2017年 第25回 はり師・きゅう師 国家試験 解剖学 問題16〜26 解答

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ポイントだけを暗記するのではなく、教科書を理解するための副教材の決定版。理解をすることで記憶は強固になり、忘れなくなります。 そして解剖学の理解は臨床力への豊かな土壌となります。解剖を得意科目にして将来に役立てたい。そんな方におすすめです。

かずひろ先生の解剖学マガジンのポイント
1 とにかく図が豊富
2 解説、一問一答、国試過去問で効率良く学べる
3 ポイントは表形式でまとめられ、覚えるポイントが明確
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2017年 第25回 はり師・きゅう師 国家試験 解剖学 問題16〜26 解答

問題16 膜輸送について正しいのはどれか。

1 単純拡散では濃度勾配に逆らって物質が細胞膜を通過する。
2 促通拡散ではATP分解で生じたエネルギーを利用する。
3 食作用では細胞膜が物質を包み込んで細胞内に取り込む。
4 膜動輸送では担体蛋白質を介して物質が細胞に取り込まれる。

解答 3

1 × 単純拡散では濃度勾配に逆らって物質が細胞膜を通過する。
拡散は濃度勾配に沿って、物質が細胞膜を通過する。
単純拡散であれ、促通拡散であれ、濃度勾配に沿って物質の濃度が高い方から低い方に、物質が自然に移動するのが拡散。単純拡散は、脂溶性物質やガス成分などで細胞膜を直接通過するものをいい、促通拡散は担体蛋白質を介して物質が移動するものを言う。

2 × 促通拡散ではATP分解で生じたエネルギーを利用する。
イオンポンプではではATP分解で生じたエネルギーを利用する。
ATP分解で生じたエネルギーを利用し、物質輸送が行われることを能動輸送という。能動輸送の代表はイオンポンプである。ポンプを動かすには動力が必要だとイメージすると良い。
イオンチャネルや促通拡散は、ATP分解で生じたエネルギーをは使わない受動輸送である。

3 ⚪︎ 食作用では細胞膜が物質を包み込んで細胞内に取り込む。
食作用・飲作用と開口放出を合わせて膜動輸送という。

4 × 膜動輸送では担体蛋白質を介して物質が細胞に取り込まれる。
促通拡散では担体蛋白質を介して物質が細胞に取り込まれる。

細胞膜[(p.3 細胞膜)][1]

細胞膜は、電子顕微鏡を用いてはじめて認めることができるほどの極めて薄い膜で、その厚さは8~10nmである。細胞膜は脂質・タンパク質・糖質からなる。脂質分子には水になじむ親水性の部分と炭素のつながりよりなる疎水性の部分がある。
細胞膜は親水性の部分を外側に向けた脂質二重層でその土台がつくられる。その中にタンパク質粒子が含まれ、浮遊するように移動する(流動モザイクモデル)。また脂質とタンパク質粒子からは膜の表面に向かって糖質が鎖状に伸びている。この細胞膜表面の糖質により、表面の特性が決定され、細胞どうしの認識が行われる。この認識機能により同種類の細胞は集団をつくることができる。
細胞は細胞膜を通して物質を取り込み、また不要なものを排出する。複雑な構造を持つ細胞膜は、物質の種類により異なる透過性を示す。(膜輸送)

