2009年 第17回 按摩マッサージ指圧師 国家試験 解剖学 問題16~33 解答

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ポイントだけを暗記するのではなく、教科書を理解するための副教材の決定版。理解をすることで記憶は強固になり、忘れなくなります。 そして解剖学の理解は臨床力への豊かな土壌となります。解剖を得意科目にして将来に役立てたい。そんな方におすすめです。

かずひろ先生の解剖学マガジンのポイント
1 とにかく図が豊富
2 解説、一問一答、国試過去問で効率良く学べる
3 ポイントは表形式でまとめられ、覚えるポイントが明確
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2009年 第17回 按摩マッサージ指圧師 国家試験 解剖学 問題16~33 解答

問16 骨組織について誤っている記述はどれか。

1 骨膜は関節面では欠ける。
2 骨層板の中心にはフォルクマン管がある。
3 ハバース管は緻密質にある。
4 骨髄は造血作用をもつ。

解答 2

1 骨膜は関節面では欠ける。

関節腔に面する骨表面は薄い軟骨層、すなわち関節軟骨でおおわれる。関節軟骨は硝子軟骨であるが、軟骨膜を欠き直接に滑液(関節液)に接する。浅在層を形成する軟骨細胞は扁平で、膠原線維は表面に平行に配列する。中間層から深在層にかけて、球形の細胞が細胞群をつくって柱状に重なり、膠原線維は表面に向かって垂直に並ぶ。骨質に接する関節軟骨の基質は石灰化を示す。(p.16 骨組織)

2 骨層板の中心にはハバース管がある。

骨質の中には多くの血管が入り、豊富な血管網がつくられている。大腿骨のような長骨の緻密質を顕微鏡で見ると、この血管を中心に多数の骨層板が同心円状に並んでいる。中心の血管腔をハバース管、同心円状に並ぶ骨層板をハバース層板という。骨の表層に近く位置する骨層板は、骨表面に平行に配列し基礎層板といい、この基礎層板を貫く血管腔をフォルクマン管、骨表面にできた孔を栄養孔という。骨層板に沿って骨小腔が並ぶ。そこには骨細胞が入り、多数の細長い突起を伸ばして互いに交通し、骨細胞のネットワークを形成する。(p.16 骨組織)

3 ハバース管は緻密質にある。
緻密質で同心円状に並ぶ骨層板をハバース層板という。ハバース管はハバース層板の中心を走る血管腔をいう。

4 骨髄は造血作用をもつ。

骨の表面近くの骨組織だけでできているところを緻密質というが、1つの骨でも部位によって緻密質の厚さは異なり、腱や靱帯が付着する場所では厚さを増す。体肢の骨のような長い骨では両端を骨端といい、間を骨幹というが、骨幹部は厚い緻密質で囲まれ、内部に骨髄を入れる。骨髄は造血を行う組織で、活動が活発な赤色骨髄が高齢者では脂肪組織に置換する(黄色骨髄)。骨端では緻密質が薄く、海綿質が多い。(p.16 骨組織)


問17 車軸関節はどれか。

1 胸鎖関節
2 肩関節
3 腕尺関節
4 上橈尺関節

解答 4

分類関節名軸性
球関節肩関節, 腕橈関節多軸性関節
臼状関節股関節多軸性関節
顆状関節膝関節, 中手指節関節2軸性関節
楕円関節橈骨手根関節2軸性関節
鞍関節母指の手根中手関節2軸性関節
蝶番関節腕尺関節, 指節間関節1軸性関節
ラセン関節距腿関節1軸性関節
車軸関節上橈尺関節, 下橈尺関節, 正中環軸関節1軸性関節
平面関節椎間関節2軸性関節
(横滑りのみ)
半関節仙腸関節, 脛腓関節, 手根中手関節, 手根間関節

1 胸鎖関節:構造的には鞍関節だが、機能的には球関節に近い

胸鎖関節は鎖骨と胸骨との間をつなぐ胸鎖関節は体幹と上肢を結ぶ唯一の関節である。鎖骨を触りながら、肩を上下、前後に動かすと、肩関節の位置が移動するのにあわせて鎖骨が胸鎖関節で大きく動いていることがわかる。このように、胸鎖関節での鎖骨の動きは肩関節の位置を変えることに関係する。また、胸鎖関節の内部は、関節円板により完全に2分され、球関節に近い運動をする。(p.183 胸鎖関節)

2 肩関節:球関節

肩関節は、半球状の上腕骨頭と浅い皿のような肩甲骨の関節窩がつくる球関節である。上腕骨頭を関節窩にあてはめると、骨頭のほうが関節筒よりも大きく、広い関節面を持つことがわかる。これに加えて関節包も緩いので、肩関節の可動性は非常に高い。
関節窩の周縁には、線維軟骨性の関節唇が縁どり、関節窩を広げるとともに深さも追加する。関節唇上縁の関節上結節につく上腕二頭筋の長頭腱は、関節腔内を走る際に滑膜に包まれる。また、肩関節周囲の筋の摩擦を軽減する滑液包(肩甲下筋の腱下包など)も関節腔と交通する。
肩関節は緩い関節包を持つが、肩関節をまたいで上腕骨の大結節と小結節につく筋(棘上筋・棘下筋・小円筋・肩甲下筋)の停止腱が関節包の外周に張りつき、これを補強する。この4筋の腱をまとめて回旋筋腱板と呼ぶ。(p.183 肩関節)

3 腕尺関節:蝶番関節

腕尺関節は、上腕骨滑車が尺骨の滑車切痕とつくる関節で、蝶番関節である。肘関節の屈曲-伸展に関わる。
腕尺関節・腕橈関節・上橈尺関節は1つの関節腔内でう複関節として上腕骨・尺骨・橈骨の3つの骨がそれぞれ連結しあい、肘関節を構成する。(p.184 肘関節)

