【詳細解説】静脈について正しいのはどれか (2014年 あマ指 問題29)

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ポイントだけを暗記するのではなく、教科書を理解するための副教材の決定版。理解をすることで記憶は強固になり、忘れなくなります。 そして解剖学の理解は臨床力への豊かな土壌となります。解剖を得意科目にして将来に役立てたい。そんな方におすすめです。

かずひろ先生の解剖学マガジンのポイント
1 とにかく図が豊富
2 解説、一問一答、国試過去問で効率良く学べる
3 ポイントは表形式でまとめられ、覚えるポイントが明確
4 オンライン講座と連動。アーカイブ動画で何度でも学習できる

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静脈について正しいのはどれか (2014年 あマ指 問題29)
1 腎静脈は門脈に注ぐ。
2 肋間静脈は奇静脈に注ぐ。
3 下大静脈は正中線より左にある。
4 左腕頭静脈は腕頭動脈の後ろを横切る。

回答と選択肢の考察

解答2

1.腎静脈は門脈に注ぐ。 ×下大静脈

門脈に注ぐ血管は消化管と膵臓、脾臓からの静脈だ。消化管からの血液はなぜ門脈に集まり肝臓に向かう必要があるのか。消化管で吸収された栄養分は集められて肝臓で栄養分の代謝が行われるからだ。
また膵臓からの静脈血はランゲルハンス島で分泌されたインスリン、グルカゴンが含まれているので、肝臓内でのグリコーゲンの生成と分解にあずかる。
ではなぜ脾臓からの静脈血は肝臓に向かうのか。赤脾髄では古くなった赤血球の破壊が行われる。赤血球の破壊により漏出したヘモグロビンはヘムとグロビンにわけられる。グロビンはビリルビンとなり肝臓に運ばれ、胆汁の原料となる。

2.肋間静脈は奇静脈に注ぐ。

胸壁の静脈血は肋間静脈より奇静脈系に集められて上大静脈に注ぐ。

3.下大静脈は正中線よりにある。 ×右

上大静脈も下大静脈も正中線より右にある。よって左腎静脈と左腕頭静脈は右に比べて長くなることも同時に覚えよう

4.左腕頭静脈は腕頭動脈の後ろを横切る。 ×前

上大静脈は大動脈弓より右を走行する。左腕頭静脈は右腕頭静脈に比べて長く水平位に近い走行をとる。また一般的に静脈は動脈より浅層を走る。以上のことより左腕頭静脈は腕頭動脈・左総頚動脈・左鎖骨下動脈の前を横切って走行することを理解して覚えよう。

考え方

この問題は静脈系の総合問題だ。心臓に還流する血液を運ぶ血管が静脈である。体循環の静脈は伴行静脈として動脈と並んで走り、動脈と同じ名前で呼ばれるのが一般的である。よって、動脈とは異なる静脈特有の走行をしている箇所が重要となる。単に過去問の答えを覚えるのでなく、問題を入り口として関連事項を覚えていくことが国試合格の近道だ。では、静脈特有の走行についてひととおり見ていこう。

肺循環の静脈について

肺静脈は肺の機能に関わる機能血管で、肺静脈の中には動脈血が流れる。右心室から出た肺動脈幹はT字に枝分かれして、左右1本ずつの肺動脈となり肺に向かう。肺から戻ってくる肺静脈は左右2本ずつあることに注意する。

機能血管と栄養血管の区別はついているか?機能血管とはその臓器の機能に関わる血管ということ。つまり肺でいえば「ガス交換」が肺の機能だ。肺動脈・肺静脈は肺のガス交換に関わる機能血管である。また栄養血管はその臓器に酸素と栄養を供給する血管のこと。肺の栄養血管は胸大動脈の臓側枝である気管支動脈だ。

動脈血は動脈の中を流れる血液という意味ではない。酸素を多くの含む血液が動脈血、酸素が少なく二酸化炭素が多い血液が静脈血だ。体循環で全身を巡って酸素を供給して二酸化炭素を回収した血液は上下の大静脈にあつまり、右心房に流入する(右心は静脈血)。その後ガス交換を目的として右心室より肺動脈として肺に送られる。肺胞で二酸化炭素を放出し、再び酸素をたっぷりと取り入れて動脈血となり、肺静脈として左心房に還る。つまり、肺動脈と胎児の臍動脈には静脈血が流れ、肺静脈と胎児の臍静脈には動脈血が流れる。

体循環の静脈系(静脈特有の走行について)