  1. 単純拡散
    水や呼吸ガス(酸素や二酸化炭素)。それにアルコールのような脂溶性物質は細胞膜の脂質二重層を自由に通過する。細胞内で水が欠乏すると外から水が濃度勾配に従って入ってくる(浸透)。
  2. 促通拡散
    栄養素として重要なアミノ酸やグルコースは細胞膜に埋め込まれた担体タンパク質により運ばれる。グルコースが欠乏すると、細胞外表面に出ているグルコース担体タンパク質はグルコースを捕え、その形を変えて膜を通過させ、膜の反対側に運ぶ
  3. イオンポンプ
    イオンはポンプと呼ばれるタンパク質によって運ばれる。ナトリウム-カリウムポンプは、絶えずナトリウムイオンを細胞外に、カリウムイオンを細胞内に汲み出している。そのおかげで、細胞の外にはナトリウムイオンが、細胞の中にはカリウムイオンが高濃度に存在する。ナトリウムイオンは電位の形成に重要なイオンであり、生きている細胞は、細胞外はプラスに、細胞内はマイナスに荷電している。このポンプを動かすのにはエネルギーが必要である(能動輸送)、細胞はATP(アデノシン三リン酸)の分解で生じたエネルギーを利用している。細胞が消費するATPの約40%は能動輸送に消費するという。
  4. イオンチャネル
    神経細胞が興奮したときにはナトリウムイオンが細胞内に流入する。活動電位を終わらせるときにはカリウムイオンが流入する。カルシウムイオンの移動が骨格筋や心筋の収縮を起こす。イオンの出入りは生体活動に重要であるが、イオンは脂質二重層を通過しにくい。膜に埋め込まれた機能タンパク質には特定のイオンだけを通す孔(チャネル)が聞いている。チャネルには特定のイオンだけを引き寄せるフィルターがあり、チャネルを開閉させるゲート(扉の付いた門)がある。ゲートの開閉にはいくつかの方式があるが、代表的なものは、細胞膜内外の電位の変化を感知して開く電位依存チャネルと、細胞膜にある受容体に神経伝達物質のようなリガンドと呼ばれる物質が結合して開くリガンド作動チャネルとがある。
  5. 食作用
    タンパク質を含む異物を細胞内へ取り込むときには、全体を細胞膜に包んで取り入れる(細胞運動)、取り入れる物質が小さいときには膜の一部が落ち込んで小胞(飲小胞)の形で取り入れる(飲作用)、死んだ細胞や細菌などを取り込むときにはそれを取り囲むように細胞膜が周囲から盛り上がり、ついには包み込み、細胞の中に食胞として取り入れる(食作用)。

問題17 尺骨にあるのはどれか。

1 肘頭窩
2 滑車切痕
3 尺骨切痕
4 尺骨神経溝

解答 2

1 × 肘頭窩:上腕骨

上腕骨小頭の前上方には橈骨窩があり、上腕骨滑車の前上方と後上方にはそれぞれ鉤突窩と肘頭窩がある。肘関節の屈伸の際に、橈骨窩には橈骨頭、鉤突窩には鉤状突起、肘頭窩には肘頭があてはまる。(p.180 上腕骨)(https://www.anatomy.tokyo/典拠/東洋療法学校協会編教科書-解剖学-第2版/)

2 ⚪︎ 滑車切痕:尺骨

尺骨上端は肘頭で、その前面には滑車切痕があり、上腕骨滑車と肘関節の一部をなす(腕尺関節)。滑車切痕の下縁前方は釣り針の先端のように突出し、鉤状突起をつくる。滑車切痕の外側端から下方に連続する小さい関節面は、橈骨と連結する橈骨切痕で肘関節の一部をなす(上橈尺関節)。鉤状突起の下方には、尺骨粗面があり、肘関節を屈曲させる上腕筋がつく。(p.181 前腕の骨)(https://www.anatomy.tokyo/典拠/東洋療法学校協会編教科書-解剖学-第2版/)

3 × 尺骨切痕:橈骨

橈骨下端は太く広がり、外側には茎状突起が突出する。下端の内側には尺骨切痕の浅いくぼみが見られ、尺骨頭と関節をつくる。下面には手根骨に対する手根関節面が見られる。 (p.181 前腕の骨)(https://www.anatomy.tokyo/典拠/東洋療法学校協会編教科書-解剖学-第2版/)

4 × 尺骨神経溝:上腕骨

上腕骨体の下半分は、徐々に横に広がる。扁平になった両端は、上腕骨下端で、外側上顆内側上顆となって突出し、体表からも触れる。内側上顆の後面には尺骨神経溝がある。(p.180 上腕骨)(https://www.anatomy.tokyo/典拠/東洋療法学校協会編教科書-解剖学-第2版/)