○ 4 上橈尺関節:車軸関節
上橈尺関節は、橈骨頭の側面にある関節環状面と、尺骨にある橈骨切痕との関節である。円柱状をした橈骨頭の長軸を回転軸にして、橈骨頭の関節環状面が橈骨切痕をすべって回転する車軸関節である。これにより前腕の回内-回外が行われる。橈骨切痕の縁につく橈骨輪状靱帯は輪になって橈骨頭を取り囲み、橈骨頭が橈骨切痕から離れないようにする。(p.184 肘関節)


問18 横隔膜について誤っている記述はどれか。

1 頸神経の枝に支配される。
2 吸気筋として働く。
3 大動脈裂孔を迷走神経が通る。
4 腰椎の椎体に起始をもつ。

解答 3

横隔膜(p.213 横隔膜)

横隔膜は、胸腔と腹腔を隔てる横紋筋でできた膜状の隔壁である。胸郭下口の周囲から起こった筋がドーム状に集まり、第4~5肋骨の高さの頂上部に、停止腿がクローバー形の腱中心をつくる。横隔膜が収縮すると、胸腔内に深く入り込んでいるドームの屋根が低くなり胸腔を広げることになり、主要な吸気筋として働く。
横隔膜は、胸郭下口を閉ざしているため、胸腔と腹腔を連絡する構造物によって貫かれ、主に次の3孔が生じる。
大動脈裂孔:第12胸椎の椎体前面にあり、下行大動脈と動脈周囲交感神経叢(大内臓神経小内臓神経など)、奇静脈、胸管などが通る。
食道裂孔:第10胸維の高さで大動脈裂孔の左前上方にあり、食道と、左右の迷走神経が通る。
大静脈孔:第8胸椎の高さで腱中心にあり、右寄りに位置する。下大静脈が通る。
横隔膜の上面は胸膜に、下面の大部分は腹膜におおわれ、肝臓・胃などの腹腔臓器を入れ保護している。裂孔の周りの筋束はハチマキ状に走り、腸管などの裂孔からの脱出を防いでいる。横隔膜ヘルニアの中では、食道裂孔を通るもの(食道ヘルニア)が最も多い。

1 頸神経の枝に支配される。

横隔神経はC3,4からの枝が交通して、始めは前斜角筋の前を下行したのち腕頭静脈に沿って胸郭内に入り、縦隔胸膜の直下を横隔膜まで伸びこれを支配する。運動線維に加えて、横隔膜、心膜および胸膜からの感覚線維を含む。(p.315 頸神経)

2 吸気筋として働く。

吸息運動は、外肋間筋による肋骨の挙上と横隔膜の下方への収縮によって起こる。深吸息時には、さらに胸鎖乳突筋、斜角筋、大胸筋、前鋸筋などが加わる。呼息運動は、吸息筋の弛緩と内肋間筋による肋骨の下降および腹壁筋の収縮による横隔膜の挙上によって起こる。(p.225 呼吸運動)

3 大動脈裂孔を胸管と奇静脈が通る。迷走神経は食道裂孔を通る。
– 大動脈裂孔、大動脈通るのあたりまえ。プラス胸管と奇静脈
– 食道裂孔、食道通るのあたりまえ。プラス迷走神経。迷走神経は胸腹部の副交感神経として働く。当然胃にも分布する。胃に分布するのにわざわざ他のアナを通る必要はない。食道とともに食道裂孔を通過してそのまま胃に分布する。
– 大静脈孔、下大静脈がとおる。

4 腰椎の椎体に起始をもつ。

横隔膜の起始部は3部に分かれる。
1. 胸骨部:剣状突起の後面から起こる。
2. 肋骨部:肋骨弓の内面から起こる。
3. 腰椎部:上位腰椎とその肋骨突起から起こる。
これらが輪状に起こり、上方に走り体の中心部に向かって集まり、腱中心をつくる。


問19 上肢帯の骨に停止する筋はどれか。

1 肩甲下筋
2 三角筋
3 前鋸筋
4 大胸筋

解答 3

上肢の骨は、体幹と連結する上肢帯の骨と、肩関節より遠位で可動性に富む自由上肢の骨に分けられる。(p.179 上肢の骨格)

上肢の骨:片側で8種32個の骨からなる。
  • 上肢帯の骨
  • 肩甲骨
  • 鎖骨
  • 上肢の骨
  • 上腕骨
  • 橈骨
  • 尺骨
  • 手根骨
  • 近位列:舟状骨・月状骨・三角骨・豆状骨
  • 遠位列:大菱形骨・小菱形骨・有頭骨・有鉤骨
  • 中手骨
  • 指骨
  • 基節骨・中節骨・末節骨 
(ただし母指には中節骨がない。)

1 肩甲下筋:肩甲骨の肋骨面より起こり、上腕骨前面の小結節に停止する。肩甲下神経の支配。作用:上腕を内旋する。

2 三角筋:肩甲骨の肩甲棘と肩峰、鎖骨の外側1/ 3より起こり、上腕骨の三角筋粗面に停止する。腋窩神経の支配。作用:上腕の外転。

3 前鋸筋:8〜10個の筋尖が第1−第8ないし第10肋骨の外側面より起こり、肩甲骨の内側縁、上角、下角に停止する。神経支配:長胸神経。作用:肩甲骨を前方に引く。

4 大胸筋:鎖骨の内側半(鎖骨部)、胸骨前面と上位5ないし7肋軟骨(胸肋部)、腹直筋鞘前葉(腹部)より起こり、上腕骨の大結節稜に停止する。内側胸筋神経と外側胸筋神経の支配。作用:上腕の内転と内旋。


問20 橈骨に停止しない筋はどれか。

1 円回内筋
2 回外筋
3 上腕筋
4 上腕二頭筋

解答 3

1 円回内筋

円回内筋は肘窩の内側縁を下行し、橈骨中央の外側面の粗面に停止する。名のとおり、この筋の作用は前腕を回内させる。この筋は内側上顆の起始(上腕頭)以外にも尺骨の鉤状突起(尺骨頭)に起始しており、両頭の間には正中神経が通る。(p.242 前腕の屈筋群)