体循環にて動脈に伴行しない静脈に特有の走行については以下のものがある。

  1. 大動脈は1本だが、大静脈は上下2本。
    大動脈は1本であるが、大静脈は上大静脈と下大静脈の2本がある。腹大動脈はほぼ正中を下行するのに対し、上大静脈、下大静脈はどちらも右側を走っている。よって左腎静脈、左腕頭静脈は右側の同静脈に比べて長くなる。
  2. 奇静脈系は動脈に伴行しない
    胸壁の静脈血は肋間静脈より奇静脈系に集められて上大静脈に注ぐ。(奇静脈は動脈に伴行しない奇妙な静脈なので奇静脈だ)
  3. 皮静脈は動脈に伴行しない
    身体の深いところを走る深静脈は一般に動脈に寄り添って走る伴行静脈であるが、皮下の浅いところを走る皮静脈は動脈には伴行しない。皮静脈で特に重要となるのは、上肢の橈側皮静脈と尺側皮静脈。下肢の大伏在静脈と小伏在静脈だ。
    橈側皮静脈は、上腕二頭筋外側縁の上方から三角筋の前縁に沿って上行し、鎖骨胸筋三角(三角筋胸筋溝)から腋窩静脈に注ぐ。尺側皮静脈は上腕二頭筋内側縁を上行し、腋窩の下縁付近から腋窩静脈もしくは上腕静脈に注ぐ。
    大伏在静脈は足の静脈網の内側縁から起始し、 内果の前を通り下腿内側、大腿内側部を上行し、大腿三角の伏在裂孔より大腿静脈に注ぐ。小伏在静脈は足の静脈網の外側縁から起始し、 外果の後方を通り下腿後面の皮下を上行し、膝窩で膝窩静脈に注ぐ。
  4. 脳の静脈は硬膜静脈洞に集まる
    脳を覆う硬膜・クモ膜・軟膜は3つ合わせて髄膜という。このうち硬膜は髄膜の最外層をなす強靭な結合組織で、内葉と外葉の2枚からなる。外葉は頭蓋骨の内面に密着していて骨膜に相当するものである。通常、硬膜の外葉と内葉は密着しているが、正中部などの一部の場所では、外葉と内葉の間が開いていて、ここに静脈血が集められる。これを硬膜静脈洞という。
  5. 腹部消化管と脾臓の静脈血は門脈を通り肝臓に注ぐ
    門脈とは本来は「毛細血管から移行した静脈が再び毛細血管に分かれるもの」をいい、単に門脈と言った場合は、消化管と脾臓からの静脈血を集めて肝臓に注ぐ静脈のことを言う。つまり消化管や脾臓で毛細血管となった血管が集まり静脈となり、肝臓内で再び毛細血管となるから門脈だ。
    門脈は視床下部と下垂体の間にも存在する。下垂体門脈は視床下部ホルモンを下垂体前葉に運ぶ
  6. 骨盤内臓の静脈は吻合しあって静脈叢を形成する
    膀胱、子宮、直腸などの骨盤内臓に分布する静脈は互いに吻合しあい静脈叢を形成する。

上大静脈に注ぐ枝

  • 左右の腕頭静脈と奇静脈が合して上大静脈となる
  • 上大静脈は右側を下行するので、左腕頭静脈は右腕頭静脈に比べて長く水平に近い走行をとる。
  • 左腕頭静脈は腕頭動脈・左総頚動脈・左鎖骨下動脈の前を横切って走行する
  • 内頚静脈と鎖骨下静脈の合流部を静脈角という
  • 左静脈角には胸管が注ぐ
  • 右静脈角には右リンパ本幹が注ぐ
  • 奇静脈は右の肋間静脈を集め上大静脈に注ぐ
  • 半奇静脈・副半奇静脈は左の肋間静脈を集め、奇静脈に注ぐ
  • 奇静脈、半奇静脈、副半奇静脈を合わせて奇静脈系という。

下大静脈に注ぐ枝

  • L5 の高さで左右の総腸骨静脈が合して下大静脈となる
  • 肝静脈は下大静脈に直接注ぐ
  • 下大静脈は右側を上行するので、左腎静脈は長く、右腎静脈は短い。
  • 左性腺静脈(左精巣静脈、左卵巣静脈)は左腎静脈に注ぐ
  • 右性腺静脈(右精巣静脈、右卵巣静脈)は下大静脈に注ぐ

門脈系

  • 脾静脈・上腸間膜静脈・下腸間膜静脈が合して門脈となる
  • 肝硬変などにより肝臓内への血液流入障害が起きると門脈圧亢進症が起こる
  • 門脈圧が高まると血漿が血管壁を透過し腹膜腔にでて大量の腹水となって腹腔内にたまる
  • うっ血した門脈血は門脈系と体循環系との吻合部位となっている側副循環路をとおり、体循環系に戻ろうとする。本来であればあまり血流のない細い吻合部位に大量の門脈血が流入することにより、以下の症状が起こる。
  • 食道静脈瘤:左胃静脈(門脈系) → 食道静脈叢 → 食道静脈(体循環系)
  • 痔核:上直腸静脈(門脈系) → 直腸静脈叢 → 中・下直腸静脈(体循環系)
  • メデューサの頭(前腹壁の皮静脈怒張):臍傍静脈(門脈系) → 前腹壁の皮静脈(体循環系)