問題18 単関節筋はどれか。

1 薄筋
2 縫工筋
3 大内転筋
4 大腿直筋

解答 3

1 × 薄筋:2関節筋;恥骨下枝 → (股関節) → (膝関節) → 脛骨粗面の内側(鵞足形成)

恥骨結合の外側から起こり、大腿内側を下り、脛骨上端内側面につく。下腿をまげかつ内旋する。膝をのばしたときは大腿を内転する。閉鎖神経の枝をうける。

2 × 縫工筋:2関節筋;上前腸骨棘 → (股関節) → (膝関節) → 脛骨粗面の内側(鵞足形成)

上前腸骨棘より起こり大腿前面を外側より斜め内下方に走り、大腿骨内側上顆の後ろをまわり脛骨粗面の内側につく。大腿を上げ、下腿をまげる。大腿神経が支配する。

3 ○ 大内転筋:単関節筋;恥骨下枝,坐骨枝,坐骨結節 → (股関節) → 粗線内側唇,内転筋結節

恥骨下枝、坐骨枝、坐骨結節より起こり、外下方に向かい、扇状に広がる。一部は腱となり下方に向かう。扇状の筋線維は大腿骨粗線全長に、腱部は内側上顆につく。閉鎖神経、坐骨神経の枝をうける。

4 × 大腿直筋:2関節筋;下前腸骨棘 → (股関節) → (膝関節) → 脛骨粗面

大腿四頭筋のうち唯一の2関節筋。寛骨の下前腸骨棘より起こり、4頭合して強い腱をつくり、膝蓋骨をつつみ膝蓋靱帯となって脛骨粗面につく。膝関節をのばす作用がある。大腿神経をうける。

問題19 深背筋について正しいのはどれか。

1 頭半棘筋は乳様突起に停止する。
2 腸肋筋は体幹の回旋を行う。
3 上後鋸筋は肋骨を引き下げる。
4 板状筋は腰神経に支配される。

解答 2

1 × 頭半棘筋は乳様突起に停止する。
頭半棘筋は第7,8胸椎〜第3頸椎の横突起より起こり、後頭骨の上、下項線に停止する。【分担解剖学1 p.269 深背筋】

2 ○ 腸肋筋は体幹の回旋を行う。
腸肋筋・最長筋・棘筋は脊柱起立筋を構成する。これらの3筋は協力して働き、脊柱を伸展して屈曲を防ぎ、脊柱を起立させる。一側のみが働くと、側屈、回旋する。(p.222 深背筋)

3 × 上後鋸筋は肋骨を引き下げる
上後鋸筋は肋骨を引き上げる。下後鋸筋は肋骨を引き下げる。(p.222 深背筋)

4 板状筋は腰神経に支配される。
板状筋は脊髄神経後枝に支配される。(p.222 深背筋)

問題20 下肢の動脈と伴行する神経の組合せで正しいのはどれか。

1 大腿動脈 ――― 閉鎖神経
2 膝窩動脈 ――― 伏在神経
3 腓骨動脈 ――― 脛骨神経
4 足背動脈 ――― 深腓骨神経

解答 4

1 × 大腿動脈 ――― 閉鎖神経 伏在神経

大腿動脈は大腿三角の部位では大腿神経の本幹と伴行する。その後は大腿神経の枝である伏在神経と伴行し内転筋管に至る。(p.284 内転筋管, p.290 腰神経叢)
【プロメテウス解剖学アトラス 解剖学総論 p.545 大腿深動脈から大腿への血液供給】のの図がわかりやすいのですが、手元の資料は第2版で、現在販売されているのは第3版となっています。ページ番号が違うと思います。第3版のページ番号を確認し次第、訂正いたします

2 × 膝窩動脈 ――― 伏在神経 脛骨神経

膝窩動脈は脛骨神経と伴行する。膝窩動脈が膝窩の深層を下行する際には、膝関節の後面に接し、数本の膝動脈を出して関節を養う。膝窩の下端では、脛骨神経とともにヒラメ筋の起始腱弓をくぐって下腿の深層に入り、膝窩筋の下縁で前・後脛骨動脈に分かれる。(p.287 下肢の動脈)