2 回外筋

回外筋は、総指伸筋上部の深層に位置する幅広く短い筋である。上腕骨の外側上顆や尺骨上部の外側面から起こって、橈骨上部を外側から回り込むように下方に斜走し、橈骨上部の外側面に広く停止する。この筋は前腕を回外するが、さらに強く回外するときには、これに上腕二頭筋の回外作用が加わる。また、この筋は橈骨神経の深枝に貫通される。(p.245 前腕の伸筋群)

3 上腕筋

上腕骨の前面と内側および外側の筋間中隔より起こり、上腕二頭筋におおわれながら下がって尺骨粗面につく。筋皮神経が支配する。上腕二頭筋の深層にあるので体表からは観察しにくいが、発達した幅広い筋腹を持ち、肘関節を強力に屈曲する。肘関節の屈曲には常にこの筋が強く作用する。(p.239 上腕の屈筋群)

4 上腕二頭筋

“力こぶ”の筋として有名で、肘関節の屈曲と前腕の回外をさせる。
起始は長頭と短頭の2頭からなる。長頭は、肩関節腔内にある肩甲骨の関節上結節から起こり、滑膜におおわれて上腕骨頭の上を横断する。その後、上腕骨小結節の外側縁を滑車のように利用して下方に向きを変え、結節間溝を下行する。短頭は烏口突起から起こり、その起始腱は烏口腕筋の表面に走る。
筋を収縮させると上腕部に筋腹が隆起して、肘窩の中央には停止腱がより明瞭になる。停止腱は肘関節をまたいで橈骨粗面につくほか、一部は腱膜として前腕内側の皮下にある前腕筋膜に癒合する。この腱膜は前腕を回外する際に、二頭筋の収縮力を前腕筋膜に伝える作用があるといわれる。上腕二頭筋に力を入れながらわずかに肘を曲げると、この腱膜が肘窩の内側の皮下に明確に触れ、その深層には肘窩に向かう上腕動脈や正中神経が通る。(p.239 上腕の屈筋群)


問21 筋の起始と停止が2つ以上の関節にまたがるのはどれか。

1 外閉鎖筋
2 腸骨筋
3 長内転筋
4 半腱様筋

解答 4

1 外閉鎖筋:股関節をまたぐ単関節筋
閉鎖膜の外面およびその周囲の骨部より起こり、大腿骨頸の後ろを通り大腿骨転子窩下部につく。大腿を外方にまわしまた内転する。閉鎖神経の枝をうける。

2 腸骨筋:股関節をまたぐ単関節筋
腸骨窩および下前腸骨棘から起こり、大腰筋とともに鼠径靱帯の筋裂孔をくぐり小転子につく。

3 長内転筋:股関節をまたぐ単関節筋
恥骨結節の下方から起こり、大腿後面中部の粗線につく。大腿を内転する。閉鎖神経の枝をうける。

4 半腱様筋:股関節と膝関節をまたぐ二関節筋
半腱様筋の下層にあり、坐骨結節から起こり、脛骨内側顆につく。大腿をのばすとともに膝関節をまげる。坐骨神経が支配する。


問22 寛骨の周囲の筋で大転子に停止しないのはどれか。

1 大殿筋
2 中殿筋
3 小殿筋
4 梨状筋

解答 1

外寛骨筋
筋名起始停止支配神経作用
大殿筋腸骨外面(後殿筋線より後ろ)、仙骨後面、仙結節靭帯殿筋粗面、腸脛靭帯下殿神経股関節の伸展、腸脛靭帯を緊張させ膝関節を伸展させ直立姿勢を保つ、股関節の外転と外旋
中殿筋腸骨外面(前殿筋線と後殿筋線の間)大転子上殿神経股関節の外転、前部の筋は内旋
小殿筋腸骨外面(前殿筋線と下殿筋線の間)股関節の外転、内旋
大腿筋膜張筋上前腸骨棘腸脛靭帯股関節の屈曲・外転・内旋、膝関節の伸展・外旋
梨状筋仙骨前面外側大転子仙骨神経叢股関節の外旋、股関節が屈曲している時は股関節の外転
内閉鎖筋閉鎖膜の内面転子窩
上双子筋坐骨棘
下双子筋坐骨結節
大腿方形筋坐骨結節転子間稜股関節の外旋

1 大殿筋
殿部を形成する強大な筋で、腸骨翼外側面、仙骨、尾骨の外側縁などから起こって斜め外下方に向かい大腿骨上部の殿筋粗面につく。大腿を後ろに引きかつ外旋する。上部だけ働けば大腿は外転する。下殿神経をうける。

2 中殿筋
大殿筋におおわれ腸骨翼の外面、腸骨稜などから起こり、外下方に向かい、大腿骨大転子につく、大腿を外転する。上殿神経をうける。

3 小殿筋
中殿筋のさらに下層にあり、腸骨翼の外面から起こり、下外方に向かい大転子につく。大腿を外転する。上殿神経をうける。

4 梨状筋
仙骨前面から出て外下方に走り、大坐骨孔を通り前方に向かい、大転子につく。大腿を外方にまわす。また外転する。仙骨神経叢の枝をうける。


問23 下肢の筋で腱が外果の後方を通過するのはどれか。

1 長指屈筋
2 長腓骨筋
3 前脛骨筋
4 後脛骨筋

解答 2

下腿の筋が足部に向かう際に下腿三頭筋以外の筋は3つの支帯の下を通過する。この3つの支帯と筋との関連を理解すれば、下腿〜足部にかけての筋のイメージができてくる

上伸筋支帯と下伸筋支帯の下を通過する筋

上伸筋支帯と下伸筋支帯は足首の前面をおおい、下腿前面の伸筋腱を押さえている。(p.275 下腿前面の筋(伸筋群))

