4 長掌筋

解答 2

上腕骨の内側上顆に起始する筋

上腕骨の内側上顆からは長母指屈筋以外の前腕屈筋群・浅層が起始する。

  1. 円回内筋
  2. 橈側手根屈筋
  3. 長掌筋
  4. 尺側手根屈筋
  5. 浅指屈筋

1 円回内筋
2頭をもち、上腕骨頭は上腕骨の内側上顆から、尺骨頭は尺骨の鈎状突起から起こり、両頭合して橈骨の前面と外側面につく。肘関節をまげ同時に回内する。正中神経が支配する。

2 腕橈骨筋
上腕骨外側縁の下部から起こり、外前方に向かい、橈骨の茎状突起につく。前腕を屈しその位置で橈骨を回内、回外する。テニスのラケットを振る時など。橈骨神経の支配をうける。

3 尺側手根屈筋
起始は上腕骨頭と尺骨頭からなり、前者は内側上顆から、後者は肘頭の後面から起こり、両者合して前腕の中ごろから細い腱となり、豆状骨につく。手根をまげる。尺骨神経が支配する。

4 長掌筋
内側上顆から起こり、すぐに細長い腱となり、手掌に扇状に広がり、手掌腱膜をつくる。手根をまげる。正中神経が支配する。


問22 大腿骨の大転子に停止しない筋はどれか。

1 大殿筋
2 梨状筋
3 小殿筋
4 中殿筋

解答 1

  • 大転子:大腿骨頚の外上方にある大きな隆起。中殿筋、小殿筋、梨状筋の停止。
  • 小転子:大腿骨頚の内下後方にある隆起。腸腰筋の停止。
  • 転子間稜:大腿骨の後面にある隆線。大転子と小転子を結ぶ。大腿方形筋の停止。
  • 転子窩:大転子の内側面の凹み。内閉鎖筋、外閉鎖筋、上双子筋、下双子筋の停止。
  • 転子間線:大腿骨の前面にある隆線。大転子と小転子を結ぶ。腸骨大腿靱帯の付着。

1 大殿筋
大殿筋は殿部を形成する強大な筋で、腸骨翼外側面、仙骨、尾骨の外側縁などから起こって斜め外下方に向かい大腿骨上部の殿筋粗面につく。大腿を後ろに引きかつ外旋する。上部だけ働けば大腿は外転する。下殿神経をうける。

2 梨状筋
梨状筋は仙骨前面から出て外下方に走り、大坐骨孔を通り前方に向かい、大転子につく。大腿を外方にまわす。また外転する。仙骨神経叢の枝をうける。

3 小殿筋
小殿筋は中殿筋のさらに下層にあり、腸骨翼の外面から起こり、下外方に向かい大転子につく。大腿を外転する。上殿神経をうける。

4 中殿筋
中殿筋は大殿筋におおわれ腸骨翼の外面、腸骨稜などから起こり、外下方に向かい、大腿骨大転子につく、大腿を外転する。上殿神経をうける。


問23 総腓骨神経の枝に支配されている筋はどれか。

1 半腱様筋
2 半膜様筋
3 前脛骨筋
4 後脛骨筋

解答 3

総腓骨神経は大腿後面では脛骨神経の外側に位置し、大腿二頭筋長頭の深層を下行しながら大腿二頭筋短頭に枝を与える。その後、膝窩の上方で脛骨神経と分離して大腿二頭筋の停止腱に沿って腓骨頭の下方(腓骨頸)に達する。
この神経は外側から腓骨頸を回り込んで下腿に入る際に、次の2枝に分かれる。すなわち、下腿外側の腓骨筋群に分布する浅腓骨神経と、下腿前面の伸筋群に向かう深腓骨神経である。浅腓骨神経は長・短腓骨筋に枝を出した後、下腿の遠位部で皮神経となって皮下に出て、内側および中間足背皮神経として足背に分布する。深腓骨神経は長腓骨筋の起始の深層を素通りして伸筋群に達し、長指屈筋と前脛骨筋の間を下行しながら長指伸筋・長母指伸筋・前脛骨筋に枝を出す。さらに、長母指伸筋腱および前脛骨動脈などとともに伸筋支帯の深層をくぐって足背に達し、短母指伸筋および、短指伸筋への枝を出す。その後、細い皮神経となって母指と第2指の間(下駄の鼻緒が食い込む位置)の皮膚に分布して感覚を担う。(p.292 仙骨神経叢)