膝窩周辺の動脈と神経を考えた場合、理解しておくと役立つ知識は、神経は膝窩の上で枝分かれし、血管は膝窩の下で枝分かれするということである。
すなわち、坐骨神経は膝窩の上部で総腓骨神経と脛骨神経に枝分かれし、脛骨神経が膝窩を下行する。内転筋腱裂孔より大腿後面に出た膝窩動脈は膝窩の下で、前脛骨動脈と後脛骨動脈に分かれる。
※こちらは【プロメテウス解剖学アトラス 解剖学総論 p.556 浅部と深部後方筋区画の神経・血管】のの図がわかりやすいです (手元の資料は第2版で、現在販売されているのは第3版)。

3 × 腓骨動脈 ――― 脛骨神経
腓骨動脈は腓骨の後面を下行する。脛骨神経は下腿後側の中央を下行する。また浅腓骨神経は腓骨の前面を下行するので、腓骨動脈と伴行する神経は無い。(外側腓腹皮神経は腓骨の後面を下行しているが、皮神経なので皮下浅いところを走行している。)

4 ○ 足背動脈 ――― 深腓骨神経

深腓骨神経は長腓骨筋の起始の深層を素通りして伸筋群に達し、長指屈筋と前脛骨筋の間を下行しながら長指伸筋・長母指伸筋・前脛骨筋に枝を出す。さらに、長母指伸筋腱および前脛骨動脈などとともに伸筋支帯の深層をくぐって足背に達し、短母指伸筋および、短指伸筋への枝を出す。その後、細い皮神経となって母指と第2指の間(下駄の鼻緒が食い込む位置)の皮膚に分布して感覚を担う。(p.292 仙骨神経叢)
前脛骨動脈は、下腿骨間膜の上端にできた裂孔を貫通して下腿伸側に出る。その後、下腿骨間膜の前面で前脛骨筋の外側を下行しながら下腿伸筋群を養う。足首では、長母指伸筋腱などとともに仲筋支帯をくぐって足背に達し、そのまま足背動脈に移行する。足背動脈は足背および足指を養うほか、一部の枝はさらに深層に進入して足底動脈弓と吻合する。足背近位部で足背動脈は長母指伸筋腱と長指伸筋腱の間に脈を触れる。(p.287 下肢の動脈)

問題21 腹膜後臓器ばどれか。

1 S状結腸
2 回腸
3 肝臓
4 膵臓

解答 4

1 × S状結腸:腹膜内臓器
2 × 回腸:腹膜内臓器
3 × 肝臓:半腹膜内臓器
4 ○ 膵臓:腹膜後臓器

腹膜内臓器、腹膜後臓器の分類は出典によって多少の違いはあるが、国家試験的には以下の分類で覚えておくと良いであろう。

  • 腹膜内臓器
    胃・空腸・回腸・横行結腸・S状結腸・ 脾臓・卵巣・卵管
  • 半腹膜内臓器
    肝臓・膀胱・子宮・上行結腸・下行結腸
  • 腹膜後臓器
    腎臓・副腎・膵臓・十二指腸

問題22 膀胱について正しいのはどれか。

1 坐骨の後方にある。
2 全体が腹膜で覆われる。
3 膀胱頂に尿管が開口する。
4 骨盤内臓神経が分布する。

解答 4

1 × 坐骨の後方にある。
膀胱は骨盤腔の最も前部にあり、恥骨の後ろに位置する。【解剖学講義 p.417 骨盤の臓器 – 膀胱】

2 × 全体が腹膜で覆われる。
膀胱は上部のみが腹膜で覆われる半腹膜内臓器である。女性の膀胱子宮窩や男性の直腸膀胱窩といった腹膜の下端となる部分を想像すれば、膀胱の下部は腹膜に覆われていないことが理解できる。【解剖学講義 p.417 骨盤の臓器 – 膀胱】