  • 前脛骨筋
    脛骨外側面、下腿骨間膜より下方に向いた腱となり、上下の伸筋支帯の下を通り、足背に出て内側楔状骨と第1中足骨の下面につく。足の背屈かつ内反をする。深腓骨神経の枝をうける。
  • 長母指伸筋
    腓骨内側面、下腿骨間膜より起こり腱は上下の伸筋支帯の下を通り、足背に出て母指末節骨につく。母指をのばし足の背屈を行う。深腓骨神経の枝をうける。
  • 長指伸筋
    腓骨内側面、下腿骨間膜、脛骨の外側顆から起こり、下方に向かい途中で腱となり、伸筋支帯の下で4分して足背に出て、第2~第5指の中節骨と末節骨につく。第2~第5指をのばし、また足の背屈を行う。深腓骨神経の枝をうける。
  • 第三腓骨筋
    長指伸筋の分かれたもので、前下腿筋間中隔より起こり、伸筋支帯の下を通り、足背に出て第5中足骨底背側につく。足を外反し、また背屈を行う。深腓骨神経の枝をうける。

腓骨筋支帯の下を通過する筋

長腓骨筋短腓骨筋は腓骨の外側にあり、伸筋群や屈筋群とは前・後下腿筋間中隔により境される。腓骨筋群は足関節の底屈を行うほか、外反をする主要な筋である。長・短腓骨筋の腱は外果の後ろで上腓骨筋支帯と下腓骨筋支帯により保持される。長腓骨筋の腱は外果後方をまわったあと足底深層を外側から内側へ横断して、前脛骨筋と同じ内側楔状骨、第1中足骨底に停止する。
長腓骨筋は底屈と外反、前脛骨筋は背屈と内反という互いに拮抗する作用を行う。平坦でない道を歩くとき、足底を地面にうまく接触させるために外反と内反の微妙な調節が必要である。 (p.277 下腿外側面の筋(腓骨筋群))

屈筋支帯の下を通過する筋

後脛骨筋長指屈筋長母指屈筋の3屈筋は下腿後面の深層にあり、それらの腱は脛骨の内果の後側を回って足底に達する。内果と踵骨の間を橋渡しする屈筋支帯により、屈筋腱は保持される。
後脛骨筋は、足を強く内反する。また、縦足弓(足の縦アーチ)の内側部を高く保つ働きがある。
長母指屈筋は母指を屈曲させ、長指屈筋は第2~5指を屈曲させる。両筋とも足関節の底屈、内反に加わり、また縦足弓の維持を助ける。 (p.277 下腿後面の筋(屈筋群))

内果と踵骨の間で、屈筋支帯により囲まれた部位を足根管といい、後脛骨筋・長指屈筋・長母指屈筋の他に、脛骨神経と後脛骨動脈・静脈が通過する。

1 長指屈筋:屈筋支帯の下、内果の後ろの足根管を通過する
2 長腓骨筋:腓骨筋支帯の下、外果の後ろを通過する
3 前脛骨筋:伸筋支帯の下、足関節前面を通過する
4 後脛骨筋:屈筋支帯の下、内果の後ろの足根管を通過する


問24 肝臓について誤っている記述はどれか。

1 後面は下大静脈に接する。
2 胆嚢は方形葉と左葉との間にある。
3 肝鎌状間膜で右葉と左葉に区分される。
4 肝門を門脈が通る。

解答 2

肝臓は肝鎌状間膜を境に、厚くて大きい右葉と薄くて小さい左葉とに区分される。下面には、両葉に挟まれて小型の方形葉尾状葉がある。下面の中央には肝門があって固有肝動脈門脈肝管などが出入りする。肝門の右前方で方形葉と右葉との間には胆嚢があり、肝臓の血液を集めた肝静脈は肝臓の後面に接する下大静脈に注ぐ。(p.84 肝臓の位置と形状)

1 後面は下大静脈に接する。
肝臓の血液を集めた肝静脈は肝臓の後面に接する下大静脈に注ぐ。

2 胆嚢は方形葉と右葉との間にある。
肝門の右前方で方形葉と右葉との間には胆嚢があり

3 肝鎌状間膜で右葉と左葉に区分される。
肝臓は肝鎌状間膜を境に、厚くて大きい右葉と薄くて小さい左葉とに区分される。

4 肝門を門脈が通る。
下面の中央には肝門があって固有肝動脈門脈肝管などが出入りする。


問25 腎臓について誤っている記述はどれか。

1 右腎臓は十二指腸に接する。
2 腎小体は皮質に存在する。
3 腹膜後器官である。
4 集合管はネフロンの一部である。

解答 4

1 右腎臓は十二指腸に接する。

2 腎小体は皮質に存在する。
腎小体は、毛細血管が糸玉状に集まった糸球体と、それを包む上皮性のボウマン嚢という薄い袋からなる。腎小体は皮質に散在する直径約0.2mmの球状の小体で、その数は片方の腎臓に約100万個ある。(p.90 腎臓の構造 – 組織構造)

3 腹膜後器官である。
十二指腸・膵臓・上行結腸・下行結腸などは前面のみが腹膜におおわれ、後面は後腹壁に張りつく。また腎臓・副腎などは脂肪に包まれて後腹壁に埋まっており腹膜との関係は薄い。このように後腹壁に接着した臓器を腹膜後臓器と総称する。 (p.87 腹膜)

4 集合管はネフロンの一部である。
これは絶対に間違えちゃいけない問題ですね。

  • 糸球体 + ボウマン嚢 = 腎小体
  • 腎小体 + 尿細管 = ネフロン
    (集合管はネフロンには含まれない)

問26 内腸骨動脈の枝でないのはどれか。

1 上殿動脈
2 内陰部動脈
3 閉鎖動脈
4 卵巣動脈

解答 4

内腸骨動脈の枝って、たくさんあって覚えにくい…骨盤内の臓器や殿部を栄養する動脈はだいたい内腸骨の枝であろうと思っても良いのだが、例外をしっかりと押さえること。
精巣動脈・卵巣動脈は腹大動脈の直接の枝」絶対に忘れちゃだめ!