1 半腱様筋
半腱様筋は大腿二頭筋の内側にあり、坐骨結節から起こり、脛骨粗面内側につく。大腿をのばすとともに膝関節をまげる。坐骨神経(脛骨神経)が支配する。

2 半膜様筋
半膜様筋は半腱様筋の下層にあり、坐骨結節から起こり、脛骨内側顆につく。大腿をのばすとともに膝関節をまげる。坐骨神経(脛骨神経)が支配する。

3 前脛骨筋
前脛骨筋は脛骨外側面、下腿骨間膜より下方に向いた腱となり、上下の伸筋支帯の下を通り、足背に出て内側楔状骨と第1中足骨の下面につく。足の背屈かつ内反をする。深腓骨神経の枝をうける。

4 後脛骨筋
後脛骨筋は腓骨、脛骨上部後面から起こり、内果の後方を通り屈筋支帯の下を貫いて前方にまがり足底で腱に分かれて、舟状骨、内側・中間・外側楔状骨、立方骨、第2・第3中足骨底につく。足の内反、底屈を行う。脛骨神経の枝をうける。


問24 消化管について誤っている記述はどれか。

1 胃は噴門で十二指腸とつながる。
2 小腸には腸絨毛がある。
3 虫垂は盲腸に付着する。
4 横行結腸は腸間膜をもつ。

解答 1

1 胃は幽門で十二指腸とつながる。
胃の入口:噴門(T11左側)
胃の出口:幽門(L1右側)
高さもしっかり覚えよう。

2 小腸には腸絨毛がある。
輪状ヒダ、腸絨毛、微絨毛は小腸の特徴で、表面積を増やす働きがある。

3 虫垂は盲腸に付着する。
盲腸の先端に虫垂がぶらさがってる。

4 横行結腸は腸間膜をもつ。
まずは腹膜内臓器をまとめて覚えよう。
胃・空腸・回腸・横行結腸・S状結腸・脾臓・卵巣・卵管
臓器を覆う腹膜(臓側腹膜)が合わさったものが間膜。間膜は壁側腹膜と臓側腹膜を結ぶ働きがあり、この中を血管などか走行する。
腸間膜は、上記の腹膜内臓器のうち、腸に付属する。すなわち、空腸・回腸・横行結腸・S状結腸が腸間膜をもつ。
ちなみに、小網・大網は胃間膜に属する。


問25 中鼻道に開口しないのはどれか。

1 前頭洞
2 蝶形骨洞
3 上顎洞
4 前篩骨洞

解答 2

鼻腔は鼻中隔により仕切られ左右に分かれる。鼻腔の外側壁には、上鼻甲介中鼻甲介下鼻甲介というひさしが垂れ下がり、その陰に上鼻道中鼻道下鼻道という通路がつくられる。また鼻甲介と鼻中隔との間を総鼻道という。外鼻孔から奥へ2cmほどは皮膚でおおわれ、鼻毛が生えており、空気の濾過に役立つ。ここを鼻前庭と呼ぶ。(p.63 鼻道)

名称開口部位
蝶形骨洞鼻腔の後上方(蝶篩陥凹)
篩骨洞後篩骨洞上鼻道
中篩骨洞中鼻道(篩骨胞表面)
前篩骨洞中鼻道(半月裂孔)
前頭洞中鼻道(半月裂孔)
上顎洞中鼻道(半月裂孔)
鼻涙管下鼻道
耳管咽頭鼻部

1 前頭洞:中鼻道に開口
2 蝶形骨洞:鼻腔の後上方に開口
3 上顎洞:中鼻道に開口。最大の副鼻腔
4 前篩骨洞:中鼻道に開口。
(後篩骨洞は上鼻道に開口)


問26 尿管について誤っている記述はどれか。

1 壁は粘膜、筋層、外膜よりなる。
2 粘膜は移行上皮で覆われる。
3 筋層には蠕動運動がみられる。
4 2か所に狭窄部をもつ。

解答 4

尿管は、尿を腎臓の腎孟から膀胱に運ぶ、長さ30cmほどの中空の管である。尿管の壁は、粘膜・筋層・外膜の3層よりなる。粘膜は移行上皮でおおわれる。筋層はよく発達し、1分間に4~5回の周期的な蠕動運動により、尿は少量ずつしごかれるように膀胱に送られる。尿管は3ヶ所に狭窄部位を持ち、尿路結石などで通過障害を起こす。① 腎孟から尿管への移行部、② 総腸骨動静脈との交叉部、③ 膀胱壁を貫く部である。特に最後の狭窄部は尿管が膀胱の厚い壁の中を斜めになって長い距離を進むので、膀胱に尿がたまるとその内圧によって膀胱壁を斜めに進む尿管は圧平されて、尿の逆流が防がれる。(p.93 尿管)