3 × 膀胱頂に尿管が開口する。
膀胱内腔の底部 (膀胱底) では、左右の尿管の開口部と尿道の出口の3つの点が膀胱三角を囲む。(p.93 膀胱)
膀胱尖は、膀胱前方、恥骨結合上縁の後ろにある。膀胱尖から臍に向かって正中臍索という索状の結合組織繊維が前腹壁内面を上行している。正中臍索は胎生期の尿膜管の遺残組織である。【解剖学講義 p.417 骨盤の臓器 – 膀胱】

4 ○ 骨盤内臓神経が分布する。
骨盤部の副交感神経である。節前ニューロンは、仙髄の側角から起始し、仙骨神経に混ざって前仙骨孔から出る。その後、各骨盤内臓に分布して、主に臓器壁内で節後ニューロンに交代する。膀胱壁の平滑筋(排尿)、直腸壁の平滑筋(排便)を収縮させるほか、陰茎の血管を弛緩・拡張させ、陰茎海綿体内を充血させることで勃起に関与する。(p.145 副交感神経系)

膀胱(p.93 膀胱)

膀胱は尿管によって送られてきた尿を蓄える袋状の器官で、成人ではおよそ700㎖の尿を蓄えることができる。膀胱の背後には、男性では直腸が、女性では子宮がある。膀胱内腔の底部では、左右の尿管の開口部と尿道の出口の3つの点が膀胱三角を囲む。ここは膀胱壁の他の部分と異なり粘膜にヒダがなく膀胱が充満しても伸展しない。
膀胱の壁は、粘膜・筋層・漿膜の3層からなる。粘膜をおおう移行上皮は膀胱の伸展度に応じて自由にその形を変える。膀胱が収縮しているときには移行上皮は7~8層の背の高い細胞の重なりよりなるが、尿がたまり膀胱壁が伸展されると上皮細胞は扁平になり、細胞の重なりも2層程度に減少する。筋層は網状に錯綜する平滑筋束からなるが、尿道への出口では筋層は輪状に並び膀胱括約筋(内尿道括約筋)に発達する。副交感神経の興奮により膀胱壁の筋層の収縮が起こり、膀胱括約筋がゆるむ。膀胱括約筋の下方数cmのところに尿道括約筋(外尿道括約筋)がある。これは横紋筋でできた随意筋で、大脳からの命令を受けてはじめて開き、排尿が行われる。

問題23 男性生殖器とその位置の組合せで正しいのはどれか。

1 精巣上体 ー 陰嚢
2 精管 ーーー 大腿輪
3 尿道球腺 ー 骨盤隔膜
4 射精管 ーー 尿道球

解答 1

1 ○ 精巣上体 ー 陰嚢
精巣は睾丸とも呼ばれ、左右1対をなし陰嚢の中に収まる。卵円形(4×2. 5cm)で、重さは10gほどである。後上面には精巣上体がのる。(p.96 精巣)
精巣上体は、精巣の上部から後縁にかけてニワトリの鶏冠のように付着する構造で、上から頭・体・尾の3部に分りられる。精巣でつくられた精子は精巣網から10~15本の精巣輸出管をへて精巣上体に入る。精巣輸出管は精巣上体に入ると、1本の精巣上体管に合流する。精巣上体管は精巣上体の中を曲がりくねりながら下行するが、引き伸ばすと全長は4~5mにもなる。精子は精巣上体管を通過するのに約3日かかる。未熟な精子は精巣上体管を通過している間に成熟し、運動能と受精能を持つようになる。(p.97 精巣上体)

2 × 精管 ーーー 大腿輪 鼠径管

大腿輪は血管裂孔のリンパ管が通る最内側をいう。(p.284 筋裂孔と血管裂孔)
精管は血管、神経と一緒に結合組織で束ねられヒモ状を呈し、精索として鼠径管を通過する。(p.97 精管)

3 × 尿道球腺 ー 骨盤隔膜 尿生殖隔膜

会陰腱中心と坐骨結節を結ぶ線より前方を尿生殖隔膜部(尿生殖三角)、後方を骨盤隔膜部(肛門三角)と呼ぶ。(p.227 会陰)
尿道球腺は前立腺の下方に左右1対あるエンドウ豆大の粘液腺で、性的興奮の際に陰茎の亀頭を潤す。(p.98 精路 – 付属腺)