1 上殿動脈

上殿動脈は梨状筋上孔、下殿動脈は梨状筋下孔をそれぞれ出て、外寛骨筋群に分布する。(p.47 総腸骨動脈・内腸骨動脈とその枝)

2 内陰部動脈

内陰部動脈は、大坐骨孔(梨状筋下孔)を出て骨盤の後面に出た後、直ちに小坐骨孔を通って骨盤底に至る。骨盤底では直腸下部(肛門)と外部生殖器(尿生殖の外口)を栄養する。(p.47 総腸骨動脈・内腸骨動脈とその枝)

3 閉鎖動脈

閉鎖動脈は、閉鎖神経とともに骨盤内の側壁を走り、閉鎖孔(閉鎖管)を通って大腿内側に至る。直ちに寛骨臼切痕に向かって、大腿骨頭靱帯に沿う大腿骨頭の動脈を出すほか、内転筋群に分布する筋枝を出す。(p.47 総腸骨動脈・内腸骨動脈とその枝)

4 卵巣動脈

卵巣動脈(男性では精巣動脈)は、腎動脈の起始部よりやや下方の高さから分枝する1対の細い動脈で、腹腔の後壁を骨盤の高さまで下行する。卵巣動脈は、骨盤腔の側壁にできた卵巣提索の中を走って卵巣に到達する。精巣動脈は、側腹壁の下縁に開いた鼠径管を通る精索に包まれて精巣に達する。(p.46 腹大動脈とその枝)

(注) 性腺動脈の走行は、発生学的に、精巣・卵巣が本来は腎臓の高さにでき、発生が進むとともに下降して骨盤に至ったという軌跡を示している。


問27 リンパ系に属さないのはどれか。

1 胸管
2 胸腺
3 甲状腺
4 脾臓

解答 3

リンパ系はリンパ液を運搬する導管ネットワークである。 リンパ系はまた脾臓、胸腺、骨髄、消化管に付随したリンパ組織といったリンパ球の循環や産生を行う全ての構造を含む。

1 胸管:下半身 + 左上半身のリンパが集められる。

骨盤と下肢のリンパは鼠径リンパ節に集まり、総腸骨動静脈から腹大動脈と下大静脈に沿って上行する腰リンパ本幹に注ぐ。また、腸管からの乳び管は腸間膜を通って、腸リンパ本幹に注ぐ。横隔膜の大動脈裂孔付近で腰リンパ本幹と腸リンパ本幹は合流して、大動脈の後方に乳び槽という袋状の膨らみをなす。乳び槽は胸管という太いリンパ本幹に移行する。胸管は脊柱の前を上行し、胸郭上口を抜けて左の静脈角(内頸静脈と鎖骨下静脈の合流部)に注ぐ。静脈角付近で胸管には、頭頸部の左側半のリンパを集めた左頸リンパ本幹と、左上肢および左乳房のリンパを集めた左鎖骨下リンパ本幹が注ぐ。結果的に、胸管には右上半身を除く全身のリンパが注ぐことになる。
それに対して、右上半身のリンパは胸管に合流しない。右頭頸部のリンパは右頸リンパ本幹、右上肢および右乳房のリンパは右鎖骨下リンパ本幹にそれぞれ集められる。これらのリンパ本幹は合流して右リンパ本幹を構成し、右の静脈角に注ぎ込む。左右の静脈角に注いだリンパは、再び静脈を流れる血液に還流されて心臓に返る。(p.55 全身のリンパ本幹)

2 胸腺:第1次リンパ性器官

胸腺は胸骨のすぐ後ろ(縦隔の前部から上部)に位置する左右1対の器官である。乳幼児ではよく発達して心臓の前方をおおうように広がるが、思春期を過ぎると次第に退縮し、成人では心臓の上方に位置する小さな臓器になる。老人ではその大部分が脂肪組織に置き換わる。 胸腺内部は細網組織からなり、顕微鏡で断面を見ると、多数のリンパ球が密集する皮質と、それよりも明るい髄質が区別される。細網組織からなるリンパ系の器官であるにもかかわらず、内部にリンパ小節を認めず、胸腺にリンパ管が直接出入りすることはない。
胸腺は全身のリンパ系組織に先がけて発生する第一次リンパ性器官である。骨髄など造血器官で生まれたTリンパ球前駆細胞が胸腺に進入し、ここで成熟してTリンパ球となり、血管系を介して全身の各リンパ系器官に分配される。Tリンパ球の頭文字Tは、胸腺の学名(Thymus)のTであり、胸腺由来のリンパ球であることを意味する。Tリンパ球は食作用による免疫作用(細胞性免疫)のほか、異物(抗原)の刺激に応答してBリンパ球の増生や抗体産生を促すなど、免疫系の司令官として機能する。新生児期に胸腺を切除すると、全身のリンパ系器官(リンパ節、扁桃、リンパ小節など)が発達せず、抗体産生能力も発現しないのですぐに死んでしまう。従って、第一次リンパ性器官である胸腺は、全身のリンパ性器官のなかで中枢的な臓器だといえる。(p.58 胸腺)

○ 3 甲状腺:内分泌器官

甲状腺は、左右の峡部がつなぎ、全体はH字形ないしU字形をなす。甲状軟骨の前下面に位置し、物を飲み込むと甲状軟骨とともに上下する。
甲状腺は舌の背面後部(舌盲孔)から伸びる甲状舌管という、上皮索を導管とする外分泌腺として発生するが、この導管が消失して内分泌腺となった。
甲状腺は単層立方上皮でできた直径0.2mm前後の袋(濾胞)の無数の集まりよりなる。濾胞腔はコロイドで満たされ、必要に応じてコロイドは甲状腺ホルモン(サイロキシン)として分泌され、全身の細胞・組織を刺激して物質代謝を高め、エネルギー産生を増やす。
濾胞間にも傍濾胞細胞という内分泌細胞が集まり、血中のカルシウム濃度を下げるカルシトニンを分泌する。