知識の確認

静脈特有の走行

  • 大動脈は1本であるが、大静脈は(  )と(  )の2本がある。解答
  • 腹大動脈はほぼ正中を下行するのに対し、上大静脈、下大静脈はどちらも(  側)を走っている。よって左腎静脈、左腕頭静脈は右側の同静脈に比べて長さは(  )なる。解答
  • 胸壁の静脈血は肋間静脈より(  系)に集められて(  静脈)に注ぐ。解答
  • 身体の深いところを走る深静脈は一般に動脈に寄り添って走る(  静脈)であるが、皮下の浅いところを走る(  静脈)は動脈には伴行しない。解答
  • (  皮静脈)は、上腕二頭筋外側縁の上方から三角筋の前縁に沿って上行し、(   三角)(   溝)から(  静脈)に注ぐ。解答
  • (  皮静脈)は上腕二頭筋内側縁を上行し、腋窩の下縁付近から腋窩静脈もしくは上腕静脈に注ぐ。解答
  • (   静脈)は足の静脈網の内側縁から起始し、 (  の 方)を通り下腿内側、大腿内側部を上行し、(  三角)の(  裂孔)より(  静脈)に注ぐ。解答
  • (  静脈)は足の静脈網の外側縁から起始し、(  の 方)を通り下腿後面の皮下を上行し、膝窩で(  静脈)に注ぐ。解答
  • 脳を覆う(  膜)・(  膜)・(  膜)は3つ合わせて(  膜)という。解答
  • 硬膜は髄膜の最外層をなす強靭な結合組織で、内葉と外葉の2枚からなる。通常、硬膜の外葉と内葉は密着しているが、正中部などの一部の場所では、外葉と内葉の間が開いていて、ここに静脈血が集められる。これを(   )という。解答
  • 門脈とは本来は「毛細血管から移行した(  )が再び毛細血管に分かれるもの」をいう。解答
  • 単に門脈と言った場合は、消化管や(  )、(  )からの静脈血を集めて(  )に注ぐ静脈のことを言う。解答
  • 門脈は視床下部と下垂体の間にも存在する。下垂体門脈は視床下部ホルモンを(  )に運ぶ。解答

上大静脈に注ぐ枝

  • 左右の(  静脈)と(  静脈)が合して上大静脈となる解答
  • 上大静脈は( 側)を下行するので、左腕頭静脈は右腕頭静脈に比べて( く  )に近い走行をとる。解答
  • 左腕頭静脈は(  動脈・  動脈・  動脈)の前を横切って走行する解答
  • 内頚静脈と鎖骨下静脈の合流部を(  )という解答
  • 左静脈角には(  )が注ぐ解答
  • 右静脈角には(   )が注ぐ解答
  • (  静脈)は右の肋間静脈を集め上大静脈に注ぐ解答
  • (  静脈・  静脈)は左の肋間静脈を集め、奇静脈に注ぐ解答
  • 奇静脈、半奇静脈、副半奇静脈を合わせて(  系)という。解答

下大静脈に注ぐ枝

  • L5 の高さで左右の(  静脈)が合して下大静脈となる解答
  • 肝静脈は(  静脈)に直接注ぐ解答
  • 下大静脈は右側を上行するので、左腎静脈は右腎静脈に比べて長さは(  い)解答
  • 左性腺静脈(左精巣静脈、左卵巣静脈)は(  静脈)に注ぐ解答
  • 右性腺静脈(右精巣静脈、右卵巣静脈)は(  静脈)に注ぐ解答

門脈系

  • (  静脈)・(   静脈)・(   静脈)が合して門脈となる解答
  • 肝硬変などにより肝臓内への血液流入障害が起きると(   )が起こる解答
  • 門脈圧が高まると血漿が血管壁を透過し腹膜腔にでて大量の(  )となって腹腔内にたまる解答
  • うっ血した門脈血は門脈系と体循環系との吻合部位となっている(側副循環路)をとおり、体循環系に戻ろうとする。本来であればあまり血流のない細い吻合部位に大量の門脈血が流入することにより、以下の症状が起こる。解答
  • (   ):左胃静脈(門脈系) → 食道静脈叢 → 食道静脈(体循環系)解答
  • (   ):上直腸静脈(門脈系) → 直腸静脈叢 → 中・下直腸静脈(体循環系)解答
  • (   )(前腹壁の 静脈怒張):臍傍静脈(門脈系) → 前腹壁の皮静脈(体循環系)解答

解答一覧

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1 とにかく図が豊富
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