教科書の記述では、尿道球腺が尿生殖隔膜内にあるという記載はないが、p.94 図5–5 骨盤の矢状断を見ると会陰腱中心の前方に尿道球腺があるのが確認できる。

尿道球腺 (カウパー腺) は前立腺の下方で尿生殖隔膜内にあるエンドウ豆大の小腺で、尿道隔膜部の後外側に左右1対ある。導管は2〜3cmで、下尿生殖隔膜筋膜 (会陰膜) を貫いて尿道の海綿体部に開口する。【解剖学講義 p.441 尿道球腺】

4 × 射精管 ーー 尿道球 前立腺
精管が前立腺を貫くところは著しく細くなって射精管と呼ばれる。(p.97 精管)
尿道球は尿道海綿体の後端にみられる丸くふくらんだ部分で、これを球海綿体筋が包む。尿道は前立腺から出ると、すぐに尿生殖隔膜を貫き尿道球の上面で尿道海綿体に入り、中を前進して亀頭の前面で外尿道口に開く。(p.99 陰茎)

問題24 甲状腺について正しいのはどれか。

1 中胚葉に由来する。
2 上甲状腺動脈は外頚動脈の枝である。
3 下甲状腺静脈は鎖骨下静脈に流入する。
4 傍濾胞細胞から出るホルモンは血中カルシウム濃度を上げる。

解答 2

1 × 中胚葉に由来する。
甲状腺は内胚葉に由来する。
甲状腺は舌の背面後部(舌盲孔)から伸びる甲状舌管という、上皮索を導管とする外分泌腺として発生するが、この導管が消失して内分泌腺となった。(舌の背面項部は消化器系の一部。消化器・呼吸器・尿路は内胚葉)(p.112 甲状腺)

2 ○ 上甲状腺動脈は外頚動脈の枝である。
外頸動脈は分枝後すぐに上甲状腺動脈舌動脈顔面動脈を前方に向かって分枝し、後方へ後頭動脈などを分枝しながら上行して、顎関節の下方で最終枝の顎動脈浅側頭動脈に分かれる。脳と前頭部、眼窩内を除く頭部のすべての構造を栄養する。上甲状腺動脈は前頸部の筋や内臓を栄養する枝を出したのち甲状腺に入る。(p.305 総頸動脈)

3 × 下甲状腺静脈は鎖骨下静脈に流入する。
下甲状腺静脈は腕頭静脈に流入する。(p.309 鎖骨下静脈と腕頭静脈)

4 × 傍濾胞細胞から出るホルモンは血中カルシウム濃度を上げる
傍濾胞細胞から出るカルシトニンは血中カルシウム濃度を下げる。
上皮小体から出るパラソルモンは血中カルシウム濃度を上げる。

問題25 感覚とその中継核の組合せで正しいのはどれか。

1 触覚 ーー 後索核
2 聴覚 ーー 上丘
3 嗅覚 ーー 孤束核
4 視覚 ーー 内側膝状体

解答 1

1 ○ 触覚 ーー 後索核
マイスネル小体やパチニ小体などの感覚受容器で信号化された触圧覚は、一次ニューロンである脊髄神経節細胞の末梢突起から中枢突起をへて脊髄に入り、同側の後索を上行して延髄に達し、後索核で二次ニューロンに交代する。後索核で交代した二次ニューロンの神経線維は交叉して反対側に入り、内側毛帯をつくって、延髄、橋の背側部、中脳被蓋の腹外側を上行して視床に達し、三次ニューロンに接続する。視床から起こる三次ニューロンの線維は内包を通り、大脳皮質の中心後回にある体性感覚野に入る。(p.133 上行性伝導路)

2 × 聴覚 ーー 上丘
聴覚 ーー 下丘
音刺激は内耳の蝸牛で受容され、蝸牛神経により伝えられる。蝸牛神経は脳幹の蝸牛神経核に終わり二次ニューロンに交代し、交叉して外側毛帯に入り中脳の下丘に終わる。三次ニューロンは下丘腕をつくって上行し、間脳の内側膝状体に達する。四次ニューロンは聴放線をつくって側頭葉の聴覚野に入る。(p.133 上行性伝導路)

