問題
筋をすり潰し紐状の標本を作成し以下物質を加えた。この標本が顕著に短縮するのはどれか。
- ATP とカリウムイオン
- ATP とカルシウムイオン
- グルコースとカリウムイオン
- グルコースとカルシウムイオン
解答: 2(ATP とカルシウムイオン)
解説
- 誤り。ATPはエネルギー源として必要であるが、K⁺はCa²⁺の代替としてトロポニンCに結合できないため、アクチン-ミオシン結合を開始させられず収縮は起こらない。
- 正しい。筋をすり潰した標本(グリセリン筋標本)にATPとCa²⁺を加えると顕著に短縮する。Ca²⁺がトロポニンCに結合してトロポミオシンの位置を変化させ、アクチン上のミオシン結合部位が露出する。ATPがミオシンATPaseにより分解されてエネルギーが供給され、アクチンとミオシンの滑走運動が起こる。筋収縮には「Ca²⁺(収縮のスイッチ)」と「ATP(エネルギー源)」の両方が不可欠であることを実証する古典的実験である。
- 誤り。グルコースはそのままではATPとして機能できず、解糖系の酵素系が破壊されたすり潰し標本ではATPに変換されない。K⁺も収縮の引き金にならない。
- 誤り。Ca²⁺は収縮の引き金となるが、グルコースはすり潰し標本ではATPに変換されないため、エネルギー源が供給されず収縮は起こらない。
ポイント
筋収縮にはCa²⁺(トリガー)とATP(エネルギー源)の両方が必須であることを、グリセリン筋実験が実証しているという点が最重要である。
- 覚え方のコツ: 「筋収縮=Ca²⁺(スイッチ)+ATP(電池)」→スイッチだけでも電池だけでもモーターは動かない。両方揃って初めて動く。
- 関連知識: グリセリン筋標本はグリセリンで処理して細胞膜を破壊した標本であり、膜構造や酵素系は失われているが収縮タンパク質(アクチン・ミオシン)は保持されている。生化学的実験の基本知識である。
- よくある間違い: 「グルコースもエネルギー源だから収縮に使える」と考えるケース。すり潰し標本では代謝酵素系が破壊されているため、グルコースからATPを合成できない。
- 教科書では「a.筋収縮のエネルギー代謝」の範囲に該当する。
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