1 壁は粘膜、筋層、外膜よりなる。
粘膜は移行上皮。尿管は蠕動運動をするので、筋層はよく発達している。そして、腎臓と同じく尿管も腹膜の後ろを下行するので、外側は外膜で覆われる。(腹膜内臓器は漿膜で覆われ、腹膜後臓器は外膜で覆われる)

2 粘膜は移行上皮で覆われる。
移行上皮は4点セット。腎杯・腎盂・尿管・膀胱。こういうのはセットで覚える。

3 筋層には蠕動運動がみられる。
尿は尿管の中を流れ落ちていくのではなく、蠕動運動で運ばれる。だから寝たきりでもちゃんと膀胱に尿がたまるし、無重力でもちゃんと膀胱に尿がたまる。

4 3か所に狭窄部をもつ。
食道も尿管も狭窄部位は3か所。

  1. 腎孟から尿管への移行部、
  2. 総腸骨動静脈との交叉部、
  3. 膀胱壁を貫く部

問27 精巣について誤っている記述はどれか。

1 陰嚢の中にある。
2 精細管で精子が産生される。
3 間質にセルトリ細胞が存在する。
4 間細胞は男性ホルモンを分泌する。

解答 3

精巣は睾丸とも呼ばれ、左右1対をなし陰嚢の中に収まる。卵円形(4×2. 5cm)で、重さは10gほどである。後上面には精巣上体がのる。表面は白く光沢を放つ丈夫な線維性の白膜におおわれる。白膜は実質内にやや隆起して精巣縦隔をつくり、そこからさらに精巣中隔が伸びだして精巣の実質を300ほどの精巣小葉に分ける。小葉は迂曲する精細管で占められる。精細管は精子がつくられる部分で、精巣縦隔に近い部分では直精細管となり、これは縦隔内の網状の精巣網に合流し、精巣網はさらに10~20本の精巣輸出管につながる。(p.96 精巣)
精細管の内腔は精上皮でおおわれる。精上皮では思春期から老年期まで絶え間なく精子が産生される。精子産生はまず精祖細胞の分裂から始まり、精母細胞・精娘細胞・精子細胞を経て精子となる。精上皮では下層から順に各段階の細胞が並び、成熟すると上方に押し上げられて、精子として完成されると精上皮を離れてゆく。精子産生の過程で減数分裂が起こり精子の染色体の数は23となり、体細胞の染色体数の半分となる。精上皮のあちこちに点在する大型のセルトリ細胞は精子産生細胞を保持するとともに精子に栄養を与えて精子の成熟を助ける。精細管と精細管の間を埋める間質にはライディッヒ細胞(間細胞)が大小の集団をつくり散在する。この細胞はテストステロンなどの男性ホルモンを分泌し、精子産生を促進するとともに、二次性徴の発現をもたらす。二次性徴の発現により、陰茎・陰嚢・精巣などが大きくなり、ひげ・腋毛・陰毛が生え、声変わりが起こり、皮下脂肪が減って筋肉が発達する。 (p.96 精細管と精子産生)

1 陰嚢の中にある。
精巣は睾丸とも呼ばれ、左右1対をなし陰嚢の中に収まる。

2 精細管で精子が産生される。
精子産生の場所:曲精細管(の精上皮)
精子が蓄えられる場所:精巣上体

3 間質にライディッヒ細胞(間細胞)が存在する。
4 間細胞は男性ホルモンを分泌する。
セルトリとライディッヒ、ふたつの細胞がいる場所と働きをしっかり抑えること。

  • セルトリ細胞:精上皮に点在(精細管壁を構成)、精子産生細胞を保持し、栄養を与える(血液精巣関門)
  • ライディッヒ細胞(間細胞):間質(精細管の外)に存在。テストステロン(男性ホルモン)を分泌