※ 上丘は視覚の反射運動(移動する目標を追いかける眼球運動)に関与するが、視覚伝導路には組み込まれていない。(p.121 中脳)
視神経は視交叉、視索と経由して視床の外側膝状体に入力する。外側膝状体からは内包の項部を通って視放線をつくり、後頭葉の視覚野に達するが、視索の線維の一部が上丘に入力して瞳孔反射に関係する。(一部の線維のみなので視覚伝導路には入らない)(p.133 上行性伝導路)

3 × 嗅覚 ーー 孤束核
味覚 ーー 孤束核
舌の味蕾で受容された味覚刺激は顔面神経舌咽神経によって延髄の孤束核に伝えられ、視床をへて大脳皮質の味覚野に終わる。味覚野は中心後回の下部にあるといわれる。(p.133 上行性伝導路)

嗅覚刺激は鼻腔の嗅粘膜で受容され、嗅粘膜からの刺激は、例外的に視床をへず、大脳皮質の嗅覚野に伝えられる。嗅覚系は大脳辺縁系とつながり、系統発生学的には古い領域である。動物では嗅覚野は嗅脳として独立する。(p.133 上行性伝導路)

4 × 視覚 ーー 内側膝状体
視覚 ーー 外側膝状体
網膜の光受容体である視細胞の興奮は、双極神経細胞(一次ニューロン)をへて、神経節細胞(二次ニューロン)に伝えられ、その軸索が集まって視神経となる。視神経は頭蓋内に入ると視神経交叉をつくる。視神経交叉では網膜の鼻側半からきた線維だけが交叉する。交叉線維と非交叉線維が集まって視索となり、外側膝状体に達する。ここから出た三次ニューロンは、内包の後部を通って視放線をつくり、後頭葉の視覚野に達する。視索の線維の一部は中脳の上丘に送られ、瞳孔反射に関係する。(p.133 上行性伝導路)

問題26 頚部の神経とその支配の組合せで正しいのはどれか。

1 横隔神経 ーーー 前斜角筋
2 頚神経ワナ ーー 顎二腹筋
3 鎖骨上神経 ーー 筋三角の皮膚
4 大耳介神経 ーー 耳下腺上の皮膚

解答 4

1 × 横隔神経 ーーー 前斜角筋
横隔神経はC3,4からの枝が交通して、始めは前斜角筋の前を下行したのち腕頭静脈に沿って胸郭内に入り、縦隔胸膜の直下を横隔膜まで伸びこれを支配する。運動線維に加えて、横隔膜、心膜および胸膜からの感覚線維を含む。 前斜角筋の前面を下行するが、前斜角筋に分布はしない。前斜角筋は頸神経叢の直接の枝により支配される。(p.315 頸神経)

2 × 頚神経ワナ ーー 顎二腹筋
顎舌骨筋と顎二腹筋前腹は下顎神経、顎二腹筋後腹と茎突舌骨筋は顔面神経に支配される。(p.300 舌骨上筋群(顎二腹筋、顎舌骨筋、オトガイ舌骨筋、茎突舌骨筋))

3 × 鎖骨上神経 ーー 筋三角の皮膚
胸骨角より上部は頸神経叢から起こる鎖骨上神経(C3・4) が分布する。(p.232 胸壁の神経)
筋三角の部分は頸横神経が分布する。【プロメテウス解剖学アトラス 頭頸部/神経解剖 第2版 p.211 側頭部と頸部側面の神経分布域】

4 ○ 大耳介神経 ーー 耳下腺上の皮膚
【プロメテウス解剖学アトラス 頭頸部/神経解剖 第2版 p.210 頭部浅層の神経・血管】の図がわかりやすい。

(教科書 p.305 後頚三角)の図で胸鎖乳突筋の上部後縁から出た大耳介神経が耳垂の下部に到達している図がある。この大耳介神経が耳下腺表面の皮膚に分布することを理解しよう。

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