問題
腎臓の尿細管で分泌されないのはどれか。
- 尿 素
- 重炭酸イオン
- 水素イオン
- カリウムイオン
解答: 2(重炭酸イオン)
解説
- 誤り。尿素は集合管の髄質部で一部が分泌される(尿素トランスポーターを介して)。この尿素の分泌と再吸収の循環は髄質の浸透圧勾配の維持に重要であり、尿濃縮機構(対向流増幅系)に関与する。
- 正しい。重炭酸イオン(HCO₃⁻)は腎臓の尿細管で分泌されない物質である。HCO₃⁻は体液のアルカリ予備として極めて重要であり、近位尿細管で約80〜85%が再吸収される。この再吸収はH⁺の分泌と共役して行われる仕組みで、管腔内でH⁺とHCO₃⁻が反応してH₂CO₃を生成し、炭酸脱水酵素によりCO₂とH₂Oに分解される。CO₂は細胞内に拡散し、再びHCO₃⁻として血液側に回収される。このように、HCO₃⁻は「再吸収」される物質であって、「分泌」される物質ではない。
- 誤り。H⁺は近位尿細管でNa⁺-H⁺交換輸送体(NHE3)により、集合管の介在細胞ではH⁺-ATPaseやH⁺-K⁺-ATPaseにより積極的に分泌される。H⁺の分泌は酸塩基平衡の維持に不可欠である。
- 誤り。K⁺は遠位尿細管と集合管の主細胞からアルドステロンの作用により分泌される。体内のK⁺排泄の大部分はこの尿細管分泌による。
ポイント
- 重炭酸イオン(HCO₃⁻)は尿細管で「再吸収」される物質であり、「分泌」はされない。
- 覚え方のコツ: 尿細管で「分泌される」代表的物質は「H⁺、K⁺、NH₃、PAH、尿酸(一部)、尿素(一部)」。HCO₃⁻は「再吸収専門」と覚える。「酸(H⁺)は捨てて、塩基(HCO₃⁻)は拾う」が腎臓の酸塩基調節の基本。
- 関連知識: 尿細管での分泌は、ろ過だけでは十分に排泄できない物質を効率的に排泄するための機構である。特にPAHの分泌はほぼ完全で、PAHクリアランスがRPFの指標となる。
- よくある間違い: 「重炭酸イオンは尿中に排泄されるから分泌もされる」と考えがちだが、正常ではHCO₃⁻はほぼ全量が再吸収される。代謝性アルカローシス時にはHCO₃⁻が尿中に排泄されるが、これは再吸収の抑制であって分泌ではない。
- 教科書では「c.尿細管の再吸収」の範囲に該当する。
| 物質 | 分泌の有無 | 分泌部位 | 関連する調節 |
|---|---|---|---|
| H⁺ | 分泌される | 近位尿細管、集合管 | 酸塩基平衡 |
| K⁺ | 分泌される | 遠位尿細管、集合管 | アルドステロン依存 |
| HCO₃⁻ | 分泌されない(再吸収) | — | 酸塩基平衡(再吸収) |
| PAH | 分泌される | 近位尿細管 | 有機酸トランスポーター |
| 尿素 | 一部分泌される | 集合管髄質部 | 尿濃縮機構 |
| NH₃/NH₄⁺ | 分泌される | 近位尿細管、集合管 | 酸排泄 |
表: 尿細管における主な物質の分泌の有無
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