問28 卵巣について誤っている記述はどれか。

1 腹膜に包まれている。
2 中空性臓器である。
3 卵胞が存在する。
4 女性ホルモンを分泌する。

解答 2

1 腹膜に包まれている。
胃・空・回・横・S・脾・卵巣・卵管は腹膜内臓器。個別に覚えるのではなく、まとめて覚えよう。

2 実質性臓器である。
卵巣は中身が詰まった実質性臓器。卵管〜子宮〜膣は中が空洞となった中空性臓器だ。

3 卵胞が存在する。
卵胞や黄体は皮質に、血管や神経、リンパ管などは髄質に存在する。二次卵胞やグラーフ卵胞、黄体は思春期移行、性周期が始まってから出現するが、出生時より原始卵胞は存在する。

4 女性ホルモンを分泌する。
卵胞はエストロゲン(卵胞ホルモン)、黄体はプロゲステロン(黄体ホルモン)を分泌する。両者を合わせて女性ホルモンという。


問29 副腎について誤っている記述はどれか。

1 左右一対ある。
2 腎臓の下に位置する。
3 髄質はアドレナリンを分泌する。
4 皮質はステロイドホルモンを分泌する。

解答 2

1 左右一対ある。
腎臓も副腎も左右一対。

2 腎臓の上に位置する。
副腎は、腎臓の上に三角形のナポレオンの帽子のようにかぶさる1対の器官で、腎上体とも呼ばれる。(p.113 副腎)

3 髄質はアドレナリンを分泌する。
副腎髄質は、胎生期に交感神経幹神経節に由来する細胞が移動して副腎髄質となる。つまり、交感神経節後ニューロンに相当する。これがわかると、副腎髄質は交感神経節前ニューロンにより調節されることも理解できるし、分泌される物質も交感神経節後ニューロンの神経伝達物質と同じカテコールアミンだ。

副腎髄質の細胞は交感神経細胞と起源を同じくする神経由来の細胞で、交感神経細胞と同様に重クロム酸カリを含む染色液で黄褐色に染まるところからクロム親性細胞と呼ばれる。髄質細胞は分泌するホルモンの違いからアドレナリン細胞とノルアドレナリン細胞の2種類が区別される。 (p.113 副腎髄質)

4 皮質はステロイドホルモンを分泌する。
コレステロールを原料として作られるホルモンをステロイドホルモンという。副腎皮質から分泌される3種のホルモンと、性ホルモンがステロイドホルモンだ。

  • 副腎皮質ホルモン
    • アルドステロン(電解質コルチコイド):球状帯
    • コルチゾール(糖質コルチコイド):束状帯
    • 副腎アンドロゲン:網状帯
  • 性ホルモン
    • テストステロン:精巣(ライディッヒ細胞)
    • エストロゲン:卵巣(卵胞)
    • プロゲステロン:卵巣(黄体)

問30 右心房に開口しないのはどれか。

1 上大静脈
2 下大静脈
3 肺静脈
4 冠状静脈洞

解答 3

心臓は静脈血が流れる右心系と、動脈血が流れる左心系に分けられる。従って、心房・心室ともに、心房中隔および心室中隔によって完全に内腔が左右に分離して、心臓は2心房2心室になる。右心房には上半身と下半身の静脈をそれぞれ集めた上大静脈、下大静脈が注ぐほか、心臓自身の静脈(冠状静脈洞)も開口する。右心室からは肺動脈が出る。左心房には左右2対(計4本)の肺静脈が注ぎ、左心室からは大動脈が出る。(p.41 心房と心室)

1 上大静脈 (静脈血):右心房に入る
2 下大静脈 (静脈血):右心房に入る
3 肺静脈 (動脈血):左心房に入る
4 冠状静脈洞 (静脈血):右心房に入る


問31 大動脈弓の直接分枝でないのはどれか。

1 腕頭動脈
2 左鎖骨下動脈
3 左総頸動脈
4 右総頸動脈

解答 4

  • 大動脈弓
    • 腕頭動脈
      • 右総頸動脈
      • 右鎖骨下動脈
    • 左総頸動脈
    • 左鎖骨下静脈

問32 門脈の構成に関与しないのはどれか。

1 腎静脈
2 脾静脈
3 上腸間膜静脈
4 下腸間膜静脈

解答 1

門脈の定義

体循環では、動脈→毛細血管→静脈という順に連絡するのが一般的である。しかし、からだのある部分では、毛細血管を経て、いったん静脈になったあと、再び毛細血管網を形成して、第2の静脈に注ぐことがある(動脈→毛細血管→静脈(1)→毛細血管→静脈(2))。この場合、第1の静脈( 静脈(1) )を特に門脈と呼ぶ。門脈の存在は肝臓に注ぐ血管や、下垂体(前葉)の血管に認める。(p.39 門脈)

