問題
健常成人で下垂体前葉のACTH分泌が亢進した際にみられないのはどれか。
- 副腎アンドロゲン分泌の増加
- 視床下部ACTH 放出ホルモン(CRH)分泌の増加
- 電解質コルチコイド分泌の増加
- 糖質コルチコイド分泌の増加
解答: 2(視床下部ACTH 放出ホルモン(CRH)分泌の増加)
解説
- 正しい。ACTH亢進は副腎皮質網状帯を刺激し、副腎アンドロゲン(DHEA等)の分泌を増加させる。
- 誤り。ACTH分泌が亢進すると、その結果としてコルチゾールの血中濃度が上昇する。上昇したコルチゾールは視床下部に負のフィードバックをかけ、CRH(副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン)の分泌を抑制する。したがって健常成人ではCRH分泌は増加ではなく抑制される。この負のフィードバック機構がHPA軸(視床下部-下垂体-副腎皮質軸)の恒常性維持の基本である。
- 正しい。ACTH亢進は副腎皮質球状帯にも作用し、電解質コルチコイド(アルドステロン等)の分泌をある程度増加させる。ただしアルドステロンの主な調節はレニン-アンジオテンシン系である。
- 正しい。ACTH亢進は副腎皮質束状帯を直接刺激し、糖質コルチコイド(コルチゾール)の分泌を最も顕著に増加させる。これがACTHの主たる作用である。
ポイント
ACTH亢進→コルチゾール↑→負のフィードバック→CRH分泌は「抑制」される。増加ではなく抑制されるのが正常な応答である。
- 覚え方のコツ: 「フィードバック=ブレーキ」。コルチゾールが増えすぎないよう、上位のCRHにブレーキがかかる仕組みである。
- 関連知識: クッシング病(下垂体ACTH産生腫瘍)ではACTHが自律的に分泌されるため、負のフィードバックが効かなくなる。デキサメタゾン抑制試験はこの原理を利用した診断法である。
- よくある間違い: 「ACTH↑→CRH↑」と正のフィードバックと勘違いすること。内分泌系の基本調節は負のフィードバックであり、下流ホルモンが上昇すれば上流は抑制される。
- 教科書では「g.副腎のホルモン」の範囲に該当する。
| 副腎皮質の層 | 分泌ホルモン | ACTH亢進時の反応 |
|---|---|---|
| 球状帯 | アルドステロン(電解質コルチコイド) | やや増加 |
| 束状帯 | コルチゾール(糖質コルチコイド) | 著明に増加 |
| 網状帯 | 副腎アンドロゲン(DHEA等) | 増加 |
表: 副腎皮質の層構造とACTH亢進時の反応
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