4 脾臓
脾臓は長径約10cmの卵形をした最大のリンパ組織塊で、内部に多量の血液を貯留して暗赤色を呈する。腹腔の左上部で胃の後方にあり、横隔膜に接する。体表から投影すると、左の側胸部(腋窩線よりも後ろ)で、胸郭の下方(第10肋骨を中心に上下の肋骨付近)に位置する。正常では胸郭に隠れて体表から触れられない。腹腔内では表面を腹膜でおおわれ、腹膜の付け根の部分で脾門というくぼみをなして、ここから脾動静脈、神経、リンパ管が出入りする。
脾臓の表面構造を被膜というが、その外葉は腹膜(漿膜)で、その裏打ちに厚い結合組織層が線維膜をなす。この線維膜の一部が内部に伸び出して、脾臓の実質を区画する脾柱をつくる。脾柱に囲まれた実質は柔らかな細網組織からなる。脾臓の断面を拡大して見ると、実質全体は赤血球で満たされて赤黒いので、赤脾髄と呼ばれる。そのなかに、小さな白い斑点状の白脾髄が散在する。白脾髄はリンパ球が集まってできたリンパ小節からできており、内部の胚中心では盛んにBリンパ球の増生を行う。
脾動脈は、脾門に入って脾柱動脈に分枝し脾柱を走る。脾臓内部の動脈は互いに吻合を持たない終動脈である。その枝が実質の中に入ると、まず白脾髄を貫通する中心動脈となり、赤脾髄に入って筆毛動脈から莢動脈(さやどうみゃく)を経て脾洞に注ぐ。脾洞は内腔の広い特殊な毛細血管(洞様毛細血管)であり、毛細血管であるにもかかわらず赤血球が容易に壁を通り抜けて、まわりの細網組織に出る(一般の毛細血管では通常、赤血球が壁を抜けて周辺組織に出ない)。脾洞周囲の細網組織では、大食細胞(マクロファージ)が存在し、血中を流れてきた細菌や異物のほか、古くなった赤血球を食作用によって破壊する。赤血球の処分によって出たヘモグロビン(血色素)は分解されビリルビンとなって、脾静脈を経由して門脈に注ぎ、肝臓に送られて胆汁色素として胆汁の中に排出される。(p.57 脾臓)


問28 運動線維を含まない脳神経はどれか。

1 上顎神経
2 下顎神経
3 舌咽神経
4 迷走神経

解答 1

三叉神経は三つまたに分かれるから三叉神経。基本的には主に顔面部の感覚を司る神経であるが、第3枝 下顎神経のみは感覚線維に加えて、咀嚼筋を支配する運動線維ももつ。

1 上顎神経
感覚 (GSA) : 皮膚知覚 → (正円孔) → 三叉神経節 → 三叉神経脊髄路核・主知覚核

2 下顎神経
感覚 (GSA) : 皮膚知覚 → (卵円孔) → 三叉神経節 → 三叉神経脊髄路核・主知覚核
運動 (SVE) : 三叉神経運動核 → (卵円孔) → 咀嚼筋

3 舌咽神経
運動 (SVE) : 疑核 → (頚静脈孔) → 茎突咽頭筋・咽頭上部の筋
感覚 (SVA) : 舌後1/3の味覚 → (頚静脈孔) → 下神経節 → 孤束核 外側部
感覚 (GVA) : 舌後1/3の知覚 → (頚静脈孔) → 下神経節 → 孤束核 内側部
副交感 (GVE) : 下唾液核 → (内耳孔) → 耳神経節 → 耳下腺

4 迷走神経
運動 (SVE) : 疑核 → (頚静脈孔) → 喉頭と咽頭の筋
感覚 (GVA) : 咽頭や軟口蓋の知覚 → (頚静脈孔) → 下神経節 → 孤束核 内側部
副交感 (GVE) : 迷走神経背側運動核 → (頚静脈孔) → 腹部の副交感性自律神経節 → 胸腹部臓器の副交感性支配


問29 脳神経について誤っている記述はどれか。

1 滑車神経は上斜筋を支配する。
2 三叉神経は歯の痛覚に関与する。
3 顔面神経は涙腺の分泌に関与する。
4 舌咽神経は舌筋を支配する。

解答 4

1 滑車神経は上斜筋を支配する。

外眼筋の神経支配

滑車神経 上斜筋
外転神経 外側直筋
あとは全部 動眼神経 (上直筋・下直筋・内側直筋・下斜筋 + 上眼瞼挙筋)

2 三叉神経は歯の痛覚に関与する。

三叉神経知覚根は大きな半月神経節(三叉神経節)をつくり、3本の太い枝に分かれ、頭部体表の感覚だけでなく、鼻腔や口腔、眼球と眼窩、頭蓋など、頭部の体性感覚の大部分を支配する。
顔面部でいえば、内眼角と口角がデルマトームの境界となる。歯の神経支配は上顎歯は上顎神経、下顎歯は下顎神経支配。(あたりまえ)

3 顔面神経は涙腺の分泌に関与する。
顔面神経の副交感神経は2系統に分かれる。涙腺・鼻腺は翼口蓋神経節経由。顎下腺・舌下腺は顎下神経節経由だ。近年、脳神経III, VII, IX の副交感性神経節がよく問題として出されるので、ここはぜひ神経節までしっかりと覚えよう。

運動 (SVE) : 顔面神経核 → (内耳孔) → (茎乳突孔) → 表情筋
感覚 (SVA) : 舌前2/3の味覚 → (内耳孔) → 膝神経節 → 孤束核 外側部
副交感 (GVE) : 上唾液核 → 中間神経 → (内耳孔) → 大錐体神経 → 翼口蓋神経節 → 涙腺 上唾液核 → 中間神経 → (内耳孔) → 鼓索神経 → 顎下神経節 → 顎下腺・舌下腺

4 舌下神経は舌筋を支配する。

延髄の舌下神経核から始まる。多数の根糸として延髄の前面に出たのち1本に合して舌下神経管を通る。顎二腹筋後腹と茎突舌骨筋の内側を通り、舌骨舌筋の外側で枝分かれして舌の中に入り、舌筋群に分布する。