上記にあるように、門脈の定義は、毛細血管網と毛細血管網に挟まれた静脈という意味であるが、通常「門脈」と言う場合、脾臓や消化管からの静脈血を集めて肝臓に注ぐ血管のことを言う。

門脈系

門脈は、主に脾静脈上腸間膜静脈下腸間膜静脈が合してできた特別な静脈である。胃腸や膵臓、脾臓から集められた静脈は、門脈として肝臓の中に導かれて肝組織で毛細血管に流れたのち、再び、肝静脈を経て下大静脈に注ぐ。肝臓には門脈のほかにも総肝動脈から移行する固有肝動脈が注ぎ込む。固有肝動脈は肝組織を養う栄養血管であるが、門脈は肝機能 (栄養分の代謝調節・解毒・胆汁の生成など) に関わる機能血管である。したがって門脈の意義として、主に次の3つがあげられる。

  1. 胃腸から吸収された栄養分や薬物を肝臓に送りグリコーゲン代謝や解毒をする。
  2. 膵臓から分泌された血糖調節ホルモン(インスリンとグルカゴン)を肝臓に運んでグリコーゲン貯蔵量を調節する。
  3. 脾臓で古い赤血球が壊され、その処理によって生じたヘモグロビンの残骸を肝臓に運んで胆汁の材料にする。

このような門脈に注ぐ循環系を総称して、門脈系あるいは門脈循環という。(p.50 門脈系)


問33 健常成人の脾臓について誤っている記述はどれか。

1 腹腔の左上部にある。
2 表面は腹膜に包まれている。
3 赤脾髄で赤血球が産生される。
4 白脾髄でリンパ球が産生される。

解答 3

1 腹腔の左上部にある。
脾臓の位置は、左の側胸部(腋窩線よりも後ろ)で、胸郭の下方(第10肋骨を中心に上下の肋骨付近)に位置するが、横隔膜の下に位置するので腹腔である。

脾臓は長径約10cmの卵形をした最大のリンパ組織塊で、内部に多量の血液を貯留して暗赤色を呈する。腹腔の左上部で胃の後方にあり、横隔膜に接する。体表から投影すると、左の側胸部(腋窩線よりも後ろ)で、胸郭の下方(第10肋骨を中心に上下の肋骨付近)に位置する。正常では胸郭に隠れて体表から触れられない。(p.57 脾臓)

2 表面は腹膜に包まれている。
胃・空・回・横・S・脾臓・卵巣卵管は腹膜内臓器
(p.57 脾臓)

脾臓は腹腔内では表面を腹膜でおおわれ、腹膜の付け根の部分で脾門というくぼみをなして、ここから脾動静脈、神経、リンパ管が出入りする。(p.57 脾臓)

3 赤脾髄で古い赤血球の破壊される。
赤脾髄:古い赤血球の破壊
白脾臓:リンパ小節(免疫応答・抗体産生)
赤血球が産生されるのは骨髄。

脾臓の断面を拡大して見ると、実質全体は赤血球で満たされて赤黒いので、赤脾髄と呼ばれる。そのなかに、小さな白い斑点状の白脾髄が散在する。脾洞周囲の細網組織では、大食細胞(マクロファージ)が存在し、血中を流れてきた細菌や異物のほか、古くなった赤血球を食作用によって破壊する。(p.57 脾臓)

4 白脾髄でリンパ球が産生される。
白脾髄はリンパ小節。リンパ球があつまり塊をなしている。リンパ球は末梢組織で分裂し増えることができるので、「リンパ小節でリンパ球が産生される」というのは正しい。

白脾髄はリンパ球が集まってできたリンパ小節からできており、内部の胚中心では盛んにBリンパ球の増生を行う。(p.57 脾臓)


問34 赤核がみられるのはどれか。

1 大脳
2 中脳
3 間脳
4 延髄

解答 2

赤も黒も中脳。運動調節のための錐体外路性神経核。

中脳は橋の前方に続く細くくびれた部分で、大きく発達した大脳と小脳にかくれて外からはよく見えない。中脳は腹方の大脳脚、中央部の被蓋、背方の中脳蓋(四丘体)からなり、被蓋背側を中脳水道という細い管が通る。大脳脚は大脳皮質から脊髄に下行する錐体路をはじめとする伝導路の束よりなる。被蓋には赤核および黒質という錐体外路系の灰白質、また眼球運動に関する脳神経核などが含まれる。赤核は、その神経細胞が鉄を含むために赤く見え、黒質はメラニン色素を含むために黒く見える。赤核と黒質は、大脳基底核とともに、骨格筋の意識にのぽらない協調的な運動(錐休外路系)に関与する。赤核が障害されると骨格筋の緊張に異常が起こり、落ち着きのない不随意運動が起こる。黒質は主として筋の緊張の調節にあたり、その障害・変性によりパーキンソン病が起こる。四丘体は左右それぞれ上丘と下丘からなり、上丘は視覚の反射運動(移動する目標を追いかける眼球運動)、下丘は聴覚の反射運動(突然の音に反射的にその方向に頭や眼を向ける)に関与する。(p.121 中脳)


問35 顔面神経の機能でないのはどれか。

1 表情筋の運動
2 舌の前2/3の味覚
3 涙腺の分泌
4 顔面の感覚

解答 4

顔面神経を制する者、脳神経を制する。
まずは番号。顔面神経はVII。番号と神経名がまだ一致してなければ、脳神経を問題で見る度に、となりにローマン数字で番号を振る。
脳神経は感覚・運動・副交感。そのどの成分を含むか。それを思い出す。曖昧だったら教科書を見る。

  • 顔面神経 VII
    • 感覚:舌前2/3味覚
    • 運動:表情筋
    • 副交感:顎下腺・舌下腺、涙腺・鼻腺

顔面の感覚は三叉神経 V

そこまで理解できたら、次は神経核、神経節、通過する孔、枝の名前を覚える。そうすれば脳神経が理解できる。

  • 顔面神経 VII
    • 感覚 (SVA):舌前2/3味覚→舌神経→鼓索神経→膝神経節→内耳孔→中間神経→孤束核
    • 運動 (SVE):顔面神経核→顔面神経(狭義)→内耳孔→顔面神経管→茎乳突孔→(耳下腺を貫く)→表情筋
    • 副交感 (GVE):
      • 上唾液核→中間神経→内耳孔→大錐体神経管→大錐体神経→翼口蓋神経節→涙腺・鼻腺
      • 上唾液核→中間神経→内耳孔→鼓索小管→鼓索神経→顎下神経節→顎下腺・舌下腺
VII:顔面神経(感覚性・運動性・副交感性)(p.312 脳神経 – 顔面神経)

橋の後縁の外側寄りから出て内耳神経とともに内耳道に入り、内耳道の奥で顔面神経管に入る。この管は側頭骨の岩様部の中を貫く細長い管で茎乳突孔に至る。顔面神経は途中の鼓室の内側壁の中で直角に後方へ曲がるところ()で、翼口蓋神経節への枝(大錐体神経)を分け、次に鼓室の後方でアブミ骨筋への筋枝と鼓索神経を分枝する。 
1. 感覚神経 
味覚を伝える感覚線維(味覚線維)は鼓索神経に入って鼓膜の上縁を通り側頭下窩で舌神経に合流して舌に入る。この線維は舌の前方2/3の粘膜上皮に分布して味細胞とシナプスをつくり、味覚を伝える。この線維の細胞体は膝神経節の中にある。 
2. 運動神経 
橋の顔面神経核から始まり、大部分は茎乳突孔から出て、外耳孔の下方から放射状に広がる多数の枝に分かれ、頭頸部の皮下に広がる表情筋に入る。茎突舌骨筋および顎二腹筋後腹も支配する。 
3. 副交感神経 
涙・鼻水と唾液の分泌を促進する神経線維は橋と延髄の境界近くにある上唾液核から始まる。涙腺を支配する節前線維は、大錐体神経を経由して翼口蓋窩にある翼口蓋神経節に入る。この神経節から始まる節後線維は上顎神経の枝である頬骨神経を経て涙腺神経に合流して涙腺に至る。鼻粘膜や口蓋の小唾液腺を支配する節後線維も上顎神経の枝を経由する。 
顎下腺舌下腺の分泌を促進する節前線維は、鼓索神経から舌神経を経由して舌下で顎下神経節に入り、ここでニューロンを交代して腺に入る。