問30 腕神経叢の枝とその支配筋との組合せで誤っているのはどれか。

1 腋窩神経—棘下筋
2 胸背神経—広背筋
3 肩甲上神経—棘上筋
4 肩甲下神経—大円筋

解答 1

1 腋窩神経— 三角筋・小円筋 (棘下筋は肩甲上神経支配)

腋窩神経は、後神経束から分かれる太い枝である。腋窩の後壁にある外側腋窩隙を通って上肢帯の背面に出たところで小円筋に筋枝を送るほか、肩から上腕外側部の皮枝である上外側上腕皮神経も出す。残った腋窩神経の本幹は、上腕骨の外科頸の高さで三角筋の深層に入り込み、上腕骨を後ろから外回りに走って、三角筋への枝を次々と出す。(p.262 上肢帯での神経走行(腋窩神経など))

2 胸背神経—広背筋

胸背神経は、大円筋に向かう肩甲下神経と近接して後神経束から分枝し広背筋に向かう。(p.262 上肢帯での神経走行(腋窩神経など))

3 肩甲上神経—棘上筋

肩甲上神経は、上神経幹と後神経束の移行部付近から出た後、肩甲骨上縁にある肩甲切痕を前面から後面に向かって通過する。肩甲骨の後面では棘上窩の棘上筋を支配しながら、肩甲棘基部の外側縁(関節窩と肩甲棘基部との間)を回って棘下窩に達し、棘下筋を支配する。そのほか、肩関節包に至る関節枝も出す。(p.262 上肢帯での神経走行(腋窩神経など))

4 肩甲下神経—大円筋

肩甲下神経は、後神経束から別々に分かれる複数の枝からなり、腕神経叢の直ぐ後ろにある肩甲下筋と大円筋を支配する。(p.262 上肢帯での神経走行(腋窩神経など))


問31 皮膚の部位と支配する脊髄神経の高さについて正しい組み合わせはどれか。

1 乳頭—第2胸神経
2 剣状突起部—第5胸神経
3 臍—第10胸神経
4 鼠径溝—第1仙骨神経

解答 3

1 乳頭—第5胸神経
胸壁の皮膚には肋間神経の外側皮枝と前皮枝が分布する。外側皮枝は、腋窩部および側胸部で前鋸筋または外腹斜筋を貫いて皮下に出て、胸部の外側半に分布する。第2肋間神経外側皮枝は発達がよく、恒常的に上腕後面に分布し肋間上腕神経と呼ばれる。前皮枝は、胸骨の外側縁近くで肋間筋と大胸筋を貫いて皮下に出て、胸部の内側半に分布する。肋間神経の皮枝は上方から下方に向かって規則正しく分節状(帯状)に分布し(デルマトーム)、第5肋間神経は乳頭の高さに位置する。なお、胸骨角より上部は頸神経叢から起こる鎖骨上神経(C3・4) が分布する。(p.232 胸壁の神経)

2 剣状突起部—第7胸神経
3 臍—第10胸神経
腹壁の皮膚には、下位肋間神経および、肋下神経の外側皮枝と前皮枝、そして第1腰神経前枝が分布する。外側皮枝は肋間神経が肋骨弓の後方を横切り内腹斜筋と腹横筋との間を走行しているときに分枝され、腹壁皮下の大部分に分布する。前皮枝は肋間神経が腹直筋を買いたのち分枝され腹壁前側に分布している。皮神経の分布域はほぼ胸壁と同様、分節状で、剣状突起の高さに第7肋間神経、臍の高さに第10肋間神経、腸骨稜および鼠径部には第1腰神経前枝(腸骨下腹神経)が分布する。腸骨鼠径神経は鼠径管を通って前方に向かい、浅鼠径輸から皮下に出て、陰嚢(大陰唇)を中心に分布する。(p.234 腹壁の神経)

4 鼠径溝—第1仙骨神経
腸骨鼠径神経はL1の腸骨下腹神経のすぐ下から分岐する。腹壁を回りながら側腹筋に筋枝を与えるほか、腸骨稜から鼠径靱帯に沿って鼠径部に至る。鼠径部では鼠径管を通り、前皮枝に相当する前陰嚢神経(女性では前陰唇神経)となって陰嚢(大陰唇)前面の感覚を担う。(p.290 腰神経叢)


問32 大脳基底核に含まれないのはどれか。

1 黒質
2 淡蒼球
3 被殻
4 尾状核

解答 1

大脳髄質(白質)の中にある灰白質のかたまりを大脳基底核という。大脳基底核はレンズ核尾状核前障扁桃体からなる。レンズ核は視床の外側に位置し、さらに外側の被殻と内側の淡蒼球に分かれる。尾状核は細く長い灰白質で、視床を取り囲んで前・上・後方へと伸びる。尾状核と被殻とを合わせて線条体と呼ばれる。両者は同一の核であったが、内包の神経線維の発達により隔てられ2つに分かれたもので、両者の間にはところどころで細い線条による連絡が見られる。大脳基底核と黒質はドーパミンという神経伝達物質により情報の伝達を行っている。(p.127 大脳基底核)

大脳基底核に関しては解剖学と生理学で考え方が異なるので注意が必要。
解剖学は「切って開いて見て(構造)」の学問であるので、「大脳基底核は大脳白質の中にある灰白質の塊 (神経核) 」をいう。
一方生理学は「機能・働き」で考えるので、「大脳基底核は運動の調節に関与する神経核」ととらえる。

解剖学的な大脳基底核の分類 (5つ)
  • 扁桃体:情動や本能行動に関わる (大脳辺縁系)
  • 淡蒼球:錐体外路系
  • 被殻:錐体外路系
  • 尾状核:錐体外路系
  • 前障:島皮質の深層が分離したもの
生理学的な大脳基底核 (大脳基底核は運動の調節に関与する)
  • 淡蒼球
  • 被殻
  • 尾状核

生理学では、腹側視床の視床下核と、中脳の赤核・黒質も運動の調節に関与する神経核として広義の大脳基底核に加える場合もある。
– (視床下核)
– (赤核、黒質)

これも重要

淡蒼球 + 被殻 = レンズ核
(断面図でレンズのような形をしている)
被殻 + 尾状核 = 線条体
(発生が同じで、内包により隔てられた)


問33 眼球について正しい記述はどれか。

1 強膜は膠原線維に富む。
2 結膜は涙腺を覆う。
3 脈絡膜は色素に乏しい。
4 網膜の最内層に視細胞がある。

解答 1

眼球の壁は3層からなる。

(1) 眼球壁の外層(線維膜)(p.148 眼球壁の外層(線維膜))

強膜角膜からなり、眼球の形を保ち保護している。

① 強膜

眼球の後5/6を包む、滑らかで強靱な線維性の結合組織でできている。血管が少ないため白色で、その後部は視神経を包む膜に移行する。

② 角膜

強膜から続く線維性の無色透明な約1mmの厚さの膜で、眼球の前1/6を包む。その表層は結膜から続く重層扁平上皮の角膜上皮でおおわれている。血管がないため栄養は主として眼房水から供給される。三叉神経の枝が分布して、異物が入ると強い痛みを訴える。

(2) 眼球壁の中層(血管膜)(p.148 眼球壁の中層(血管膜))

脈絡膜毛様体および虹彩からなる。眼球に対して外部からの光線を遮り、かつ栄養を与える。

① 脈絡膜

強膜の内面にある暗褐色の薄膜で、メラニン色素細胞と血管に富む柔軟な結合組織層である。これは眼球内部を暗室とし、光の乱反射を防ぐのに役立っている。

② 毛様体

脈絡膜の前方に続く海綿様に肥厚した部分で、これから内方に伸びる毛様体小帯(チン小帯)という細い線維は水晶体を支える。毛様体の中には平滑筋性の毛様体筋があり、水晶体のふくらみを調節し、焦点の位置を変えている。

③ 虹彩

毛様体から起こり、水晶体の前方でこれを周囲から縁どるように存在する。カメラの絞りにあたるもので、中心の小孔は瞳孔(直径3~6mm)と呼ばれる。虹彩は血管、神経、色素細胞に富み、その内部には輪走する瞳孔括約筋と放射状に走る瞳孔散大筋の2種類の平滑筋があり、眼球に入る光量の調節を行っている。瞳孔括約筋は副交感神経(動眼神経)により、瞳孔散大筋は交感神経によりそれぞれ支配されている。

(3) 眼球壁の内層(網膜)(p.150 眼球壁の内層(網膜))

網膜と呼ばれる部分で、光の刺激を神経の興奮に変えて視神経に伝える。網膜は3層の神経組織からなる神経層(視細胞層、双極細胞層、神経節細胞層)とその外層の色素上皮層からなる。網膜は光を感じる後半部の網膜視部と、毛様体・虹彩の内面をおおうが光を感じない前半部の網膜盲部とに分けられ、その境界は鋸状縁といわれる。視神経が出ていく部位はややくぼんでおり、ここを視神経円板または視神経乳頭といい、視細胞が存在しないため光を感じない。視神経円板の約4mm外側には黄色の丸い部(直径約2mm)、すなわち黄斑がある。黄斑の中央部はくぼんで中心窩といわれ、物を注視するときに焦点の合う場所で、視力の最も良いところである。
光を感じる視細胞はいちばん深層、すなわち脈絡膜側にある。その突起の形から錐体杆体の2種類に区別され、光を感覚するのは突起の先端の外節と呼ばれる場所である。錐体は中心窩の付近に存在し、約650万個の細胞からなり、色覚に関与している。また杆体は網膜の周辺部に多く、1億以上の細胞からなり、明暗の識別に関係している。網膜の最外層には単層立方上皮よりなる色素上皮層があり、細胞は暗褐色の色素顆粒を含み、光の乱反射を防ぐとともに視細胞の機能維持に役立っている。

1 強膜は膠原線維に富む。
強膜は非常に上部な密性結合組織でできている。
(密性結合組織・・・靱帯、腱、眼球強膜、真皮など)

2 結膜は涙腺を覆う。
結膜は、眼瞼と眼球を結ぶ膜をいう意味で命名されている。部位別に、眼瞼の裏側を覆う眼瞼結膜、眼球表面を覆う眼球結膜、結膜嚢の上下内外の天井部を覆う円蓋部結膜に分類される。眼瞼結膜は血管と神経に富む赤い粘膜の部位で、「あっかんべー」のときに見える部位である。折れ返る部位が結膜円蓋で、眼球表面の眼球結膜に移行する。(p.151 眼瞼(まぶた))
涙腺は眼球の上外側にある小指頭大の漿液腺で、多数の導管は上結膜円蓋の外側部に開く。涙腺本体は上下の2部(眼窩部、眼瞼部)からなり、眼窩もしくは眼瞼内部に埋もれるように存在しているので、結膜に被われていない。

3 脈絡膜は色素に乏しい。
強膜の内面にある暗褐色の薄膜で、メラニン色素細胞と血管に富む柔軟な結合組織層である。これは眼球内部を暗室とし、光の乱反射を防ぐのに役立っている。脈絡膜は臨床ではブドウ膜という。(ベーチェット病でよく見られる)

4 網膜の最内層に視細胞がある。
網膜は脈絡膜に接する面(最外層)より、色素上皮層(単層立方上皮)・視細胞層(錐体, 杆体)・双極細胞層・神経節細胞層と並ぶ。網膜の最内層にあたる層は神経節細胞層である。
ここで、身体を表面からみた場合、眼球の奥に行くほど「内層」と思うかもしれないが、眼球の構造を考える場合、眼球を取りだして見たイメージで考える。つまり眼球をとりだして一番外側が「眼球壁の外層(線維膜)…強膜・角膜」、真ん中が「眼球壁の中層(血管膜)…脈絡膜・毛様体・虹彩」、内側が「網膜」である。よって、網膜の構造のうち、脈絡膜に接する側が「外側」となることに注意する。

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