問36 正中神経支配の筋はどれか。

1 円回内筋
2 回外筋
3 上腕筋
4 肘筋

解答 1

正中神経は、上腕部では枝を出さず、前腕屈筋群と母指球筋に筋枝を送るほか、手掌の橈側半分の皮膚に皮枝を分布する。
上腕部では、上腕二頭筋の内側縁(内側二頭筋溝)を縦走し、上腕動脈とともに上腕二頭筋の停止腱膜の下をくぐって肘窩に至る。
肘窩では、円回内筋の上腕頭と尺骨頭の間を通って深部に入り、尺側手根屈筋以外の前腕屈筋の浅層筋群に筋枝を出す。さらに正中神経の本幹は、浅指屈筋の起始部にある腱弓から深層に進入して、浅指屈筋と深指屈筋の間を走る。ここで、前腕屈筋の深層筋群に至る筋枝と手掌の橈側半への皮枝(手掌枝)を出しつつ手根部に達し、浅・深指屈筋の腱とともに手根管を通って手内に入る。
手内では母指球筋に分枝するほか、母指から薬指への皮枝を出す。(p.261 上肢前面の神経定行(筋皮神経・正中神経・尺骨神経))

◯ 1 円回内筋:正中神経支配
2頭をもち、上腕骨頭は上腕骨の内側上顆から、尺骨頭は尺骨の鈎状突起から起こり、両頭合して橈骨の前面と外側面につく。肘関節をまげ同時に回内する。正中神経が支配する。

2 回外筋:橈骨神経支配
尺骨の回外筋稜から起こり、前腕後面の深部を外下方に向かい、橈骨上端外側面につく。前腕を回外する。橈骨神経の支配による。

3 上腕筋:筋皮神経支配
上腕骨の前面と内側および外側の筋間中隔より起こり、上腕二頭筋におおわれながら下がって尺骨粗面につく。前腕をまげる。筋皮神経が支配する。

4 肘筋:橈骨神経支配
上腕骨外側上顆から起こり、下外方に向かい、尺骨肘頭の外側面につく。上腕三頭筋の働きを助け肘関節をのばす。橈骨神経が支配する。


問37 眼房水が吸収される部位はどれか。

1 虹彩
2 毛様体
3 黄斑
4 強膜静脈洞

解答 4

角膜と虹彩の間の空間を前眼房、また虹彩と水晶体との間の空間を後眼房といし、眼房水で満たされている。眼房水は毛様体内面の上皮から分泌され、後眼房から瞳孔をへて前眼房へと流れ、角膜と強膜の境界部にある強膜静脈洞(シュレム管)から眼静脈へ吸収される。眼房水の分泌と吸収のバランスにより眼圧が正常に保たれるが、循環障害が起こると眼圧が高まり緑内障となる。(p.151 眼房と眼房水)

毛様体上皮 (眼房水産生)→後眼房→瞳孔→前眼房→強膜静脈洞 (シュレム管)

1 虹彩
毛様体から起こり、水晶体の前方でこれを周囲から縁どるように存在する。カメラの絞りにあたるもので、中心の小孔は瞳孔(直径3~6mm)と呼ばれる。虹彩は血管、神経、色素細胞に富み、その内部には輪走する瞳孔括約筋と放射状に走る瞳孔散大筋の2種類の平滑筋があり、眼球に入る光量の調節を行っている。瞳孔括約筋は副交感神経(動眼神経)により、瞳孔散大筋は交感神経によりそれぞれ支配されている。(p.148 眼球壁の中層(血管膜))

2 毛様体
脈絡膜の前方に続く海綿様に肥厚した部分で、これから内方に伸びる毛様体小帯(チン小帯)という細い線維は水晶体を支える。毛様体の中には平滑筋性の毛様体筋があり、水晶体のふくらみを調節し、焦点の位置を変えている。(p.148 眼球壁の中層(血管膜))

3 黄斑
網膜は3層の神経組織からなる神経層(視細胞層、双極細胞層、神経節細胞層)とその外層の色素上皮層からなる。網膜は光を感じる後半部の網膜視部と、毛様体・虹彩の内面をおおうが光を感じない前半部の網膜盲部とに分けられ、その境界は鋸状縁といわれる。視神経が出ていく部位はややくぼんでおり、ここを視神経円板または視神経乳頭といい、視細胞が存在しないため光を感じない。視神経円板の約4mm外側には黄色の丸い部(直径約2mm)、すなわち黄斑がある。黄斑の中央部はくぼんで中心窩といわれ、物を注視するときに焦点の合う場所で、視力の最も良いところである。(p.150 眼球壁の内層(網膜))

4 強膜静脈洞
隅角の線維柱帯網を通った前房水はシュレンム管と呼ばれる強膜内の輪状の管の中に流入する。房水はシュレンム管の内壁内皮細胞の細孔(直径1μm以内)を通らねばならないので、ここで流出抵抗が与えられる。シュレンム管の外壁には集合管があって房水は強膜内静脈叢に導かれる(Friedrich S. Schlemmはドイツの解剖学者,1795‐1858)【南山堂医学大辞典】


問38 耳管によって咽頭とつながるのはどれか。

1 前庭
2 鼓室
3 蝸牛
4 半規管

解答 2

平衡聴覚器は、外耳・中耳・内耳にどの部位が分類されるかをまず押さえる。そして、内耳にある有毛細胞をもつ装置について押さえる。これがポイント。

  • 外耳
    • 耳介
    • 外耳道
  • 中耳
    • 鼓膜
    • 鼓室
    • 耳管
  • 内耳
    • 蝸牛
    • 前庭
    • 半規管

耳管は中耳に属するものだから、中耳の他の部位につながっているのはアタリマエ。

耳管は、鼓室と咽頭をつなぐ管で、普段は圧平されているが、物を飲み込んだときに一時的に開く。耳管によって鼓室の内圧は外気圧と等しく保たれ、鼓膜が振動しやすい状態になるが、なんらかの原因で閉塞すると鼓室内の空気が吸収され陰圧となり、鼓膜は内方に強く陥没し振動が悪くなり、難聴が起こる。逆に開放されたままになると、自分の声が直接鼓室に響き異常に大きく感じる(自声強聴)。(p.154 耳管)

1 前庭:内耳

前庭は内耳の中央の部分で、その側壁にある前庭窓によって鼓室に接し、前方に蝸牛、後方に半規管が位置する。前庭には膜迷路に属する球形嚢卵形嚢という2つの袋があり、その内面には平衡斑と呼ばれる感覚装置がある。平衡斑には丈の高い有毛細胞があり、炭酸カルシウムの結晶である平衡砂をのせたゼリー状の平衡砂膜が表面をおおっている。身体の傾きおよび直進する方向とその加速度を感じる。(p.156 前庭)

2 鼓室:中耳

鼓室は鼓膜に境された奥の空洞で、内面は粘膜におおわれている。前下方に向かって長さ約35mmの細長い耳管が出て咽頭(耳管咽頭口)に通じている。鼓室内には鼓膜と内耳とを連絡するツチ骨キヌタ骨アブミ骨と呼ばれる米粒ほどの大きさの耳小骨があり、互いに関節で連結し音波による鼓膜の振動を内耳に伝えている。これらの耳小骨には耳小骨筋(鼓膜張筋・アブミ骨筋)が付着しており、強い音刺激に対して収縮し耳小骨の運動を弱めている。すなわち耳小骨による伝達を減弱して内耳に過度の刺激が加わらないように働いている。鼓室の内側壁は卵円形の前庭窓の膜があるため、中耳と内耳の間には直接の交通はない。鼓室の後方は、乳様突起の中の乳突蜂巣と交通するので、中耳の炎症がここに進行することもある。(p.154 鼓室)

3 蝸牛:内耳

文字通りカタツムリの殻に似ていて、蝸牛軸をラセン管が2巻き半取り巻いている。ラセン管の横断面をみると、その内部は2階だてになっており、1階の鼓室階と2階の前庭階に分かれ、その間に中2階として膜迷路に相当する蝸牛管が仕切られている。蝸牛管の床の基底板上にある上皮細胞は丈が高くなり、ラセン器(コルチ器)を形成し音を感受する。蝸牛神経は蝸牛軸内でラセン神経節をつくりラセン器に分布する。
鼓膜を震わせた音の振動は耳小骨を通じて前庭窓に達し、前庭階を満たす外リンパの液体の振動に変えられる。外リンパの振動は蝸牛の前庭階を昇りつめると鼓室階に移り、鼓室階を下る。すなわち、両階は蝸牛の頂部で連絡し外リンパで満たされ、蝸牛窓で消失する。この外リンパの振動は中2階をなす蝸牛管の内リンパに伝えられ、その振動はラセン器の有毛細胞を刺激して音を感受する。

4 半規管:内耳

半規管は互いに直交する面上に弧(ループ)を描く3本の半円周形の管からなり、それぞれその途中に膨大部というふくらみがある。膨大部の内面には膨大部稜という有毛感覚細胞の直線状の高まりがあり、身体の回転運動の方向と加速度を感じる。(p.156 半規管)


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